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【書評】 小学三年生を担任する教師が激賞するのも納得な 『失敗図鑑』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。99冊目。

『失敗図鑑』(大野正人)

子どもが通う小学校の「学校公開日」という催しに行ってきた。

私が子供のころ、授業参観というものがあって、通常授業を父兄が教室の後ろに立ち参観するスタイルだった。ある時間になると、後ろのドアがガラリと開き、父兄がぞろぞろと入ってくる。全ての日本人にとっての原風景。

でも、私の娘が通う小学校では「参観」ではなく「公開」だった。しかも、授業ではなくて学校を公開だ。これが面白かった。

6学年全クラス、どの授業も出入り自由なのだ。自分の子供が居ようが居まいがお構いなしに好きな教室に入って見学が出来る。どこでも出入り自由。

事前に配られたプリントには、全学年、全クラスの時間割と事業内容が案内されていて、親はそれを見ながら色々な授業を見学してまわるというものだ。

こりゃ面白いということで、自分の子供の授業見学は早々に切り上げ、あれこれと教室をみてまわることにした。

妻は、自分が通っていた小学校なので、勝手知ったる感じを出しつつ、記憶や思い出の答え合わせをしていて楽しそうだった。うらやましいな。

で、この小学校、どうやら読書に力をいれているようで、すべての学年の全てのクラスの教室の廊下の壁に、絵日記形式の読書感想文が貼られていたのだ。

これが超面白かった。

読んだ本のタイトルと作者、内容を説明する絵、それに100字程度の読書感想文。これが全学年同じフォーマットになっていて、全生徒が書いている。

低学年だと、「おしりたんてい」とコナンが人気で、絵本も目立つ。

ちなみに私の娘はコナンを紹介していたが、ほとんど定型文で、感想らしい感想が「悪い奴が出てきた」位なので憤慨する。悪い奴が出てこないコナンのエピソードなんて無いだろう。

我が娘のふがいなさに失笑しながら、学年があげながら追っていく。

読書好きの子はあきらかに読書力があがってくるので、難しい本を手に取り始めるが、読書なんて居酒屋のお通し程度(避けられないから受けれいるが興味が無いので食べたものリストにカウントされない扱い)位にしか思っていない子は、あからさまに読んでいないと分かる感想を書いたりしている。全然本とは関係の話で紙を埋めているのをみて、まるで自分のnoteの記事のようだなと思い落ち込む。

3年生以上になると『都会のトム&ソーヤ』シリーズが目立ってくる。クラスに必ず一人か二人は感想を書いている。同じくらい多いのはコナンのシリーズ。この2作品の人気はすごい。

5年生や6年生の上級生ともになると、読書好き子さんのレベルが凄い上がっているのがわかる。宮部みゆきとか、恩田陸、湊かなえ、東野圭吾などが出てきたりして、え、それ読んでるの? とドキドキしたりする。

あとは、ビジネス書にチャレンジしている子もチラホラ居て驚く。

6年生のを眺めていたら「The Third Door」の読書感想文なんてのもあって恐れ入った。最近平積みになっている本だよ。なにそのキャッチアップの早さ。しかも、ちゃんと読んでいる風だし。絵日記部分のイラストはジョブズの似顔絵で、しかも、ウォルター・アイザックソンのジョブズ本の表紙を鉛筆で書いてあって、しかも上手いの。どうなってるんだろう。感想文には「私にも自分のドアがあるはずだし、皆にもあるはずだ。」とか書いてあって戦慄。勇気をありがとう。どうなってるんだろう。

近頃の6年生ってすごいのね。この子が凄いだけなのかもしれないけど。

僕が6年生のころなんて、雪深い公園の広場でディグタグごっこをしていて雪に埋まり、出口のない雪の中で遭難しかけたりしていたのに。この子は自分のドアを探しているよ。

ちなみに、ディグタグごっこってのは、除雪で捨てられた雪の山にトンネルを掘っておいて、雪合戦のときに塹壕戦をするための穴を事前に掘っておく遊びのことです。札幌のハッサム川近く、オンコ公園ローカルの遊び。

