見出し画像

直近の医師国家試験 消化管



解剖 ☆☆☆ ☆

・解剖はマクロのみではなく、画像(X線、内視鏡)、ミクロも含め毎年出題があります。正答率は多くが8割ほどです。

115F53
74 歳の男性。心窩部痛を主訴に来院した。1 週前から軽度の心窩部痛があり、症状が増悪するため受診した。上部消化管内視鏡像を示す。
病変の部位はどれか。
a 食道胃接合部
b 胃穹窿部
c 胃角部
d 胃体部大彎
e 胃幽門部

画像17

正解はcです。下図1枚目のような位置関係になっています(青色がスコープ)。食道と胃の間、胃と十二指腸の間にある出入口に相当する部分ではないことはすぐにわかります。胃穹窿部や大弯側は下図2枚目のようにひだ状構造があります。ゆえにbやdも誤りと分かります。

画像18

114C25
胃の正常組織のH-E染色標本を次に示す。
粘膜下層はどれか。

画像1

正解は③です。

①は粘膜層です。青い丸状の構造は腺管部分です。
②は粘膜筋板です。
④は筋層です。胃の場合は他の管腔臓器より分厚いです。
⑤は漿膜下層です。脂肪細胞が多く含まれます。

114F25
健常人の腹部造影CTの連続スライス(A〜F)を次に示す。
急激な体重減少などにより腹部大動脈との間隙に十二指腸が挟まれ、食後の嘔吐や腸閉塞の原因となり得る血管はどれか。

画像2

正解は③です。上腸間膜動脈を選ぶ問題です。

腹部大動脈の枝は上から腹腔動脈、上腸間膜動脈、腎動脈、精巣/卵巣動脈、下腸間膜動脈の順です。

・腎臓へ向かう④と⑤が腎動脈のため、その1つ頭側にある大動脈の枝を選べばよいです。①は門脈で、その背側にか大静脈があります。②は腹腔動脈です。

・十二指腸は下図のような構造をしており、1stから4thまで部位が分けられます。Vater乳頭は下行脚(2nd)に存在します。SMAは水平脚(3rd)にあるため、SMA症候群における嘔吐は胆汁を含む嘔吐になります。

・十二指腸水平部(3rd)に腫瘍ができる場合はSMA浸潤を起こし得ます。

画像24

113A7
胃体部進行癌が浸潤しにくいのはどれか。
a 肝臓
b 膵臓
c 大網
d 胆嚢
e 横行結腸

正解はdです。

・胃から見て前面(腹側)には大網があり、大網は胃と横行結腸の間を仕切っています。胃の背面(背側)には膵臓、右上側には肝臓があります。

113D28
72 歳の女性。2 か月前から便に血液が付着し、便秘傾向になったため来院した。腹部は平坦、軟で、腫瘤を触知しない。下部消化管内視鏡像(A)及び CT コロノグラム(B)を別に示す。胸腹部造影 CT で他臓器やリンパ節への転移を認めない。
術式として適切なのはどれか。
a S状結腸切除術
b 横行結腸切除術
c 右半結腸切除術
d 大腸全摘術
e 直腸切断術

画像20

正解はaです。

参考
115A2、114D5:S状結腸切除後の腹腔内ドレナージを目的としたドレーン先端の留置部位として適切なのはどれか⇨Douglas窩、直腸子宮窩

消化管の生理学 ☆

脂肪酸についての問題が出ています。詳細は以下の記事にあります。

113C12
消化管の消化吸収機能について正しいのはどれか。
a 閉塞性黄疸は便色に影響しない。
c 食物繊維は糖の吸収に影響しない。
b 蛋白の吸収に消化は不要である。 
d 中鎖脂肪酸はリンパ管へ運ばれる。
e 長鎖脂肪酸の吸収に胆汁酸が必要である。

a:閉塞性黄疸では胆汁の吸収ができずに脂肪が便中に出ます。すると白色便となります。
b:蛋白はアミノ酸のポリマーのため、アミノ酸レベルまで消化して吸収されます。
c:食物線維は糖の吸収を抑制します。
d:中鎖脂肪酸は炭素数が少ないため疎水性が弱く、そのまま吸収されて門脈に運ばれます。
e:長鎖脂肪酸は疎水性が高いため、胆汁酸でミセル化されてリンパ管へ運ばれます。

消化管内視鏡 ☆☆☆

113F65
52歳の男性。人間ドックの上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に2cmの胃癌を指摘され受診した。
治療方針の決定に有用なのはどれか。2つ選べ。
a 拡大内視鏡
b 経鼻内視鏡
c 超音波内視鏡
d カプセル内視鏡
e バルーン内視鏡

正解はacです。
・早期胃癌の診断には上部消化管内視鏡が必須です。その際に、Narrow Band Imaging(NBI)という特殊な波長の光を用いた観察を行います。淡いブラウン色の場合は腫瘍が疑われます。
・拡大内視鏡では表面微細構造(microsurface pattern)と微小血管構造(microvascular pattern)を確認し、これらが不整であれば腫瘍と診断します。
・超音波内視鏡は腫瘍の進達度粘膜下病変の評価ができます。

