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ホロリもあるよ 記憶を失った少女と、形を失った少年が誰も居なくなった世界で生きる『オンノジ』【読書ログ#105】

『オンノジ』(施川ユウキ)

ウィル・スミスという超いい人そうな俳優が主演した映画に『アイアムレジェンド』という作品があった。原作は『地球最後の男』で、自分と飼い犬以外誰もいなくなったNYで他の生存者を探している男の話。

『オンノジ』はまさにそんな世界のお話だ。だが、設定はかなりホンワカしている。ウィル・スミスは小学生の女の子になり、相棒は猟犬ではなくフラミンゴだ。

突然、人がいなくなった世界で、少女・ミヤコと元少年のフラミンゴ・オンノジが暮らしていく、笑えて、驚いて、切なくもなる日常とは…。 鳥と少女と無人街。非日常系ギャグ4コマ!!
(amazon.co.jpより)

誰も居なくなった世界。自分以外の生物がまったく居ない世界。そんな世界に放り出されたミヤコは、一人でたくましく怒ったり笑ったり、いじけたり悲しんだり、そしていちいち自分でちゃんとツッコミをいれたりして生活をしていた。

ある日、街中に他にも何か居るという痕跡を見つける。それが、誰なのかわからないけど、ミヤコは、自分が独りぼっちでないのならば御の字だ、ということで、その何者かに「オンノジ」と名付ける。

そしてある日、挙動不審なフラミンゴと出会う。このフラミンゴが「オンノジ」だったのだ。

オンノジは、もともと人間の男の子だ。オンノジも気が付いたら周りに誰も居なくなっていた、そして何故かフラミンゴになっていた。

フラミンゴだけど、ちゃんとお話しが出来るし、一緒に学園ドラマの撮影もできるし、バンドを組むこともできる。

一人と一羽は、一緒に生活をしながら、この不条理な世界を受け入れ、ボケとツッコミにツッコミを重ね生きていく。なんだか楽しそうだ。

基本的に4コマで進むのだけど、中だるみも無く170ページ位、ずっと楽しく読んでいられる。もうずっとホンワカしていていい。ストレスも無い、ハラハラもドキドキも無い、ずっと温和な気持ちで平和に読んでいられる。最後のほうは、話がウワーっと展開し、ホロリもあるよ。

何故、誰も居なくなったのか、なぜ少年はフラミンゴになってしまったのか、この世界はこの先どうなるのか? そういった謎に……

一切答えない!

でも、いいのだ。最後は素敵なハッピーエンドで締めくくられます。

時期的に、3.11を強く意識していたのだろうなと思う。作品は「何故こんな目にあうのか」ではなく「さて、この先どうやっていこうか」に目が向いている。これが作者の考える我々へのメッセージなんだと受け取った。

ウィル・スミスのアイアムレジェンドは、結局ゾンビかよ! と憤慨したけど、その原作の『地球最後の男』はいいよね。

施川ユウキは他の作品を読んだことが無いので、ちょっと追いかけてみようかな。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。