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半精度、単精度、倍精度とは?:計算精度とメモリ使用量のトレードオフ🌱

コンピュータの計算において、浮動小数点数は非常に重要な役割を果たします。浮動小数点数には、半精度単精度倍精度という3つの主要な形式があります。これらの形式は、数値の精度とメモリの使用量に関する異なる特性を持っています。

この記事では、それぞれの用語について詳しく説明し、どのような場面で使用されるかを理由とともに紹介します。


浮動小数点数とは?

浮動小数点数は、小数をコンピュータ内で表現するための形式の1つで、特に非常に大きな数や非常に小さな数を効率的に扱うことができます。浮動小数点という名前は、数値を表現する際に小数点の位置が「浮動」する、すなわち変動することから来ています。

この表現は、信号処理、科学計算、金融工学、機械学習など幅広い分野で利用されています。浮動小数点数は一般的に以下の3つの部分から構成されます:

  • 符号ビット:この部分は数値が正か負かを示します。

  • 基数(仮数):実際の数値部分を表します。

  • 指数部:基数を何倍するか、または何分するかを指定します。

この構造により、非常に大きな範囲の数値を表現できるため、例えば0.0000005のような非常に小さな値から、3.4 ×10^38のような非常に大きな値まで扱うことができます。浮動小数点数の表現方法は、IEEE754という標準に基づいて規定されています。

10進数表現と浮動小数点数表現の違い。符号、仮数、基数、指数によって数字が表現されるが、浮動小数点では、仮数部分が長くなるため、大きな配列(メモリ容量)を設ける必要がある。(引用元:https://serip39.hatenablog.com/entry/2022/02/15/070000)

半精度

半精度(Half Precision)は、16ビットの浮動小数点形式です。この形式は、IEEE 754標準に基づいています。半精度は、主にメモリの節約が求められる場面で使用されます。例えば、機械学習ディープラーニングの分野では、大量のデータを扱うため、メモリ効率が非常に重要です。半精度の浮動小数点数は、次のような構造を持っています:

  • 符号ビット:1ビット

  • 指数部:5ビット

  • 仮数部:10ビット

半精度では、符号部が1ビット(+ or -)、指数部が5ビット、仮数部が10ビットで数値が表現される。(引用元:https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1812/20/news012_2.html)

この形式は、精度が低いため、非常に大きな数や非常に小さな数を正確に表現することは難しいです。しかし、計算速度が速く、メモリ使用量が少ないため、特定の用途では非常に有効です。例えば、画像処理音声認識など、精度よりも速度やメモリ効率が重視される分野で活躍します。

単精度

単精度(Single Precision)は、32ビットの浮動小数点形式です。こちらもIEEE 754標準に基づいています。単精度は、一般的な計算やゲーム開発、グラフィックス処理などで広く使用されています。単精度の浮動小数点数は、次のような構造を持っています:

  • 符号ビット:1ビット

  • 指数部:8ビット

  • 仮数部:23ビット

単精度では、符号部が1ビット(+ or -)、指数部が8ビット、仮数部が23ビットで数値が表現される。(引用元:https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1812/20/news012_2.html)

単精度は、半精度に比べて精度が高く、より広い範囲の数値を表現できます。しかし、倍精度に比べるとメモリ使用量が少ないため、バランスの取れた形式と言えます。例えば、ゲームエンジンリアルタイムレンダリングでは、単精度がよく使われます。これらの分野では、精度とパフォーマンスのバランスが重要だからです。

それでも最近では、16ビットの半精度でゲームエンジンを開発している事例もあるそうです。

倍精度

倍精度(Double Precision)は、64ビットの浮動小数点形式です。IEEE 754標準に基づいており、科学技術計算や金融計算など、非常に高い精度が求められる場面で使用されます。倍精度の浮動小数点数は、次のような構造を持っています:

  • 符号ビット:1ビット

  • 指数部:11ビット

  • 仮数部:52ビット

倍精度では、符号部が1ビット(+ or -)、指数部が11ビット、仮数部が52ビットで数値が表現される。(引用元:https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1812/20/news012_2.html)

倍精度は、非常に高い精度と広い範囲の数値を表現できますが、その分メモリ使用量が多くなります。そのため、計算資源が豊富な環境で使用されることが多いです。例えば、気象予測宇宙シミュレーションなど、非常に高い精度が必要な計算に使用されます。

気象庁による数値予測モデル。一般的に、精度が重要な計算は64ビットの倍精度で計算がなされる(引用元:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2020/index4.html)

使用例の詳細

  • 半精度:

    • 機械学習: 大規模なデータセットを扱うため、メモリ効率が重要。例えば、ニューラルネットワークのトレーニングで使用される。

    • 画像処理: 高速な処理が求められるため、精度よりも速度が優先される。

  • 単精度:

    • ゲーム開発: リアルタイムでのレンダリングが必要なため、精度とパフォーマンスのバランスが重要。

    • グラフィックス処理: 3Dモデリングやアニメーションで広く使用される。

  • 倍精度:

    • 科学技術計算: 高精度なシミュレーションが必要なため、倍精度が使用される。例えば、流体力学や分子動力学のシミュレーション。

    • 金融計算: 非常に高い精度が求められるため、リスク管理やオプション価格の計算に使用される。

まとめ

  • 半精度:16ビット、メモリ効率が高いが精度は低い。機械学習や画像処理に適している。

  • 単精度:32ビット、バランスの取れた精度とメモリ使用量。ゲーム開発やグラフィックス処理に適している。

  • 倍精度:64ビット、非常に高い精度が必要な計算に使用。科学技術計算や金融計算に適している。

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専門用語の解説

  • 浮動小数点数:小数点の位置が固定されていない数値形式。非常に大きな数や非常に小さな数を表現できる。

  • IEEE 754:浮動小数点数の表現と計算方法に関する国際標準。

  • 符号ビット:数値が正か負かを示すビット。

  • 指数部:数値のスケールを示す部分。

  • 仮数部:数値の具体的な値を示す部分。

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参考文献


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