112C11
胃粘膜下腫瘍の診断に有用なのはどれか。
a 拡大内視鏡
b 色素内視鏡
c 超音波内視鏡
d カプセル内視鏡
e ダブルバルーン内視鏡

正解はcです。

113F68 連問の一部
内視鏡的ポリペクトミーに際し、特に気を付けるべき内服薬はどれか。
a 降圧薬
b 抗菌薬
c 抗凝固薬
d スタチン
e 抗ヒスタミン薬

正解はcです。
・ポリープを取る際に出血しますが、抗凝固薬を使っていると出血が止まらなくなるため休薬が必要です。
・前処置として抗コリン薬(前立腺肥大や閉塞緑内障のある場合はグルカゴンを変わりに使います)で蠕動運動を抑制します。

食道アカラシア ☆

・113回に1問出ています。正答率は6割です。

・それ以前は108回に治療、105回に食道内圧検査が出ています。

・未出題事項として増悪因子、食道癌との鑑別、POEMがあるため余裕があれば要チェックです(後述)。

113A33
38 歳の女性。前胸部のつかえ感を主訴に来院した。2 年前から食事摂取時に前胸部のつかえ感を自覚していたが、1 か月前から症状が増悪し十分な食事摂取が困難になったため受診した。既往歴に特記すべきことはない。意識は清明。身長 155cm、体重 44kg。
血液所見:赤血球 398 万、Hb 12.9g/dL、白血球 6,300、血小板 19 万。
血液生化学所見:総蛋白 7.1g/dL、アルブミン 4.2g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、 AST 22U/L、ALT 19U/L、LD 195U/L(基準 176~353)、クレアチニン 0.8mg/dL、血糖 88mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.3mEq/L、Cl 100mEq/L。上部消化管内視鏡像(A)及び食道造影像(B)を別に示す。
この患者でみられる可能性が低いのはどれか。
a 誤嚥
b 胸痛
c 咳嗽
d 呑酸
e 体重減少

画像21
画像22

正解はdです。胃酸が咽頭まで行くことはない(そもそも食道と胃の間が過剰に収縮)ため、呑酸はありません。

・38歳女性⇨20〜40歳代の若年者に多いです。性差はありません

・2年前からつかえ感⇨食道アカラシアと食道癌のキーワードです。若年なら前者、高齢なら後者を積極的に考えたいです。

ストレス、冷たい食物で悪化します。

・症候:
嚥下困難:液体も固体も飲み込みづらくなります。
⇨摂食量が減り体重減少
⇨食道から胃に行かずに咽頭へと逆流します⇨誤嚥咳嗽
⇨食道に停滞して食道炎⇨胸痛

≪注≫アカラシアは毎回の食事で症状が出現します(ゆえに体重減少をきたします)。毎回とは限らない(週に1回そういうエピソードがあるなど)の場合は食道痙攣を考えます。食道痙攣は進行してアカラシアになり得ます。

・検査:(バリウム、食道内圧測定)はよく出てます。内視鏡の通過困難が無いことには注意です(食道癌だと通過困難になり得ます)。

・治療:バルーン拡張術やHeller筋層切開が過去問で出ていますが、近年、経口内視鏡的筋層切開術(POEM:Peroral endoscopic myotomy)=経口内視鏡を用いた筋層切開術 も行われるため要チェックです。

≪注≫バルーン拡張術は何回も行う必要がありますが、POEMの場合は1回の治療で良いというメリットがあります。

ボツリヌス注射やCa拮抗薬も(⇨Ca拮抗薬は括約筋を弛緩させるためGERDのリスクになることも併せて大事です)ありますが、薬物療法の奏功は低いです。

食道カンジダ ☆

・113回に1問出ています。正答率は9割以上。

・100回に一度出ていますがそれ以降はこれが初です。

・食道炎の原因としてはビスホスホネートが114回に出ています。他にも色々あるので原因の整理は必要です(後述)。

113A44
81 歳の男性。嚥下困難を主訴に来院した。1 か月前から嚥下困難を自覚しており、2 週間前から食事摂取が困難となったため受診した。前立腺癌でホルモン療法を受けている。身長 160cm、体重 56kg。体温 36.1 °C。脈拍 72/分、整。血圧 136/88mmHg。呼吸数 14/分。甲状腺の腫大を認めない。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。上部消化管内視鏡像を別に示す。
考えられるのはどれか。
a Barrett 食道
b 逆流性食道炎
c 好酸球性食道炎
d 食道アカラシア
e 食道カンジダ症

画像23

正解はeです。

・担癌状態で易感染性の男性で、食道に白いプラークがあるため食道カンジダの診断です。他にも糖尿病やステロイドユーザー、HIVなどがリスクです。

・食道炎の原因
①物理的刺激:GERD(胃酸)、アカラシア(食物の停滞)、誤飲
②感染症:カンジダ、CMV(⇨縦走潰瘍)、単純ヘルペスウイルス(⇨穴ぼこ状の潰瘍)、結核など
③薬物:ビスホスホネート、NSAID、テトラサイクリン系鉄剤など
④アレルギー:好酸球性食道炎
⑤全身疾患:Crohn病、ベーチェット、強皮症など

食道癌☆☆☆☆

・毎年出ています。

・114回に病理が出ています。食道腫瘍には色々ありますが、扁平上皮癌と腺癌の区別は出来る必要があると考えます。

・手術合併症として乳び胸、反回神経損傷が115回に出ています。他に縦隔炎が有名な合併症のため理解が必要と考えます。(後述)

