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信仰をもたない人々の「?」に答えちゃう『新約聖書を知っていますか』【読書ログ#111】

『新約聖書を知っていますか』(阿刀田高)

本の紹介に「欧米の文化に触れるとき、聖書の知識は欠かせない」とある。その通りだよね。その通りなんですよ。

その通りなのはね、昔からうすうすというか、しっかりとした実感を伴いながら感づいていて、ある程度は勉強しとかないとなぁ、と常々思っていたわけです。だから、解説書や聖書そのものを手にとったりもする。

だけど、どうしてもイエスが各地で起こした奇跡の話だとか、そういったもろもろが私の心を冷まして(本当にすみません)しまい、ついついほっぽらかしてしまう。

だが、やはり欧米の文学や映画、美術は、聖書からの引用が多いし、聖書で語られる物語をなぞることで様々な比喩や説明がおこなわれていたりして、大げさではなく、わりと必須で必要な知識である。

そこで阿刀田高さんですよ。本書、聖書を読まなくても、ある程度知った気になれるという素晴らしい本。以前紹介した『旧約聖書を知っていますか』とあわせて読んでおきたい。名著。併せて読むことで、聖書が理解出来た気になるし、欧米で作られたコンテンツから受け取れるメッセージの量が、実際に増える。

例えば映画「JOKER」の最後の方なんて、典型的な「反キリスト」としてかかれるのに、観客の心のどこかにそれを祝福させるような描かれ方をしているわけで(あまつさえカタルシスを感じてしまう私のようなひともいる)、欧米人からしたらかなり強烈な映画なのだろうなと想像が出来るわけです。

阿刀田さんは、まずは僕らが率直に感じてしまう『聖書』の「わかりにくさ」や「とっつきにくさ」、あえていうなら「うさんくささ」(本当にすみません)を否定しない。

そのうえで、聖書を理解するためにこう読んでみた、という事を書いてくれている。

目次は下記の通り。見覚えがあるけど、よくわからない。というのが大半の人の感想ではないかしら。

第1話 受胎告知
第2話 妖女サロメ
第3話 ガリラヤ湖
第4話 十二人の弟子
第5話 イエスの変容
第6話 ゴルゴタへの道
第7話 ピエタと女たち
第8話 クオ・ヴァディス
第9話 パウロが行く
第10話 黙示とエピローグ

信仰を持つ方々であればおなじみのエピソードだと思うのだけど、阿刀田さんは、そうでない日本人の視点で分かりやすく、丁寧に、(前作ほどではないけれども)ユーモアを交えて解説してくれている。

そういえば、子供の頃に通っていた英会話教室でも聖書の話が出てきた。知識としてのキリスト教の重要さを理解していただろう先生は、熱心に聖書の勉強をすすめてくれていたなぁ。残念なことに、当時コペル21を愛読していた科学少年マエダは、聖書の逸話を聴いても「そんなわけないっしょ、なまらはんかくせぇ!」と反発していた。今思えば、実にもったいなかった。超美人だった先生に、もっとしっかり教わればよかった。

この先生、若くして病気で亡くなってしまったのだけど、きっと色々と子供達に伝えたかったのだろうなと、今さら思う。出来の悪い子でごめんなさい。

ということで、先日の『旧約聖書を知っていますか』とこの本については、クリスマスもハリウッド映画も欧米文学も好きだし、それなりに意図を汲み取った楽しみ方をしたいな、という日本人に強烈におすすめです。

あと、これからヨーロッパ旅行に行って美術館とかまわっちゃう人にもおすすめです。

旧約聖書はこちら。

阿刀田さんの『コーランを知っていますか』のご紹介も近々。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。