医療ドラマ対決の行方!?<ネタバレあり>

先日、今期の注目の医療ドラマ2作が最終回を迎えた。

放送前から注目と話題を集めていた両作。
放送が始まってからは、比べられることも多かった。

視聴率的には大差あったが、どちらも見ごたえはあった。

これまでにも刑事ドラマや恋愛もの、学園ものなどジャンルによって偏ったクールもあったが、今回は特に各局の看板ドラマ枠での放送とあって、さらに盛り上がった。

どちらも架空の制度・設定の基に救命救急の活躍が描かれていること。
『TOKYO MER』は、最新の医療機器とオペ室を搭載した緊急車両(ERカー)で、災害などの現場で救命処置を施す「TOKYO MER」という救命救急チームを東京都内で試験的に開始する架空の設定の物語だ。

一方で、『ナイト・ドクター』は、『2024年の医師の働き方改革』が施行されるのを前に、試験的に夜間専門の医師を募った救命救急センターを新設するという物語。


何トンもの瓦礫を当たったり、時には動かしたりと、まるでスーパーマンのような医師の活躍を描くのが『TOKYO MER』。
スーパー戦隊ものと言われるほど、エンターテイメントに徹し、救命救急医・喜多見の大活躍をヒーローとして描かれた。

しかし、「死者は・・・ゼロです」が決まり文句のような名台詞が続いていたが、
ある日、TOKYO MERが新設され、初めて死者が一人出た。
その現場は、テロ現場。
そのテロの首謀者は、かつて喜多見が命を救った人物・椿。
そして、その死者・被害者が最愛の家族でもある妹だった。
あまりにも残酷な展開ではあるが、紛れもなくこの物語になくてはならない展開でもあった。
それは、最終回で、奇しくも最愛の家族の命を奪った悪魔の命(椿)を医師として救う展開が待っていたからだ。
最大に肉親の死を、視聴者にこれでもかと残酷なまでに喜多見という男を追い込む姿を見せる。
しかし、医師であり続ける以上、目の前にいる患者の命を見捨てるわけにはいかない。
例え、凶悪犯であり、最愛の妹を殺した犯人だとしても、医師である信念を貫いた瞬間は、オープニングでも再三、医療従事者へのエールがテロップや写真と共に演出されていたように、医師の誇らしさ、医師の使命が描かれた。
おまけになるが、白金大臣の行動には日曜劇場らしさもあって、スカッとする場面は日曜劇場枠としては欠かせない場面であっただろう。


一方、『ナイト・ドクター』は、夜間の労働問題について描かれ、コンビニ受診、健康保険未介入者の貧弱実態、夜間専門の労働による偏見(職業柄の男女差別偏見)、そして、臓器移植問題。
様々な社会問題・医療問題が盛り込まれていた。
それだけに、若い5人の医師たちの青春群像劇がうまくまとまり切れなかったのは残念だった。

ただ、9話で描かれた臓器提供の回だけ、群像劇としてまとまっていて良かった。

臓器提供した母を持つ朝倉、そのレシピエントである桜庭、二人の関係性を知る成瀬、医師として臓器提供の考えを示す高岡、そして、臓器提供に記入した妹に困惑する医師であり兄である深澤。
同じくして臓器提供をテーマに、それぞれの視点で描かれ、難しい問題ではあるが、このドラマとしての答えを導き出した回だった。

それぞれの視点から同じテーマに向かうのが群像劇だと思っているが、9話を除いては、どうしてもテーマ・メッセージ性が強く出過ぎて、説明っぽくなり、ゲストとなる患者を物語の道具に過ぎない扱い方が気になって仕方なかった。

フジテレビ系の医療ドラマでは、これまで様々な医療問題を取り上げられてきたが、その集大成と言っても過言じゃないぐらいの医療問題・社会問題が盛り込まれていた。

盛り込み過ぎて、メインの5人の医師の存在が薄くなってしまった感は否めない。
確かに最終回では5人の医師の大きな成長を感じた。
だが、一人だけ岸優太演じる深澤だけ一歩、踏み出せなかった。
そこで、優秀な成瀬の一言で踏み出せる場面は、『助け合い』という裏テーマが含まれていたのだろう。

それぞれの立ち位置があって、それじれが助け合って生きていく。
コロナ渦で目にすることが多くなったエッセンシャルワーカーにスポットを当てた最終回。
ワイヤレスイヤホン一つで電車が止まる。もしくは大事故に繋がる。
毎日の点検があって安心・安全に公共の場を歩ける。
隣の芝生は青い。ということわざがあるが、自身の仕事に誇りを持つ尊さ。
他業種から見て嫌われがちな業種はあるが、その仕事に誇りをもって伝えていけば必ず新しい明るい形が見えると、この最終回を通して描かれた。

メッセージ性は強いが、やはり気になるのは5人の医師のプライベートが中途半端だったことだ。
それに尽きる。

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