・リスクファクターとして酒とタバコはよく出ます。

・好発部位は胸部中部食道。

・粘膜内にとどまる⇨早期癌
・粘膜下層まで⇨表在癌
・筋層浸潤⇨進行癌

115B1
リスクファクターと疾患の組合せで正しいのはどれか。
a 飲酒 ー 食道癌
b 低体重 ー 睡眠時無呼吸症候群
c 体重増加 ー フレイル
d 食物繊維の摂取 ー 糖尿病
e n-3系多価不飽和脂肪酸摂取 ー 虚血性心疾患

正解はaです。食道癌のリスクファクターとして以下のものがよく出ています。

飲酒 特にフラッシャーはリスク大
喫煙
加齢
・アカラシア
・GERD(Barrett食道⇨腺癌)

≪注≫喫煙+飲酒は後述の胃癌と大腸癌でも同様にリスクです。

115D62
74 歳の男性。2 年前に下咽頭後壁の表在癌に対して経口的粘膜下切除術を受け、 その後局所再発を認めていない。喫煙歴は 72 歳まで 15 本/日を 45 年間。以前は 飲酒ですぐ顔が赤くなったが、徐々に飲酒量が増え、前回手術までは焼酎 500mL/日を飲酒していた。
この患者で経過中に重複癌を生じる可能性が最も高い部位はどれか。
a 口腔
b 喉頭
c 食道
d 胃
e 十二指腸

正解はcです。飲酒、フラッシャーがリスクになるものとして食道癌は重要です。

115D14
乳び胸の原因となるのはどれか。2 つ選べ。
a 心不全
b 食道癌手術
c 細菌性胸膜炎
d 月経随伴性気胸
e 肺リンパ脈管筋腫症〈LAM〉

正解はbeです。bは術中のリンパ管損傷、eはリンパ管奇形です。

食道癌術後の合併症は様々です。乳び胸以外にも反回神経損傷、食道穿孔、縫合不全⇨縦隔炎、肺炎などが挙げられます。

縦隔炎:術後の胸痛、発熱、頻脈、呼吸困難などをチェックする必要があります。

114A48
70歳の男性。嚥下困難を主訴に来院した。2ヵ月前から食物の飲み込みにくさを自覚するようになった。徐々に食事摂取が困難となり、体重は1ヵ月で4kg減少した。
身長170cm、体重59kg、体温36.5℃、脈拍76/分、整。腹部は平坦、軟で、
肝・脾を触知しない。
血液所見:赤血球334万、Hb 10.8g/dL、Ht 31%、白血球7,200、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.3g/dL、アルブミン3.3g/dL、AST 36U/L、ALT 40U/L、尿素窒素19mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、CEA 14ng/mL(基準5以下)、SCC 7.8ng/mL(基準1.5以下)。
上部消化管内視鏡像(A),生検組織のH-E染色標本(B)及び腹部造影CT(C)を次に示す。
対応として適切なのはどれか。
a 肝切除術
b 試験開腹術
c 食道切除術
d 薬物による抗癌治療
e 内視鏡的粘膜下層剝離術

画像3

正解はdです。

治療は(国試的には)
粘膜内⇨内視鏡切除(ESD、EMR)
粘膜下層まで⇨手術
手術困難、患者希望、遠隔転移例など⇨放射線+化学療法

となっています。

113D38
67 歳の男性。嚥下困難と体重減少を主訴に来院した。1 か月前から嚥下困難を自覚していた。自宅近くの医療機関で行った上部消化管内視鏡検査で異常を指摘されたため受診した。体重は 1 か月で 3kg 少している。既往歴に特記すべきことはない。喫煙は 20 本/日を 40 年間。飲酒は焼酎 2 合/日を 42 年間。 身長 171cm、体重 67kg。脈拍 68/分、整。血圧 124/62mmHg。
血液所見:赤血球 318 万、Hb 10.5g/dL、 Ht 31 %、白血球 8,300、血小板 16 万。
上部消化管造影像(A)及び上部消化管内視鏡像(B)を別に示す。
治療方針を決定するために有用でないのはどれか。
a FDG-PET
b 胸部造影 CT
c 食道内圧検査
d 腹部超音波検査
e 超音波内視鏡検査

画像25
画像26

正解はcです。

FDG-PET :遠隔転移の評価
胸部造影CT :病変の広がり、転移の評価
腹部超音波検査:肝転移の評価 
超音波内視鏡検査:病変の進達度評価

で用います。

参考
115D43:食道全摘後に肝内胆汁うっ滞をきたした症例。迷走神経は食道に張り付いて走行しているため、術後合併症で迷走神経損傷⇨胆道の収縮低下⇨胆汁うっ滞をきたします。

Mallory-Weiss症候群 ☆

粘膜下層までにとどまる食道裂傷で、噴門部小彎側に好発します。
頻回の嘔吐が原因です。国試的にはアルコールが多いですが、背景は様々
例)髄膜炎で嘔吐を繰り返す⇨吐血になる
・内視鏡では縦走潰瘍が見られます。
自然治癒します。

112A5
Mallory-Weiss症候群について正しいのはどれか。
a 自然治癒する。
b 裂創は横走する。
c 病変は壁全層に及ぶ。
d 胃大彎側に好発する。
e 十二指腸にも病変が存在する。

