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(ほぼ)ノンフィクション・ノベルの傑作だ! 『熊と踊れ』【読書ログ#131】

『熊と踊れ 上』
『熊と踊れ 下』
(アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ)

昨日読んだ『卵をめぐる祖父の戦争』が超面白かったのだけど、本作もかなり面白かった。今週の通勤時間は天国のようだ!

まるでその場に置き去りにされたかのうようなリアリティ、特に序盤は息が詰まってしょうがない。それもそのはず、本作は実話を元に書かれた(ほぼ)ノンフィクションだ。まさに、まるで見てきたように書いている小説。

暴力で支配する父により精神の自由を奪われ、抑圧された家庭で少年時代を育った三兄弟。レオ、フェリックス、ヴィンセント。

父親を心の底から憎み避けていた兄弟は、父親の手から逃れる事が出来ず、もがき苦しむ。そして、息の詰まるような少年時代は、父親による母親への暴力で一区切りを迎える。

母親を殴り殺そうとする父親を、長男のレオが決死の覚悟で止め、父親は逮捕され投獄される。

成長した三兄弟と幼馴染のヤスペルは、長男レオの指揮のもと、途方もない犯罪に手を付ける。

彼らは軍の倉庫から大量の武器弾薬を略奪し、現金輸送車への強盗や銀行強盗を繰り返す。長男のレオは冷静沈着に計画を練り、兄弟たちと共に大胆に実行する。練りに練った計画、なんども繰り返すリハーサル、そして実行。三兄弟と幼馴染は、世間を震撼させる犯罪グループとなる。

だが、さまざまなズレが生じ、硬く結ばれていると思える兄弟の絆にもほころびが出始まる。そこに父親が現れ…… 怒涛の展開にページを手繰る手が止まらない!

長男レオは父親を心の底から蔑み嫌うが、レオが兄弟を守るために取る暴力はまさに父親からならったソレという皮肉。その葛藤が見え隠れして心が痛む。終盤の怒涛の展開とカタルシス高まる終わり方。さわやかな気分にすらなる読後感。なんと力強い物語か。こりゃ傑作っしょ。

上下合わせて1000ページ弱もあるので1週間は楽しめる! 私は1.5日で読んじゃったけど! もったいね! とにかく面白い! おすすめ!

同じ作者チームによる続編も出ているが、これは実話ではないそうな。すぐに読んだら疲れちゃうかもしれないので、しばらくしたら読んでみます。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。