医師国家試験お薬対策:ビスホスホネート

ビスホスホネートについて医師国家試験対策として知っておくべきことは以下です。
①副作用
⇨食道潰瘍は出題済み。腎障害はフラグあり、有名どころの顎骨壊死は知っておきたい?
②適応:ビスホスホネートには骨吸収抑制作用がある
⇨適応疾患は骨粗鬆症、高Ca血症、骨破壊亢進(多発性骨髄腫、転移性骨腫瘍、骨Paget病)など
③即効性はない

①副作用

114D50 逆流性食道炎患者で休薬によって症状改善を認めうるものはどれか
a 甲状腺ホルモン
b プロトンポンプ阻害薬
c 経口ビスホスホネート製剤
d ベンゾジアゼピン系睡眠薬
e アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬

正解はc ビスホスホネートは粘膜にとどまると局所刺激症状を呈し、食道炎、食道潰瘍の原因となります。107F13でも同様の出題ありです。
⇨経口投与後30分は横にならないよう指導+薬は丸飲み(噛まない舐めない)+起床後水を飲む(洗い流す) ことが重要。
 近年は内服間隔が長いもの、嚥下障害のある人向けのゼリー状のもの、静注可能なものも存在します。

【補足】副作用についてはあまり出題がないのですが、顎骨壊死は有名で内科の専門医試験にも出題されているため今後国試でも出る可能性が高いと考えます。以下、顎骨壊死を含めビスホスホネートで重要な副作用をまとめていきます。

(ア)顎骨壊死(BRONJ=BPNs-related osteonecrosis of the jaw)
・実際はビスホスホネート以外の様々な薬で顎骨壊死を起こすので、最近ではMRONJ=Medication-Related Osteonecrosis of the Jawと言うことが多いです。
・BPNs(ビスホスホネート)長期投与中に抜歯などの歯科治療を行うと発生発生(期間、投与量に依存性あり)
外科的な歯科処置はBPNs投与開始前に完了しておくこと
・頻度は稀(内服で1万人に数人、静注で100万人に1人)
・顎骨壊死があっても基本的にビスホスホネートは継続します。(顎骨壊死発生⇨即中止というわけではありません)

(イ)非定型大腿骨骨折(AFF=atypical femoral fracture)
・近位部に骨折を起こしやすい
・5年以上の長期内服者で起こりやすい(長期であればあるほどリスク)。10万人に3〜6人程度の頻度。
・鼠径部や大腿骨頭部の痛みといった前駆症状があれば休薬を。
・骨折像が特徴的(画像はhttps://www.pnas.org/content/114/33/8722.shortより)。直角の亀裂と皮質骨の肥厚を認めます。

画像2

(ウ)急性腎障害(AKI=acute kidney injury)
・BPNsは腎排泄型で、高濃度では細胞毒性あり。
・血中濃度が急激に上昇すると急性尿細管壊死を起こすため、投与前にはCr値を確認し、腎機能低下の患者には慎重に「緩徐投与」を行うこと。

110C26、27(連問)78歳女性、転倒後骨粗鬆症の診断を受けNSAIDsとビスホスホネート、Ca製剤、活性型ビタミンD3製剤を服用中。2週前NSAIDs終了、1週前から食欲不振と倦怠感出現。腎機能は悪め(BUN32、Cr1.1)。
⇨高Ca血症、それによる腎性尿崩症を選ぶという問題

本ケースでは腎機能低下の原因は不明ですし、高Ca⇨腎障害 にもなりえます。
また余談ですがビタミンD3製剤とCa製剤はどちらも腎機能が悪い人では高Ca血症のリスクになるため、骨粗鬆症の高齢者では特に注意が必要ですね。
ビスホスホネートに関しても、腎機能が悪い人にはリスクがあるため注意が必要です。

②適応 

(ア)高Ca血症

113A73 ATLの患者で高Ca血症があり、紅斑、倦怠感、食欲不振を主訴に来院している。行うべき治療はどれか。3つ選べ。
 a 抗癌化学療法  
b 生理食塩液輸液
c 抗ウイルス薬投与
d ビスホスホネート製剤投与
e 活性型ビタミンD3投与