正解はaです。

食道静脈瘤、胃静脈瘤 ☆

・治療を問う問題が114回に出ています。109A18とほぼ同じです。110回に内視鏡画像を選ぶ問題が出ています。

114F58
62歳の男性。吐血のため救急車で搬入された。今朝、突然の吐血があり、家族が救急車を要請した。意識レベルはJCS I-2。体温36.5℃。心拍数98/分、整。血圧110/78mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(鼻カニューラ3L/分酸素投与下)。眼瞼結膜は軽度貧血様で眼球結膜に黄染を認める。腹部は膨満し波動を認める。下腿に浮腫を認める。直腸診で黒色便の付着を認める。血液所見:赤血球328万、Hb 9.5g/dL、Ht 32%、白血球4,800、血小板4万、PT-INR 1.6(基準0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白5.6g/dL、アルブミン2.8g/dL、総ビリルビン3.1mg/dL、直接ビリルビン2.2mg/dL、AST 56U/L、ALT 38U/L、LD 234(基準120〜245)、ALP 302U/L(基準115〜359)、クレアチニン1.0mg/dL、アンモニア135μg/dL(基準18〜48)、Na 131mEq/L、K 3.5mEq/L、Cl 99mEq/L。CRP 1.1mg/dL。上部消化管内視鏡像を別に示す。
治療として適切なのはどれか。2つ選べ。
a 結紮術
b 硬化療法
c ステント留置
d 内視鏡的粘膜下層剥離術
e Sengstaken-Blakemoreチューブ留置

画像4

正解はabです。それぞれの特徴、使い分けは注意が必要です。

・EIS:硬化剤を注入します。禁忌が多いため注意が必要です。
EISの禁忌:高度の肝機能障害(⇨高度黄疸(総Bill4.0以上)、低Alb(2.5以下)、低血小板(2万以下)、腹水大量、肝性脳症)、腎機能高度低下 です。
・EVL:結紮しますが再出血が多いのが難点です。EISと併用します。緊急事の止血ではEISではなくEVLを行います。

参考
114E40:アルコール性肝障害が指摘されている人の吐血の症例。おそらく静脈瘤破裂。ショックバイタルとなっており対応を問う問題。⇨輸液

胃食道逆流症(GERD)☆☆

・115回にNERDの出題があります。NERDの特徴と逆流性食道炎との違いが重要です。

115A55
48歳の女性。胸やけを主訴に来院した。3か月前から胸やけが出現し、食事に気を付け経過をみていたが改善しないため受診した。既往歴と家族歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。半年前に勤務異動があり仕事が忙しくなった。意識は清明。脈拍68/分、整。血圧112/70mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。上部消化管内視鏡像を別に示す。
考えられるのはどれか。
a Barrett食道
b 逆流性食道炎
c 好酸球性食道炎
d 食道アカラシア
e 非びらん性胃食道逆流症〈NERD〉

画像14

正解はeです。

胸焼けのエピソードから胃食道逆流症(GERD)が疑われます。GERDは粘膜障害を認める逆流性食道炎と、粘膜障害を認めないNERDに分けられます。今回は内視鏡では典型的なヒトデ型びらんは見られませんのでNERDが正解となります。

115D53
50 歳の男性。胸やけを主訴に来院した。1 年前から揚げ物を食べた後に胸やけを自覚し、2 か月前から毎日不快な胸やけがあるため受診した。既往歴と家族歴に 特記すべきことはない。喫煙は 40 本/日を 30 年間、飲酒は日本酒 3 合/日を 30 年間。 身長 165cm、体重 85kg。上部消化管内視鏡像を示す。
この患者にあてはまるのはどれか。
a 下部食道に憩室がある。
b 酸分泌抑制薬の適応となる。
c バルーン拡張術が必要である。
d 足を上げて寝ることが勧められる。
e 診断に食道 pH モニタリングが必須である。

画像16

正解はbです。肥満男性で脂っこいものというストーリーは逆流性食道炎に典型的です。治療ではPPIを用います。

☆非びらん性胃食道逆流症(NERD)
・胸焼けや呑酸、胸痛などを主訴とする(咽頭部違和感や慢性咳嗽の原因としても重要)
・逆流を前提とする疾患ですが、精神的な要因や食道の酸に対する過敏性亢進も背景にあります。
痩せ型の若年女性に好発します(GERDではメタボの人が多いです)。
PPIは逆流性食道炎よりも効きにくい(過敏性亢進が背景にあるから?)。

機能性ディスペプシア ☆☆

・114回と115回に出ています。

・ヘリコバクターの記載があり、Hp関連ディスペプシアも知っておいた方がよいと考えます。除菌で軽快する症例もあります。

・機能性ディスペプシアの症候は直接問われていませんが、以下の問題にあるような胃もたれ、心窩部痛、早期満腹感があります。

・除外診断です。以下の2つの問題には共通して「上部消化管内視鏡検査および腹部超音波検査で異常を認めず」と記載があります。

115A47
49 歳の男性。胃もたれを主訴に来院した。半年前から 2 日に 1 回くらい、食後 に不快なもたれ感が出現した。胸やけはないが、満腹感のため食事を残すことが ある。既往歴に特記すべきことはなく、現在服薬している薬はない。喫煙歴と飲 酒歴はない。身長 165cm、体重 60kg。ここ半年間で体重の増減を認めない。2 週 前に受診した健康診断で異常はなかった。上部消化管内視鏡検査および腹部超音波検査で異常を認めず、血中 Helicobacter pylori 抗体は陰性であった。
最も考えられる疾患はどれか。
a 逆流性食道炎
b 過敏性腸症候群
c 食道裂孔ヘルニア
d 機能性ディスペプシア
e 非びらん性胃食道逆流症〈NERD〉

