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あのこまっしゃくれ王の成長譚『図南の翼 (となんのつばさ) 十二国記 6』

『図南の翼 (となんのつばさ) 十二国記 6』(小野不由美)

通勤が長いんです。サラリーマンをしているのだけど、家を出てから会社のデスクに着くまで1時間半弱かかる。往復3時間弱。こち亀の大原部長並みに長い。疲れるし、疲れる。それに、疲れる。

とはいえ、悪い事ばかりでもない、長い長い通勤は、フィクションにのめり込むのにちょうど良いのだ。どうせじっとしているしかない電車内、満員電車でなければ読書にぴったりだ。

だがしかし、テレワークが当たり前になって3ヶ月、すっかり通勤から遠ざかってしまった。テレワークはすばらしいのだけど、長時間読書というのが出来なくなってしまった。フィクションを楽しむ為には、深い没頭が必要だと思っていて、どうしても在宅勤務中で日常と仕事がまじりあったなかでは楽しむことが出来なかった。そうなると、チャンクの小さいビジネス書が読みやすいので、フィクションから少し離れ気味だった。

しかし、これではいかんと、夜中に2時間、ネットも酒も夜食も遮断した読書タイムを設ける事にし、小説読みを再開しようと途中でとまっていた十二国記に戻る事にした。今回は6作目。

今回の主人公は12歳の少女珠晶(しょうしゅ)。これまでの作品を読んでいれば、この子が王になるのはわかっている。表紙でも隠していないし。ああ、あの子のことかと、あのこまっしゃくれた奴かと。

珠晶単独の物語ということで、最初は陽子の時のように苦しい旅の末に王として指名される物語的な流れかなと思っていたら、最初から王として指名されるために旅を始めていた、そして、ずっとこまっしゃくれている。

本作は、主に黄海での旅の過程で、珠晶が人を知り、王としての資質を得ながら成長していく物語なのだけど、これまでの作品と比べても頭一つ抜けた面白さだ。

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刊行済みのシリーズを並べてみると、残り半分に手をつけ始めた感じ。

これが最高傑作だったらどうしようという不安と、この調子でこの先もグイグイ行くのかな? という期待。


「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。