大怪獣のあとしまつ「あとしまつ」の意味が伝わってない?

多くの人が誤解しているのが、「あとしまつ」の意味。
パシフィックリムや怪獣8号での死体処理は、解体・廃棄あるいはパーツとしての再利用。
ところが大怪獣のあとしまつが目指したのは、死体の原状保存と観光資源化・収益化による復興財源の確保。
これを把握できていないと、ラストのどんでん返しの意味に気付けない。

つまり、凍結作戦も、ダム作戦も、焼肉作戦も、すべて死体を「廃棄」ではなく「保存」することを目指している。
ダム作戦では、「海に流す」という部分から鯨の例を連想して「廃棄」と思った人がほとんどだと思うけど、劇中では、海水を薬液に置き換え、「ホルマリン漬け」状態で保存すると言及している。
ダム作戦は完全に失敗したわけではなく、腐敗ガスを水で薄めて放出することで、減圧し、臭いの拡散も抑えられている。
もし、この時点で光の巨人が正体を現し、死体を海まで運んでいれば、すべて解決だったはず。 腐敗ガスを海水を通して排出すれば臭いの拡散を防げるはずだし、キノコに関しても既知の生物なので、海水に漬ければ死滅する者と思われる。

では、なぜそうしなかったのか?
その答えは、シン・ウルトラマンで、正体を知られた神永がどうなったかを見れば明らかだ。
政府は光の巨人を確保して利用しようとするだろう。
シン・ウルトラマンには彼を守る「禍特対」があったが、アラタを守ってくれる組織はない。
雨音は妻ユキノを誘惑しようとするアラタの存在を快く思っておらず、正体を暴いて追放しようと考えている。

そして最終作戦(焼肉作戦)では、アラタは狐君奮闘し何とか作戦を成功させるが、次の瞬間。アラタの正体を暴くために雨の放ったミサイルが台無しにする。 アラタは「人類の手で」怪獣の死体処理(保存のための無害化)が可能なことを示したかったが、雨音の妨害によりそれが不可能なことを悟り、怪獣の死体の略奪と廃棄を決断する。

かくして莫大な富を生むはずだった人類の「希望」は、光の巨人に奪われ、人類は「あと死待つ」。 「神の光です」などと脳天気に浮かれてる人類は、まだこの事実に気付いていない。

伝わらなかった三角関係についても書いておく。 元々アラタはユキノの婚約者。
アラタが失踪して1年後、ユキノはアラタを諦め雨音と結婚。
さらに1年後、突然アラタが帰還。
ユキノの恋心が再燃し、失踪の理由を知りたいと思う。
それを快く思わない雨音との関係はギクシャクする。

雨音はアラタを配下に置いて死体処理の責任者に任命し、ダムの設計図をすり替えて作戦を失敗させ、焼肉作戦では作戦遂行にかこつけてアラタに向けてミサイルを放ち、殺害あるいは正体を暴こうとした。

結果アラタは正体を現さざるを得なくなり、アラタが人間でなくなったことを知ったユキノも気持ちの整理がついて、アラタを「ご武運を」で見送った。

正体を知られてしまったアラタは、もう二度と地球に帰ってくることはない。
ウルトラマンのように来週も人類のために怪獣と戦ってくれるわけじゃない。
当然、続編はありえない。
もしあるとしても、光の巨人は登場しないだろう。

もしかしたらこの映画で描かれた「大怪獣」とは、ユキノの心に巣食う「許されざる恋心」だったのかもしれない。
怪獣「希望」は、劇中では一度も「大怪獣」とは呼ばれていないのだから。

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