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脳動脈瘤発見で検査入院をした回(4)最終回

【これまでのあらすじ】
身体のあらゆるところがなんらかの管やコードで繋がれている。

ベッドが起こされた!

コマンド?
→ねる
ねる
ねる
ねるね

寝るしか選べない。

15時。

ベッドを30°起こす許可が出たものの、ちょっと背中が楽だな〜程度。相変わらず色々なコードや管がついてるので手を動かすのもうまくいかず、キャスターつきの食事用テーブルに置いた吸い飲みを手に取るのが精一杯。看護師さんが持ってきてくださった食パンも袋を開けられないし、ジャムの小袋など言わずもがなである。右手は中指にパルスオキシメーターのクリップが挟んであるだけでなにも切ったり刺したりしてないのに、中指の自由がないと力が入らなくて何も出来ないのだなあ。手は大事にしよ…ケジメ案件とかで…指詰めなどせず…平和な…。

しかし寝ようにも暑い

前回もすこし書いたが病室には昼夜の生活リズムを日光で整えるためかカーテンがないうえに空調も風がほぼ感じられず、肺血栓症(エコノミー症候群)予防で穿いている着圧ソックスの密着度合いもあいまってとにかく暑い。検査室が寒すぎたせいもあって体温調節がめちゃくちゃだし実際微熱も出た。
夏にやるもんじゃないんだなと若干後悔したが最短で検査すると言ったのは自分なのだ…あさはか…。何度も氷枕を替えてくれた看護師さんほんとうにありがとう…。

そんな状態で来てくれた夫に何もお構い出来ずむしろめちゃくちゃ構われて(お茶買ってきて扇風機ずらしてコップ洗ってきてと色々すぐやってくれてありがとやで)ありがたいことこのうえなかった。麻酔が切れたすぐ後で何かの拍子にめちゃくちゃしょうもないことで笑わされてDotを負ったのも許そうと思う。痛かったんだからな(許してない)。

ベッドでもう寝れないんだよおれたち(大泉洋ボイス)

夜。
検査室で貼られた穿刺部固定用のでかい絆創膏が剥がされ、ベッドを45°まで起こす許可と、検査で穿刺しなかった左脚を曲げて動かす許可、右足を伸ばしたままなことを条件に寝相を変える許可が出た(※1)が、ベッドは起こしたぶんだけ腰が浮いて逆に辛いのでもう何もせずただ寝る。氷枕を替えてもらいつつひたすら寝る。身体の側面を下にしたくてもあらゆる管とコードが邪魔をするし、絆創膏の粘着成分が全然取れなくて寝巻きの張り付き方が尋常じゃないからちょっと動こうとするだけでも寝巻きと肌がぺりぺりする感覚でもうヤダーッ!左脚の膝を曲げ伸ばし出来るのだけがわずかな癒しだった。

水曜どうでしょう名物サイコロの旅シリーズ、キングオブ夜行バスもこんな風に辛かったのかな…何も考えずゲラゲラ笑って見ててごめんな洋ちゃん…。

そして よるが あけた!

結局、左脚をウネウネした以外はさして寝相を変えることも出来ず、検査後とほぼ同じ姿勢のまま、前日と同じような寝不足でまた朝を迎えた。幸い、あとは傷の経過さえよければ晴れて退院である。検査結果の説明は早くて午後以降とのことだったが、点滴やその他諸々が外されるのは朝のうちに全て終わってしまった。両手で伸びが出来る幸せ!自分で歩いてトイレに行ける自由!プライスレス!!(※2)

造影剤アレルギーはあとから発生することもあるらしかったが、ただただ寝苦しいだけで異常が起きることもなく、血圧脈拍すべて安定しており穿刺箇所の腫れや再出血もない(※3)とのことだった。もうほんとただただ寝苦しかっただけで済んでよかった……。あさごはんのバナナおいしいなあ……。

あとは検査結果を聞いて帰るだけなので、荷物をまとめたり、売店で昼食を買ったりと気ままに過ごす……のはいいのだが、穿刺した箇所が箇所なので座ったままだと地味に痛い。鼠蹊部の動脈(骨盤のもうちょっと内側。当然ながら座ると角になる)にボールペンの替え芯くらいの穴が空いたんだからそりゃ痛いのだ。

余談だが、この日は担当医の先生が緊急の手術の予定やら何やらで説明も延び延びになり、なんだかんだで20時すぎまでゴロゴロと居座ってしまうことになる。いつまで待たなければいけないか不透明だったのはまあまあ困ったもんなのだが、それだけ自分の案件は緊急性が低いことの証明でもあったし、一歩間違えば自分がその緊急手術を受けていたかもしれないことを思うと、待てるというのは決して不幸ではないなと感じられた。

検査結果

結論から言うと、何らかの何かはやはり出来ていた。いたのだけど………。

先生「2mmですね」

私「2mm」

先生「2mm

なんとも微妙〜〜〜〜すぎる数字なのが、ほんのり言い淀む先生の雰囲気(※4)から察せられる。当初のMRI画像での判断だと倍ほどの大きさではなかろうかと疑われていたようだった。

今回撮影した画像を見る限りでは、今まさに出血をしているとか、過去の出血痕であるとかもなく、ただただ微妙な2mmの瘤が出来ているという状態とのこと。

これを治療するのであれば、方法が二つある。

ひとつは開頭クリッピング手術。頭蓋骨を開けて外から動脈瘤にクリップを挟む方法。昔から行われている方法で、技術の確立、症例や術後の経過データの多さという面でメリットがある。が、私の場合だと動脈瘤の箇所がやや奥まっており、頭蓋骨の内側の骨をレーザーで削りながら行わないといけないためリスクが上がる。加えて、わざわざ骨に穴を開けてクリップするほどの大きさかと言われると……という感じらしい。

