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G20福岡出張ーーはじめてのG20

6月7−10日にかけて、G20福岡に行った。ヤフオクドームのすぐ隣、ヒルトンホテルに、各国・各地域の財務大臣・中央銀行総裁が集まった。

(きのこ傘みたいな照明@ヒルトン)

私は暗号通貨メディア「CoinDesk Japan」の記者として福岡に行った。新卒から数ヶ月でG20に行くとは予想外だった。出張費用は5万円。それだけの成果を持ち帰らなければいけない。

不安を胸に羽田から飛行機に乗った。

(テレビスタッフは、これらの幕を背景にして撮影していた)

意外と福岡は近い。飛行機は1時間あまりで福岡空港に着いてしまった。機内で配られたジュースを飲み終わったら、「着陸のため、ランプが点きましたらシートベルトをお締めください」との機内放送がかかる。立って歩く時間もない。

福岡では、全てがぎゅっと詰まっている。空港、中心となる駅、繁華街、オフィス街、海、大きな公園……大抵のものが数キロ圏内に収まっている。G20会場も例外ではない。博多駅から20分ほどで最寄駅に着いてしまう。麻生太郎財務大臣が、さまざまな場所にアクセスしやすい点を福岡の魅力にあげたのも頷ける。

(博多駅、ヤフオクドーム、空港、海、大濠公園、天神(繁華街)が見てとれる。右下にある地図の縮尺は500メートル)

G20で印象的だったのは警備態勢だ。左上のG20会場に近づくほど、警備員の数は増えていく。主要な道には、バリケードをしけるように警察官が立ち、目を光らせていた。福岡県警だけではなく佐賀県警の車両も見え、「九州中から警察が集まっている」(機動隊員)とのことだった。

残念ながら写真はない。警備に影響があるので、警備態勢の写真を撮ることは許されなかった。

特に福岡ヒルトンホテルの敷地内は、警備態勢が格段に上がる。私は記者として、記者証を最初にもらった。首から記者証を下げていなければ「怪しい人物」と見なされ、敷地内に入ることさえ許されない。記者証は再発行されない。無くしたらG20の取材はできなくなる。

ホテルに入っても、スーツをきたセキュリティ要員が多くいる。常に視界の端には警備員がいる。監視された中での記者活動を余儀無くされた。世界中から要人が集まるので、当然といえば当然だ。何かあってからでは遅い。

要人が泊まるホテルにも、入り口には物々しいセキュリティが十数人、肩をいからせていた。街ゆく人も「首から何か下げている人たち、みんなG20の関係者だよ」と噂していた。福岡のゆったりとした雰囲気と、スーツを着ている物々しさは、全く相容れなかった。

<写真>

福岡に赴任している大学時代の先輩に連れられて、現地の夜を堪能した。「衛生の観点から、取り締まりが厳しくなってね」と指差された先には、数店しかない屋台があった。屋台から漏れる光が、夜の道を寂しく照らしていた。

私たちは「長浜満月」に入った。屋台での営業を辞め、路面店で営業をしている店だ。

店内の屋台席に座って食べたのは、鳥、餃子、魚だった。「ラーメンが有名だけど、うまいものは他にもある」。先輩の言うとおり、うまかった。ラーメンしか知らなかった不明を恥じた。

屋台席で食べていたら、隣のおじさん二人組から「どこから来たの」と突然声をかけられた。福岡弁じゃないのが珍しかったらしい。それをきっかけに話し出すうち、「鼻毛を切りなさいよ」と説教された。「今日の帰りにハサミを買って、鼻毛を切りなさい」。私は頷いた。親身なおじさんたちだった。コンビニでハサミを買って帰り、夜中、ホテルの洗面台で一人鼻毛を切った。

シャキン、シャキン。鼻毛を切る音が、静寂の中に響いた。

<閑話休題>

福岡ではいくつか記事を書いた。

一番大きかったのが、暗号通貨への規制強化の日程を抜いた記事だ。

G20のセミナーのメッセージは明確だった。「暗号通貨の基礎をなす分散型の金融システムは、将来的に規制の実効性を毀損するだろう。従来型の規制だけではなく、多様な参加者による新たなガバナンス枠組みが必要だ」というもの。しかしこれは、理念にすぎない。何も実際の動きにはなっていない。他紙はこのメッセージを取り上げて記事にした。

私は「そうじゃないだろう」と思った。「本当に決まったこと、議論されたことは何か?」という問いに答えていないからだ。私はしつこく質問し、それを記事にした。

結果的にブルームバーグよりも早く、日程を抜いた。1番の出張の成果だ。

あとは、G20の裏で福岡で行われたカンファレンスや

もちろんG20のセミナー・メッセージも書いた。

面白いところでは、福岡のバーで行われている実証実験の記事も書いた。ビットコインのライトニングネットワークを使った決済システムで、簡単に言うと「”ビットコインは遅いし手数料高いし使い物にならない”という話は過去になりつつある」という記事だ。技術の発展を、バーでお酒を飲みながら体験した。

この決済は、大学時代の先輩にも体験してもらった。その場でウォレットアプリをダウンロードしてもらって、私がライトニングでビットコインを渡し、先輩がビットコインで決済した。

例えばキャッシュレスアプリでも同じことができるだろう。しかし本人確認や銀行口座との紐付けがなければ、システムを使えないはずだ。ビットコインの場合には、現金のように「先輩に渡して先輩が決済する」ことができる。

インターネット上の現金という性質は、ますます重要になってくる。物理現実とソフトウェアの世界が重なってくる時代において、個人のプライバシーをいかに保つか、という課題に直結するからだ。

プライバシー保護と技術の進展をいかにバランスさせるかは、G20福岡でもテーマとなった。技術の進展はさまざまなものを自動化する。しかし自動化した結果、システムを構築した主体による管理が容易になる。自動化された世界は便利だ。自動化した未来において、いかにプライバシー(自ら管理される程度を選べる)を確保するか。

未来における重要な問いである。

サポート金額よりも、サポートメッセージがありがたいんだと気づきました。 読んでいただいて、ありがとうございました。