正解はdです。

114A44
35歳の女性。摂食早期の満腹感と心窩部痛を主訴に来院した.6ヵ月前から摂食早期の満腹感を自覚し,特に脂っぽいものを食べると心窩部痛が出現するため受診した.便通異常はない.既往歴に特記すべきことはない.身長158cm,体重46kg(6ヵ月間で3kgの体重減少).腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.血液所見:赤血球408万,Hb 12.8g/dL,Ht 39%,白血球5,300,血小板20万.血液生化学所見:アルブミン4.1g/dL,総ビリルビン0.8mg/dL,AST 21U/L,ALT 19U/L,LD 194U/L(基準120〜245),ALP 145U/L(基準115〜359),γ-GT 14U/L(基準8〜50),アミラーゼ89U/L(基準37〜160),尿素窒素15mg/dL,クレアチニン0.7mg/dL,尿酸3.9mg/dL,血糖88mg/dL,HbA1c 5.6%(基準4.6〜6.2),総コレステロール176mg/dL,トリグリセリド91mg/dL,Na 140mEq/L,K 4.3mEq/L,Cl 101mEq/L.上部消化管内視鏡検査および腹部超音波検査に異常を認めない.
最も考えられるのはどれか.
a 慢性膵炎
b 逆流性食道炎
c 過敏性腸症候群
d 食道アカラシア
e 機能性ディスペプシア

正解はeです。

萎縮性胃炎  ☆

・慢性胃炎の結果、胃粘膜が萎縮したものを萎縮性胃炎といいます。
・内視鏡では粘膜が薄く色味が白から褐色になり、血管が透けて見えるようになります(画像は106F5)
・慢性胃炎はA型胃炎とB型胃炎に分けられます。
A型胃炎は抗壁細胞抗体(90%異常)、抗内因子抗体(40~60%)などによる自己免疫性疾患。胃体部優位で、CD4陽性T細胞が関与します。ガストリノーマ (G細胞の腫瘍化)をきたす場合もあります。抗内因子抗体は内因子の活動低下のためにビタミンB12欠乏による貧血を起こします(悪性貧血)
・B型胃炎:ヘリコバクターピロリ感染による幽門前庭部を中心とする胃炎です。胃癌のリスクとなります。

115C17
悪性貧血でみられるのはどれか。
a 胆石
b 脾腫
c 異食症
d 嚥下障害
e 萎縮性胃炎

正解はeです。

また、107E34にこの問題があります。

Helicobacter pylori感染が原因となるのはどれか。2つ選べ。
a 萎縮性胃炎
b 胃アニサキス症
c ダンピング症候群
d 胃MALTリンパ腫
e Mallory-Weiss症候群

正解はadです。

胃のポリープ ☆☆

・114回に胃底腺ポリープの問題が出ていますが、112回に同じような問題もあります。108回には連問で出て病理組織を選ぶ問題があります。

・過形成性ポリープの出題がないため対策は必要と考えます(画像はググってください)

114D49
48歳の女性。胃がん検診の上部消化管造影検査で胃に異常が認められたため来院した。自覚症状はな く、内服薬の服用はない。来院後に施行した上部消化管内視鏡像を別に示す。
適切な対応はどれか。
a 1 年後の再検査
b プロトンポンプ阻害薬投与
c Helicobacter pylori 除菌
d 内視鏡的ポリープ切除術
e 胃切除術

画像5

正解はaです。周りの組織と同じ色のポリープが多発しており、胃底腺ポリープとわかります。胃底腺ポリープは悪性化リスクがないため経過観察で大丈夫です。

112D56の胃底底ポリープ(内容は経過観察を選ぶ問題)


胃癌 ☆☆☆

・内視鏡の見え方、場所、組織、治療が問われています。

115A65
47 歳の女性。食欲不振を主訴に来院した。2 か月前から食欲が低下し、体重が3kg 減少したため受診した。意識は清明。身長 156cm、体重 46kg。体温 36.0°C。 脈拍 80/分、整。血圧 128/72mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。 頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、 肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球 366 万、Hb 11.9g/dL、Ht 35%、白血球 3,600、 血小板 13 万。血液生化学所見:総蛋白 6.9g/dL、アルブミン 3.7g/dL、総ビリル ビン 1.0mg/dL、AST 22U/L、ALT 14U/L、LD 180U/L(基準 120~245)、ALP 204U/L(基準 115~359)、γ-GT 35U/L(基準 8~50)、尿素窒素 10mg/dL、クレ アチニン 0.6mg/dL、血糖 88mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 106mEq/L。 便中 Helicobacter pylori 抗原陽性。胸腹部 CT で胃壁の肥厚を認める以外異常を認めない。
上部消化管内視鏡像(A)及び生検組織の H-E 染色標本(B)とを示す。
まず行うべき対応として適切なのはどれか。
a 胃切除術
b 局所放射線照射
c 内視鏡的粘膜下層剝離術
d Helicobacter pylori 除菌療法
e 免疫チェックポイント阻害薬による治療

