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国家主導で乗り出すブロックチェーン開発──中国のニュースを振り返る

「イノベーションのための重要な突破口として、ブロックチェーンを捉えなければならない」

2019年10月24日、習近平主席が中央委員会の研究会のなかで述べた。ここ数年、中国はブロックチェーンを活用しており、ついに国家主席が直接言及したことになる。フェイスブックの「リブラ」と並んで、2019年の画期的な日として記憶されるだろう。

習主席がこう述べてから、重要なニュースがあいついだ。ブロックチェーンの重要な要素である暗号技術の推進を目的とする法律が、全人代で可決された。中国の中央銀行が商業銀行に対しブロックチェーンの導入を求めた。広州市がブロックチェーン推進のため150億円規模の助成金を定めたという。テンセントはブロックチェーンを用いた請求書(インボイス)の国際規格策定で役割を果たす

これらの動きは、唐突なものではない。中国の公的機関はブロックチェーンを用いたインボイスを実運用している。中央銀行は、デジタル通貨(CBDC)の発行を準備してきた。2019年前期におけるブロックチェーン関連の特許の申請件数はアリババがトップで、中国企業が上位を占める

中国はビットコインの取引やICOを禁止してきた。一方で、ブロックチェーンの活用を進めてきた。習主席の発言で、この動きが加速する。

中国で使われるのは、コンソーシアム型のブロックチェーンだ。つまり、ブロックをつなげていく主体を限るものだ。行政では承認を与える主体がそもそも限られているため、各主体がコンソーシアムを組んでデータの活用基盤を共通化するメリットが即座に得られる。

一方でコンソーシアム運営においては、各主体の利害をあわせて運用を開始し、維持していくことに課題がある。今回の中国トップの発言は、その課題を強力に乗り越えさせる権力性をもつ。さまざまな社会的コストを削減できる。オフラインがなくなるなかで、民衆監視も効率化できる。中央組織の能力を投射する範囲を広げ、深める。

これからどうなるか、目が離せない。

サポート金額よりも、サポートメッセージがありがたいんだと気づきました。 読んでいただいて、ありがとうございました。