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【書評】 面白い! むっつりユダヤ人と天真爛漫ロシア人の胸キュンコメディ『卵をめぐる祖父の戦争』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。130冊目。

『卵をめぐる祖父の戦争』(デイヴィッド・ベニオフ)

以前、採卵用の鶏の悲惨な生活を知った悲しみから、パッケージに「平飼い」と書いてある卵しか買えなくなったので飲むビールの量が減って三方由、という投稿をしました。そうしたら、本書を紹介頂きました。

↓ 鶏に思いを寄せた記事はこれ ↓

読みましたよ。本当にありがとうございました。超面白い。

なにこれ、超面白い。

素晴らしい冒険活劇。本を読んでいるだけで、面白い本を紹介してもらえる。note書いてて良かった。

本作の舞台は一九四二年のレニングラード。歴史好きならピンとくる、ナチスドイツがレニングラードを包囲し猛攻を加えた「レニングラード包囲戦」の最中だ。

近代戦史上最長とも言われる約900日にも及ぶ包囲戦は、街に住む人々を絶望的な飢饉に追いやり、それはもう悲惨な事になった。一説ではこの包囲線だけで100万人近く亡くなった。とにかく酷い。

そんなレニングラードで、消防団長を務める17歳の青年レフは、パラシュートで落ちてきたナチス兵士から略奪をして捕まってしまう。そして、生きては出られないという収容所で、コーリャという自由奔放でイケメンで天真爛漫で口が達者で女の子が大好きなコーリャと出会う。彼は脱走兵だった。

略奪犯に脱走兵。二人は銃殺間違いなしの絶望的な状況だったのだが、娘の結婚式にケーキを作りたいから1週間で卵を1ダース見つけてこいと、秘密警察の大佐に命じられ解放される。

そこからは二人の珍道中なのだが、目も覆いたくなるような状況のなか、コーリャの圧倒的なバカバカしさと下ネタが、深刻さ、悲惨さ、愚かさを笑い飛ばしながら話は進んでいく。

言うまでもなく、戦争は悲惨だ。

言うまでもなく、戦争は愚かだ。

言うまでもない。

作中では徹底的に飢えと蛮行と死をリアルに描いているが、それらの愚行の描写がリアルであればあるほど人間の愚かさが際立ち、人間の滑稽さが際立つ。

昔から、映画でも小説でも、戦争はコメディの絶好の舞台だったが、本作のように、リアリティを残しながらも、ギリギリの線でコメディに仕立てている作品は余り無いよのではないかな。遍く読んで目ているわけではないけど。

むっつりユダヤ人ハーフのレフと、天真爛漫イケメン金髪ロシア野郎コーリャの二人は、軽妙な無駄口と、底なしの下ネタで戦場を渡り歩いていく。

まぁとにかく面白い。二人の掛け合い(というかコーリャの暴走)の面白さと、構成の巧みさが見事。是非、読んでみて。そして、最後まで読んだら、また最初の章だけ読み直してほしい。そして、ニヨニヨしてほしい。

これぞ冒険活劇。傑作だ。

著者は映画『25時』の原作を書いたり、GOTのプロデューサーだったりして多彩すぎて眩しい。ほかにも色々と読んでみたくなる。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。