朗読ライブ蠱惑より「人間椅子」(江戸川乱歩)
レピッシュのファンでベーシストのtatsuのツイートから購入しました。
「お、tatsuはなんかおしゃれなことやってんなぁ。人間椅子読んだことなかったかも。」位で買ったのですがとても良かった。
朗読と、映像(OHP)、サックスとベースの即興という組み合わせのこちらの作品。
特に映像に関しては、アーカイブで見ると距離感が実際の目で見るよりもつかめなくなるので、まるで色々な球体が空間に浮かんでいるように見え面白かったです。これはこれで、多分ライブで見るのとはまた違う面白さに感じます。
映像が観客にも映し出され、不思議な空間に取り込まれている観客と空間。
観客は自分がその空間に取り込まれているのをおそらく気づかずにライブに夢中になっており、それを私が見ているという事ももちろん知らない。
それが、なんというか、「人間椅子」の内容も相まってなんだかいけないことをしているような、そんな気分になってくる。
のぞき見しているような背徳感。
へっへっへ、みんな私に見られてるの知らないで夢中になってる。
映像で映し出される液体のような、血管の中の血液のような動きに合わせて流れるサックスと、鼓動のようなベース。それが私の気持ちと連動しているかのようにも感じられ、それがより一層気持ちを高ぶらせ快感となるのでした。
私は、本は自分で読む派なので朗読には勝手に苦手意識があったのですが、考えを改めます。
面白いですね!!
OHPでどうやっているんだろうって調べちゃったんですが、なるほどですね。
人間椅子と朗読について
「人間椅子」という小説の構成が「手紙を椅子に腰かけて読む女性」となっているので、実施に椅子に腰かけて朗読をする上田瞳さんはある意味小説をまんま再現してるともいえ、それが朗読への苦手意識を減らしてくれたのだと思います。
この手の文章(椎名林檎が好きそう)って、読んでいると気持ちがいいのですが、その気持ちよさに浸りすぎても聞いている側は興ざめしてしまうんですよね。上田瞳さんはその加減が絶妙でスピードも心地よかったです。
聞き手が浸る余地を残していて、言葉の美しさに浸ることができました。
個人的ハイライト
コンフォート(配信18分16秒)
この部分。手紙の差出人が椅子を作った後に試しに座ってみて、その椅子の心地よさを語る部分。
この言い方がまさに「コンフォート」。
すごい!これ聴いた後、私は安楽を感じるたびに心の中で
コンフォート
とつぶやいています。
湯船に浸かって「コンフォート」。帰宅してソファに腰を下ろして「コンフォート」。布団に入って寝落ち寸前に「コンフォート」。
もちろん脳内では上田瞳さんの声で再生されれており、そのたびに優美で甘やかな気持ちになるのでした。コンフォート。
27分からの盛り上がりと惑溺(配信31:50)
そして、こちらの椅子の中に潜む中淫靡な喜びに気づいてしまった事を語る文章にでてくる
惑溺
上品だけど確実にはまって抜け出せなくなっている感がすごい。これはとても良い言葉なので機会があったら使いたいです。誰か私を惑溺させてください。
ネットスラングの「wktk」に響きが似ているのですが、wktkが広く使われたのって「惑溺」がもとからあったので語呂として受け入れられやすかったのでしょうか。
そして、「惑溺」前の椅子の中に入る楽しみについて語る27分あたりからの音楽。
サックスが不穏な予感を感じさせる音色なのですが、ベースがなんとなくのほほんと楽しそうで、そのギャップと嬉々として魅力を語る朗読とのバランスが狂気。
うゎあああああ!怖い怖い怖い怖い!!!
人間椅子
というわけで非常に楽しませていただきましたこちらの作品。
で、オチを聞いて思い出したのですが、なんか読んだことあったかも。
オチで若干がっかりというか肩透かしくらわされた気分になった記憶がよみがえってきました。
このオチにたどり着く前の、椅子の中のいけない喜びや勝手な妄想にそこはかとなくシンパシーを抱いてしまったばつの悪さというか。
しかしまあ、普段「妄想がはかどるわ」とか言っていたりしたのですが、人間椅子の中で語られる妄想のぶっちぎり感には敵わなくて私もまだまだだなって思いました。
こことかね。
自分勝手すぎて笑った。
江戸川乱歩面白いな。
来年またなにかやれたらいいな