画像6

正解はaです。内視鏡画像では潰瘍が形成され、病理ではN/C比の大きい異型細胞が占めています。胃壁の肥厚もあり進行胃癌です。胃に限局しているため、治療は胃切除です。

112D60で術式を問う問題があります。胃癌の手術は多くが幽門側胃切除術と胃全摘術です。幽門側に限局しているか否かも知っておく必要があります。

eの選択肢で免疫チェックポイント阻害薬があります。3次化学療法として抗PD-1抗体のニボルマブが保険適応となっています。

114F69 連問の一部
76歳の女性。胃癌の治療のため来院した。
現病歴:健康診断の上部消化管内視鏡検査と生検で胃癌と診断されたため治療の目的で受診した。同健康診断で血中Helicobacter pylori抗体陽性を指摘された。
既往歴:20年前から高血圧症で自宅近くの診療所に通院中。
生活歴:夫と長女の家族と暮らしている。喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴:父親が心筋梗塞。母親が胃癌。
現症:意識は清明。身長157cm、体重48kg。体温36.5°C。脈拍76/分、整。血圧132/86mmHg。呼吸数14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
検査所見
血液所見:赤血球418万、Hb 12.7g/dL、Ht 40%、白血球4,300、血小板2万。
血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 25U/L、ALT 19U/L、LD 193U/L(基準120〜245)、ALP 147U/L(基準15〜359)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 103mEq/L。
上部消化管内視鏡像(A)を別に示す。
内視鏡治療の適応と診断し内視鏡的粘膜下層剥離術を行った。病理組織のH-E染色標本(B①〜⑤)を別に示す。
この患者の切除標本の病理組織像と考えられるのはどれか。

画像7
画像8

正解は④です。高齢女性でピロリ後、異型細胞からなる腺管構造を有する④が胃癌の組織です。

112D60
66 歳の男性。黒色便を主訴に来院した。今朝、排便したところタール状の下痢便であったため受診した。意識は清明。身長 168cm、体重 56kg。体温 36.2C。脈拍 88/分、整。血圧 102/70mmHg。呼吸数 14/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
血液所見:赤血球 340 万、Hb 10.5g/dL、Ht 31 %、白血球 8,800、血小板 29 万。
血液生化学所見:尿素窒素 20mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL、CEA 6.5ng/mL(基準 5.0 以下)。CRP 0.8mg/dL。
上部消化管内視鏡像を別に示す。腹部造影 CT では他の臓器に異常を認めず手術を行うことにした。この患者の手術術式として適切なのはどれか。
a 胃局所切除術
b 胃空腸吻合術
c 胃全摘術
d 大綱被覆術
e 幽門側胃切除術

正解はcです。
・ファイバーが入っている部分が見えるため場所は噴門部です。
・肉眼分類では潰瘍を伴っていること、周堤は崩れかかっているため3型です。
・治療は胃全摘です。

Helicobacter  pylori ☆

・114回に3連問が出ています。

・治療や検査やフォローアップについて細かいところまで出ています。

・治療適応=上部消化管内視鏡で萎縮性胃炎+ピロリの検査で陽性

・ピロリの検査
①生検してピロリ菌を直接証明:迅速ウレアーゼ試験、培養、鏡検
≪注≫迅速ウレアーゼ試験は文字通り迅速に結果が出ますが、PPI使用下では偽陰性になりうるため注意です。
②血液検査:ピロリ抗体測定
≪注≫抗体は除菌後も陽性が続くため治療効果判定には使えません。
③呼気:尿素呼気試験
≪注≫
④便:便中抗原

・治療:クラリスロマイシン+アモキシシリン+ボノプラザン
≪注≫ボノプラザンはプロトンポンプのKイオン放出を阻害するPPIで、胃酸の活性が不要、CYP2C19が関与しないというメリットがあり、ピロリ治療で用いられます。

114F70、71 連問の一部
胃癌治療後の患者のその後の経過:病理組織結果から治癒切除と診断し、上部消化管内視鏡検査で切除治療後の潰瘍の治癒を確認した。その後、Helicobacter pyloriに対する除菌治療を行うことにした。医師と患者の会話を以下に示す。
医師:「①ピロリ菌の除菌治療のためにNSAIDと3種類の抗菌薬を処方します。
②1日3回朝昼晩で、1か月間服用していただきます。
今までにお薬のアレルギーはありませんか」
患者:「ありません」
医師:「副作用として下痢や皮疹がみられることがありますが、
③副作用が出ても我慢して内服を続けてください」
患者:「わかりました」
医師:「④除菌が成功すると胃癌は発生しなくなりますが
⑤1〜2年に1度は胃の内視鏡検査を受けることをお勧めします」
患者:「わかりました」
医師:「除菌ができたかどうかは2か月後に検査をします」

F70
①〜⑤のうち適切なのはどれか。

正解は⑤です。 
①:抗菌薬2種類(アモキシシリン+クラリスロマイシン)+PPIです。
②:内服は7日間です。
③:中止が必要なこともあります。
④:除菌後も胃癌の発生リスクがあるため、年に1回内視鏡検査が必要です。

