第二回「暗号通貨と金融」

暗号通貨が既存金融の一部として認識されるようになった。新しいように見えるが、数年前に通り過ぎた議論だ。次はDeFi(分散型金融)の理解が進んでいくだろう。

ビットコインはコモディティ(投資商品)として公式に認められた。ニューヨーク証券取引所の親会社「ICE」が設立した子会社は、9月にも現物決済の先物取引を開始するとしている。

背景にはさまざまなことがある。マネロン対策を主導する国際組織のFATFは6月、暗号通貨の規制に関する解釈を確定した。これにより「綺麗なビットコイン」が生まれることにもなる。公的な組織体がビットコインを扱うには、綺麗なものに限る必要がある。

日本でも5月、仮想通貨の名称を暗号資産に変更する法改正が通った。金融商品取引法の規制が適用されることにもなり、スタートアップが扱うものではなく、銀行並みの管理体制、証券取引所並みの対応が求められるようになる。

一般のビジネスマンにとっては、6月のフェイスブックのニュースが大きいと言われる。世界最大級のSNSが、価格の安定した通貨「リブラ」をブロックチェーン上で扱うという。今まで怪訝な目で見ていた人たちも、権威的な存在が取り組むことで認識を改める。

市場は効率化する。

ビットコインに代表される暗号通貨は、これまでの「ゆがみ」が正され、徐々に適正な評価を得るようになる。何が適正かは、これから決まっていくだろう。しかし非効率は効率化される。

これらのニュースを聞いて、「空気が変わった」という人がいる。しかし本質的には、何も変わっていない。

3月に書いた記事がある。「暗号通貨と金融」というテーマで、三つの意味が内包されていることを指摘した記事だ。

①既存金融と暗号通貨の接点について
②分散型金融について(dopefi、defi)
③将来的な価値流通基盤としての分散型金融について

これらのニュースは、①の動きの方向性を再確認したにすぎない。既存金融が、暗号通貨を取り込もうとする動きだ。市場は効率化する。ゆがみを取り込んで適正化する。この議論は終わった。

今後「ゆがみ」として認識されるのは、②の部分だ。③に至っては「ゆがみ」として認識できる人が滅多にいない。

分散型金融をみる立場によって、②の立場か③の立場かが決まる。本質的には③だが、今後数年間は②の立場が大勢を占めるだろう。

金融庁には③の立場で見ている人がいる。これからどう実務に落とし込むかを見続けて行きたい。

私は3月、ビットコインが30万円代のときも一貫して暗号通貨を見続けてきた。ビットコインは何も変わっていないのに、周りの評価だけが変わっていくのを見てきた。9月現在、110万円を超えている。

今ようやく、分散型金融についても理解が始まってきた。分散型金融は何も変わっていないのに、周りの評価だけが変わっていくのを見ることになるだろう。

③の分散型金融に取り組む技術者やビジネスマンは、他者に説明する暇がない。語彙や思考枠組みが固有のものだからだ。説明コストが膨大になってしまう。

私は、説明コストを引き受ける立場にある。

サポート金額よりも、サポートメッセージがありがたいんだと気づきました。 読んでいただいて、ありがとうございました。