正解はabd 

高Ca血症の治療としては生食(CaやKを含まないため高Ca以外にも高Kにも用います)、ビスホスホネート、ループ利尿薬(サイアザイドはCa濃度↑のため禁忌です)、カルシトニン、副腎皮質ステロイド(腸管からのCaの吸収を抑制しますが、骨粗鬆症のリスクのため使い所に注意)を知っておきましょう。

 ただしビスホスホネートは効果発現まで数日かかるため、最初はカルシトニンなど他の薬を併用します。

練習問題 86A24 高カルシウム血症の治療に有効なのはどれか.3つ選べ.
a フロセミド
b サイアザイド薬
c テトラサイクリン
d 副腎皮質ステロイド薬
e 生理食塩水

正解はadeです。bは禁忌ですね。

111A55でも同様にPTHrPによる偽性副甲状腺機能亢進症⇨高Ca の症例でカルシトニンとビスホスホネートを選ぶ問題が出ています。

(イ)骨粗鬆症

95B64 骨粗鬆症の治療薬として適切でないのはどれか.
a ビタミンA
b 活性型ビタミンD
c カルシトニン
d エストロゲン
e ビスホスホネート

正解はaです。dは微妙ですね(閉経後女性には使いますが…)。ちなみにaの選択肢はビタミンKなら正解になりました(105H7に出題されています。また別の機会に書こうと思います)。

105G49 プレドニゾロンを内服している60歳女性が突然の胸背部痛を主訴に来院。胸腰椎X線写真で腰椎圧迫骨折を認める.
急性疼痛が消失した後の対応として適切なのはどれか.
a 牽引療法を開始する.
b 免疫抑制薬を投与する.
c プレドニゾロンを増量する.
d ビスホスホネートを投与する.
e 非ステロイド性抗炎症薬〈NSAID〉を投与する.

⇨正解はd ステロイド服用の閉経後女性で圧迫骨折から骨粗鬆症を考えます。

(ウ)多発性骨髄腫

113F62 両側大腿骨に広範な骨融解像と第4、第5腰椎に圧迫骨折を認めている。Caは14.0mg/dL(アルブミンが低いため補正すると補正後15.1)である。現時点で考慮すべき治療は⇨ビスホスホネート

骨が壊されて症状が出ているなら、破骨細胞を抑制して進行を抑えようというのは理にかなっていますね。

③効果発現に時間がかかる

114A6甲状腺全摘術後に発症したテタニーに対し、直ちに投与すべきなのはどれか。
a 抗甲状腺薬 b 抗けいれん薬 cカルシウム製剤 
d ビスホスホネート製剤 e 活性型ビタミン D 製剤

正解はcです。ビスホスホネートは効果発現に数日がかかります。テタニーの原因は副甲状腺機能↓による低Caのため、「直ちに」投与すべきはCa製剤です。

111A32 増悪傾向の右大腿部痛を主訴とする60歳男性。画像から転移性骨腫瘍が疑われる。初期対応として正しいものは?
a 抗菌薬投与
b 右大腿部の外固定
c 副甲状腺ホルモン投与
d ビスホスホネート投与
e 右下肢の免荷(荷重制限)

⇨正解はeです。情報が少ないが、何より現時点で骨が破壊されて痛いのだから、変に圧をかけないようにするべきです。ビスホスホネート投与は時間がかかるし「初期対応」を選ぶならば不適切です。

補足:破骨細胞について

・破骨細胞は単球/マクロファージに由来する細胞です
・macrophage colony-stimulating factor (M-CSF)はマクロファージにRANK receptorの発現を促進⇨この受容体にRANKL(Lはリガンド)が結合すると破骨細胞への分化が促進します。
osteoprotegerinはRANKLに結合するタンパク質で、RANKとRANKLの結合に競合して阻害し、破骨細胞機能を抑制します。ビスホスホネートはosteoprotegerinの産生を増やす作用があります。
デノスマブは抗RANKLモノクローナル抗体で、RANKLとRANKとの結合を阻害するため破骨細胞への分化が抑制されます
・デノスマブでも顎骨壊死は報告されています

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