F71
2ヵ月後の除菌判定を行うのに適切なのはどれか。2つ選べ。
a 培養法
b 尿素呼気試験
c 迅速ウレアーゼ試験
d 血中Helicobacter pylori抗体測定
e 便中Helicobacter pylori抗原測定

正解はbeです。
acは内視鏡を用いて侵襲が強いためもちいません。dは除菌後も陽性が続きます。

参考
113D62:ITPの症例問題。治療方針の決定に有用な検査を選ぶ問題。
⇨尿素呼気試験
⇨ITPの治療は除菌が第1です。

アニサキス ☆

アジやサバやイカなどに寄生している幼虫を生食することで感染
cf.覚えなくて良いですが終宿主はクジラやイルカです(アジやサバを食べる動物ですね)
冬季に多い(生魚を食べる頻度が冬に多いため?)
☆胃アニサキス症(国試ではこっちがメイン)
生食後数時間で急性腹症をきたす
即時型アレルギー反応が関与
上部消化管内視鏡で胃に定着している虫体を同定、摘除する。
☆小腸アニサキス
・小腸で好酸球性の肉芽腫を形成し、腸閉塞を起こす
・生食後数日で発症
・保存的治療でOK

112A55
35歳の男性。アジ、イカなどの刺身を食べた後に出現した上腹部痛を主訴に来院した。生来健康である。意識は清明。身長170cm、体重66kg。体温36.1℃。脈拍64/分、整。血圧118/78mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、心窩部に圧痛を認めるが、反跳痛と筋性防御とを認めない。便通に異常はない。緊急上部消化管内視鏡像を別に示す。
この疾患について正しいのはどれか。
a 夏季に多い。
b  腸での発症が多い。
c 魚類摂取後24時間以降に発症する。
d プロトンポンプ阻害薬が有効である。
e 病態には即時型アレルギー反応が関与する。


急性虫垂炎 ☆☆

・113回に2問出ています(必修の感度/特異度の問題を入れると3問)。

・典型的なエピソード:心窩部痛/不快感⇨悪心嘔吐⇨右下腹部痛⇨発熱

・典型的な身体所見:McBurney圧痛点(臍と右上前腸骨棘の2:1の内分点)やLanz圧痛点(左右の上前腸骨棘の右側1/3の点)、腹膜刺激徴候(反跳痛、Rosenstein徴候、Rovsing徴候腸腰筋徴候など)

・Alvarado score:7点以上で虫垂炎を積極的に考えます。

画像30

画像は113E45より。白血球数は正しくは2点ですが国試では1点として出ていました。7点以上では

113B24
A 25-year-old man comes to your clinic complaining of abdominal pain for the past two days. Yesterday, the pain was periodic and located around the periumbilical area. Today the pain is persistent and located in the right lower quadrant. He feels feverish. He does not smoke or drink alcohol. His body temperature is 37.7℃, blood pressure is 126/62mmHg, and pulse rate is 94/min, regular.
Which one of the following should be done next?
a perform a CRP test
b examine for peritoneal irritation
c administer a broad-spectrum antibiotic
d perform an abdominal CT with contrast
e perform an upper gastrointestinal endoscopy

正解はbです。periumbilical area(へそ回り)のperiodic pain(疝痛)からright lower quadrant(右下腹部)への移動から虫垂炎を考えます。まず行うべきは身体診察です。

113C21
急性虫垂炎でみられるのはどれか。2つ選べ。
a Blumberg徴候
b Courvoisier徴候
c Grey-Turner徴候
d Murphy 徴候
e Rosenstein 徴候

正解はaeです。bは胆嚢の無痛性腫大を触れるもの。cは急性膵炎や腹腔内出血で出現するへそ周りの紫斑。dは胆嚢炎で出現する、右季肋部を押すと深呼吸が止まるというものです。

消化管出血 ☆☆☆☆

・115回に小腸出血、113回に憩室出血、行うべき検査が出ています。

・貧血(特に鉄欠乏性貧血)は診断と治療だけではなく、慢性的な出血を調べる必要があります。特に高齢者ならば消化管出血、女性ならば性器出血は調べる必要があります。

・出血の対応としては、まずは輸液などでバイタルを安定化させます。バイタルが安定化したら内視鏡的止血それでダメなら動脈塞栓や手術が必要です。

115D74
59歳の男性。黒色便と倦怠感を主訴に来院した。半年前から 3 回ほど黒色便が出現していた。1 週前に黒色便がみられ倦怠感も出現したため受診した。意識は清 明。体温 36.1°C。脈拍 80/分、整。血圧 140/84mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。 腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。直腸指診で血液の付着を認めない。便潜血反応陽性。血液所見:赤血球 328 万、Hb 10.1g/dL、Ht 31%、白血球 6,400、血小板 19 万。血液生化学所見:総蛋白 6.9g/dL、アルブミン 3.6g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 26U/L、ALT 19U/L、LD 247U/L(基準120~245)、ALP 283U/L(基準 115~359)、γ-GT 47U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 89U/L(基準 37~160)、尿素窒素 21mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、血糖 99mg/dL、総コレ ステロール 196mg/dL、トリグリセリド 130mg/dL、Na 141mEq/L、K 4.0mEq/L、 Cl 104mEq/L。CRP 0.9mg/dL。上部消化管内視鏡検査と大腸内視鏡検査で異常を認めない。
次に行うべきなのはどれか。2 つ選べ。
a FDG-PET
b 腹部造影 CT
c 注腸造影検査
d カプセル内視鏡
e 腹部血管造影検査