もうひとつが、カテーテルによるコイル塞栓術。今回の検査と同じ要領で脳血管にカテーテルを通し、動脈瘤に詰めものをして塞ぐ方法。プラチナのコイルが使われる。こちらは頭を開けずに済むし脳に触れることがないため侵襲(身体への負担)性が低いというメリットがある。しかしこの方法はまだ歴史も浅く、長期の治療成績データ(癌などでよく言われる○年生存率とかそういうやつです)が十分でないこともある。さらに私の場合は瘤の形が微妙なため、コイルを詰めるにもそのコイルが血流でポロっとどっか行かないように、血管の内側にステントという網を張る必要があるらしい。

微妙な大きさのうえに治療法はどっちも一長一短なので、もうなんかだんだん考えても仕方ないのでは……?という感じになってきた。

先生「これが癌とかならもう治療一択で話が進むんですけどね〜」
私「ですね〜〜!」

そうなのだ、部位が部位とはいえ、これは病気ではなく身体の形がちょっと変わってるという状態にすぎないやつなのだ。

タバコも吸わない、血圧も低め安定、酒は好きだがなきゃないで平気、好き嫌いなく野菜もパクパク食べる、仕事のストレスくらいしかリスクのない身体なので、ある意味ガチャで爆死し続ける可能性のほうが高いのではないか。完全に余談だが、かつて艦これで甲勲章をぶら下げブイブイ言わしてた提督時代には数々のレア戦艦空母を拾い、あるいは建造してきた(※5)ので、ガチャ運もそろそろ底を尽きてて欲しい。

それに、ここからは個人的かつ大事な話になるが、我が家には人間ふたりよりもよほど健康リスクの高い猫がいる。この猫が何も気にせず、おだやかにワガママに心細くなく安心して生きていて欲しいというのが夫婦共通の願いであることと、私の治療中で猫に何かあった際の皺寄せがすべて夫にいくことが私には受け入れがたかった。夫を信頼していないなんてことではない、むしろ信頼しているからこそ、猫と妻の有事に挟まれて何かの選択を迫られるような目に合わせたくないと強く思った。賢いけれど優しい夫だから、間違えた選択はしなくとも、何かを選んだことで取りこぼさざるをえなかった他の何かについて思い悩み、悲しむことはきっとあるだろうから。

そんなわけで、経過観察も選択肢の一つであることを提示されたことだし、と。今日この時点では経過観察でよかろう……というひとまずの結論に至った次第です。

ここからは完全に与太話。
仕事上どうしても、お客様根性に口がついたようなたいへんアレでアレな方々から理不尽に怒られることが日常的にありまして、こちらに一切非がなくても「クソキ◯ガイ」とか「頭の病院に行け」とか言われるので辛かった時期もまあまああったんですけど、仰せの通り頭の病院を受診して参りましたわガッハッハ!!!って持ちネタが出来たので…笑えば…いいと思うよ…。(しかしこうして文字にすると脳血管的にリスクヘッジ出来てるとは全く言いがたい環境だな〜これ!!!)

さて、長々と続きました検査入院記もこれで終わりです。不惑手前まで生きてるとこういうことがあって、自分に残された時間の有限さを嫌でも直視するよい機会でした。

なんらかのなにかでこの記事を目に留めてくださった皆さんも、どうか身体の異変は無視せず、かかりつけの病院をどこか決めて、気軽に受診して欲しいなと思います。ちょっとしたことでも病院に行く習慣があると、いつどんな時に何が起きたか、お医者さんはすべて記録してくれています。私の場合も、婦人科で処方された頭痛用の漢方が効かなかったことが他の科を受診するきっかけになりました。

困難は分割せよ。本当にその通りだと思います。もし、これを読んでくれているあなたがなんらかの病気や疑いがあり途方に暮れていたとして、この記事が目の前の大きな困難をすこしでも分割する一助になっていたなら幸いです。もちろん、そんなもの立ちはだかっていないほうがいいに決まってますけども!健康は大事な!

以上!ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!カラダニキヲツケテネ!!!

(何か質問や感想のおてまみなどがあればオマケ的にお答え記事を書くかもしれません)


※1
絆創膏を剥がしてくれた看護師さんいわく、穿刺した側も「ガッと曲げなければ大丈夫!刺した側に体重かけて寝てもいいですよ!」とのことだったが、ちょっと寝返り打とうとしただけでも痛くてビビり散らかしてるのにそんな勇気があるわけない。ガッて。

※2
でも尿管カテーテルはもうほんと二度とやりたくない……。看護師さんがお上手だったおかげか外す瞬間はなんともなかったが、後がしばらく痛かったのでその為に鎮痛剤がほしかった。

※3
穿刺痕をチェックしてくれた看護師さんが首を傾げていたので一瞬ヒヤッとしたが、「あら、ここ出血して……あっこれ違いますねイソジン乾いたあとですね!」ベテランの看護師さんでも乾いた出血とイソジンは瞬時に見分けがつかないのだなと妙に感心した。そうね、イソジンって色が紛らわしいよね。

※4
その後、最初にMRIを撮ってくれた病院へ検査結果を伝えに行ったところ、「あの先生なら治療が必要なときははっきり勧めるから、その彼が迷ってるってことは様子見でいいんじゃないかな…」とのことだったし、カテーテルコイル塞栓術もその先生は日本の第一人者だそうで、今後治療するとしたらそうしよう…と思うなどした。医者による医者の評判はガチなのだなあ。

※5
戦艦武蔵がシブヤン海底で発見されたニュースが報じられた日、記念に溶かすか〜!と大型艦建造をブン回したら一発で武蔵を引き当てた伝説を持つ提督とは私のことだ。

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