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この世で一番の痛み

「この前、注射打ってきたんだけど、めちゃくちゃ痛かったよ」

「ああ、注射ってなんか痛いのと痛くないのがあるよな」

「今回のは、めちゃくちゃ痛いやつだった。たぶん、この世で一番の痛みだった」

「大袈裟だなぁ」

「いや、ほんとに。最上級の痛み。A5ランクの痛みだった」

「じゃあ、しっぺよりも痛かったんだ?」

「しっぺ?」

「そう。あの、腕を人差し指と中指を揃えて、手首のスナップを効かせてバチーンって叩くやつ」

「ああ、しっぺな。しっぺ痛いよな。考えてみれば、注射よりもしっぺの方が痛かった……って、おい! そんなわけねぇだろ! 子供の遊びと一緒にすんな!」

「でも、クラスに一人くらい、めちゃくちゃしっぺ上手いやついなかった?」

「ああ、いたいた。あれ何なんだろうな? 普段は目立たないやつでも、罰ゲームの時、頼りにされて生き生きしてたよな」

「あとは、部活で骨折したこともあったなぁ」

「骨折はシンプルに痛いな」

「指に、ささくれができた時って痛いよなぁ」

「ああ、じわじわ系の痛みな。ふとした瞬間に痛いよな」

「高校くらいまで、本気でかめはめ波練習してたなぁ」

「それは……イタいな……」

「でも一番の痛みは出産っていうよな」

「ああ、鼻の穴からスイカを出すくらいの痛みっていうもんな」

「母親って偉大だよな」

「そうだな。さすがに注射と比べるのは間違ってるよな」

「そうだよ、おまえは何でも大袈裟なんだよ」

「……あのさ。ちなみに男の急所を蹴られたときの痛みと、どっちが痛いんだろうな?」

「それは、きっと宇宙の成り立ちとか、ナスカの地上絵とか、それくらい永遠に解けることのない謎なんだよ」

「そういうもんか」

「そういうもんだな」

「ふぅ。まぁいいや。ちょっとコンビニ行ってくるけど、何かいる?」

「いや、大丈夫」

「おっけー。よいしょっと。ふんふん…っつ!いっ!い…痛っってぇぇぇ!!」

「え? どうしたの?」

「タンスの角に足の小指ぶつけた! 痛っっっってぇぇ!!! これが一番痛い!! 足の小指ぶつけるのが、この世で一番痛い!!!!!」

「え? 注射とどっちが痛い?」

「小指! 小指!」

「出産とどっちが痛いと思う?」

「小指! 小指ぃぃ!!」

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