除雪車が捨てていった大きな雪の塊は、おそらく4メートル位の高さの山になっていて、そこを南北に挟んで近所の子供達による雪合戦がよくおこなわれていました。

その雪合戦は、雪山の山頂を取ると戦局が有利になるので、まずはその山を取りに行くのがセオリー。失敗すると二〇三高地化するので、乃木希典よろしく玉砕覚悟の肉弾戦で奪還に動く事になる。でも、だいたいは失敗してしまう。

そこで、事前に穴を掘って起き、二〇三高地が取られた時用に、山頂を狙える横穴を用意しようと思った次第。その作業をディグタグごっこと呼んでいた。

だけど、たいていは子供達の腕力では塹壕と呼べるようなトンネルなんてほれるわけもなく、横穴を50センチから1メートル位掘っておしまいなんだけど、ある日そこ潜んで山頂を攻撃すべく狙っていたら、穴がくずれてしまい生き埋めになってしまった。

その時は、すぐに助け出してもらって事なきを得たのだけど、青白い世界にピッタリ閉じ込められて、すこし綺麗だなぁと思ったような記憶がある。生きていてい良かった。

あ、話を戻します。

で、そんな生徒たちの愉快な読書感想を読んでいたら、図書室の前の掲示板に行きついた。そこでは、教師によるレコメンドが紹介されていました。おそらく、担任をもつ教師全員による手書きによるレコメンド。A4サイズの紙に、コラージュしたり、イラストを描いたり、手の込んだ本の紹介が行われている。

生徒に読ませるからには、教師達も何かその手伝いをということなのだろうけど、内容が熱くてすごい熱量。子供が好きなんだろうな、ありがとう。変な教師のニュースが流れてくるけど、ほとんどの教師は子供が好きだから教師を仕事にしているのよね。ありがとう。

先生達のレコメンドを眺めてみると、それぞれ独自の視点で選書していて面白い。以前、娘が京極夏彦の絵本を借りたとき、先生のおすすめだったという話だったが、このコーナーをみたのだろうな。

すでに京極の本は無かったので、定期的に入れ替えているようで感心する。全生徒の読書感想文の掲示といい、読書に相当力をいれているようだ。大感謝だ。

そんな先生たちの手書きのレコメンドを楽しく眺めていたら「失敗図鑑」という本が紹介されていた。見たことが無いのだけど、失敗学好きなので気になった。で、どんな本かなと思ってアマゾンで検索をしてみたら、Prime本で無料で読めるものだったので、さっそくダウンロードし、子どもが寝静まったあとに開いてみた。

最初は大人向けの本かなと勘違いしていたのだけど、本書は子供向けの児童書だった。へぇ、面白い。

内容は、誰もがしっている偉人の失敗談をあつめたもの。

そうそうたるメンバーが名を連ねる。あー、失敗話をあつめただけのムック本みたいなやつかなぁと舐めた態度で読み始めたら、結構ちゃんとしていてすごいのよ。

乱暴にいえば、偉人の失敗談をあつめただけの本なんだけど、その失敗の本質がなんだったのか? どうしたらよかったのか? 自分達はどのようなことをこの失敗から学び、どのように行動につなげたらよいのか? ということがまとめられていて、大人が読んでも感心する内容になっている。

子ども向けの本って、思った以上にしっかりしているのね。いやぁ、あまり認識していませんでした。ごめんなさい。そうだよね、宮部みゆきを読む位だ、子どもだってしっかりしている。適当な内容では満足してもらえないよ。

本書では、失敗を悔やむだけではなく、その失敗をどのように乗り越えればよいのか? そういったヒントにあふれた本であった。小学生のうちにこの本に触れておくと、色々と勇気がもらえるのではないだろうか。ベストセラーなのもうなずける。

だが、私のディグタグ洞窟の崩落事故については、この本を読んでも活用の道はなさそうだ。The Third Door を読んで人生のブレイクスルーに思いをはせる小学生がこの世に居るというのに、雪合戦で地中に潜み奇襲を狙うという作戦にうつつを抜かしていた少年もいる。

世界は広い。こんな私でも2児の父です。多様性を認めてくれてありがとう。これからもよろしくお願い致します。

小学三年生位になったら読ませてみたいと思いました。

「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。