エロとは想像力である【ASMRにであう】

小学生のころ、放課後にエロ本を見つけて「うぉぉ」と声を上げた。

カン蹴りの最中に茂みに隠れていたら、葉っぱの裏にエッチな漫画があったのだ。雨が降ったのか表紙はしわくちゃ。しかし、それにまさる女性の肌のまぶしさとポーズがあった。

となりにいた男と一緒に、唾をのみこみながら、1ページ1ページ大事にめくっていった。濡れているので、力の入れ具合を誤ると、大事なところが破けてしまう……そぉーっと。そぉーっと。ゆびさきから均等に力をいれて……

そうしてカン蹴りの鬼に見つかった。いい思い出である。

高校時代にイギリスに行った。私はそこでも、エロ本を見つけた。万国どこに行っても、男は変わらないようである。

しかし、そこに見たのは、あからさまな性の露出だった。胸部も局部も全開。モザイクの跡さえなし。あまりにもあけっぴろげな姿に、私は男子校の高校生であるにもかかわらず、えろいとは感じなかった。

高校生の私は、えろさとは想像力が生むものだと理解した。

<閑話休題>

ASMRという音のジャンルをご存じだろうか。「耳にいい感じ」の音を総称したもので、たとえば、浜辺の波の音とか、木の葉がこすれあう音とか、そういうたぐいの音だ。

これだけなら普通の話だが、近年、革新が起きているらしい。録音機材が安く手に入るようになったことで、耳にいい感じの音が幅広く集まり始めたのだ。

たとえば、スライムで遊ぶときの音だ……この音を聞いてほしい。

どうだろうか。たしかにスライムで遊んでいる。スライムを手でこねたり、木製のフォークで混ぜ合わせたりしている。スライムには、スライムには間違いないのだが……

あっとうてきに、えろい。

もうこれは最上級にえろい。ねちょねちょ、くちゅくちゅ、たまに挟みこまれるささやき声。オノマトペが足りない。わけがわからないくらいに、えろい。しかも手がきれい。なんかスライムに変なのまぜてる。わけわかんない。ぜんぶえろい。

ほかのASMRでは、わざとらしくアイスを食べたり耳掃除をしていたりするシチュエーションもある。しかしそれらは、イギリスで見たあからさまなエロなのだ。想像の余地がせまくて、えろさが減じている。

スライムをこねくりまわしているだけなのに、なんでここまでえろいのか。それは、えろいとは想像力だからだ。

サポート金額よりも、サポートメッセージがありがたいんだと気づきました。 読んでいただいて、ありがとうございました。