正解はbdです。

☆小腸出血
・上部消化管内視鏡、下部消化管内視鏡で観察されない小腸における出血です。
≪注≫十二指腸乳頭から回腸末端の範囲を中部消化管と表現することもあります。
・原因はCrohnや潰瘍性腸炎などの炎症性腸疾患、腫瘍、ポリープ、憩室、血管異常などです。
・小腸の口側での出血なら黒色便、肛門側の出血なら暗赤色になります。
・まずは造影CTで確認します。造影剤のリークや腫瘍、異常血管を探します。
・造影CTで異常がなければカプセル内視鏡を、異常があればバルーン内視鏡(場合によっては止血や生検)が行われます。

113C55 連問の一部
82歳の女性。転倒で来院。頭部CTでは皮下血腫のみで頭蓋内に異常を認めなかった。座位にしたところ 1 分後にふらつきを生じ「目の前が暗くなる」と訴えた。心拍数 120/分、整。血圧 82/40mmHg。呼吸数 20/分。直腸診で黒色便の 付着を認める。静脈路を確保して輸液を開始し、血圧は 110/62mmHg に上昇した。
検査所見:
血液所見:赤血球 245 万、Hb 7.5g/dL、Ht 24 %、白血球 9,600、血小板 18 万。
血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.2g/dL、AST 20U/L、ALT 30U/L、尿素窒素 65mg/dL、クレアチニン 0.6mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 108mEq/L。
次に優先すべき検査はどれか。
a 頭部 MRI
b 腰椎 MRI
c Holter 心電図
d 頸動脈超音波検査
e 上部消化管内視鏡検査

黒色便があり、高度の貧血があります。消化管出血の検索が必要です。

112F54
54 歳の男性。吐血を主訴に来院した。3 日前から黒色便であったがそのままにしていたところ、今朝コップ 1 杯程度の吐血があったため救急外来を受診した。意識は清明。体温 36.4 °C。脈拍 124/分、整。血圧 86/60mmHg。呼吸数 20/分。皮膚は湿潤している。四肢に冷感と蒼白とを認める。眼瞼結膜は軽度貧血様であるが、眼球結膜に黄染を認めない。腹部は平坦で、心窩部に圧痛を認めるが、筋性防御はない。まず急速輸液を開始し、脈拍 96/分、血圧 104/68mmHg となった。
次に行うべきなのはどれか。
a 輸血
b 血管造影
c 開腹手術
d 上部消化管内視鏡
e プロトンポンプ阻害薬静注

正解はdです。
・黒色便があることから出血は上部消化管が考えられます。
・対応は、まずは輸液でバイタルを安定化させ、その後内視鏡です。出血源が明らかな場合はそこを止血します。

113C65、66 連問の一部
62 歳の男性。血便を主訴に来院した。
現病歴:本日夕食後に多量の暗赤色の便が出現し、ふらつきを自覚したため救急外来を受診した。特に腹痛や下痢を自覚していない。
既往歴:30 年前から高血圧症と糖尿病で内服治療中。10 年前から心房細動に対してワルファリンを処方されている。最近、処方薬の増量や変更はない。
生活歴:妻と 2 人暮らし。喫煙は 50 歳まで 20 本/日を 20 年間。飲酒はビール 350mL/日。
家族歴:父親が脳梗塞。母親が大腸癌。
現症:意識は清明。身長 169cm、体重 70kg。体温 36.7 °C。脈拍 88/分、不整。血圧 114/78mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 96 %(room air)。眼瞼結膜は貧血様だが、眼球結膜に黄染を認めない。心音と 呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音はやや亢進している。 直腸指診で暗赤色の便の付着を認める。四肢に軽度の冷汗を認める。
検査所見
血液所見:赤血球 299 万、Hb 9.7g/dL、Ht 32 %、白血球 12,000、血小板 21 万。
血液生化学所見:総蛋白 6.5g/dL、アルブミン 3.6g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 28U/L、ALT 22U/L、 LD 277U/L(基準 176~353)、γ-GTP 41U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 80U/L(基準 37~160)、 尿素窒素 18mg/dL、クレアチニン 1.1mg/dL、尿酸 6.7mg/dL、血糖 128mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 100mEq/L。CRP 1.9mg/dL。
腹部単純 CT(A)及び腹部造影 CT(動脈相 B、遅延相 C)を別に示す。

画像27
画像28

C64
最も考えられるのはどれか。
a 大腸憩室症
b 虚血性腸炎
c 潰瘍性大腸炎
d 非閉塞性腸管虚血症
e 腸管出血性大腸菌感染症

正解はaです。下図の部位に憩室があり、そこから造影剤のリークも指摘できます。

画像29

C65
その後の経過:入院後、翌朝までに赤血球液-LR 6 単位の輸血を行ったが、Hb 値は 8.2g/dL で血便が持続している。下部消化管内視鏡検査を行ったが多量の凝血塊のため止血術を実施できなかった。 この時点で考慮すべきなのはどれか。2つ選べ。
a 腸管切除術
b 動脈塞栓術
c 血栓溶解療法
d 血漿交換療法
e 高圧酸素療法

正解はabです。内視鏡で止血が困難な場合は動脈塞栓(IVR)や開腹手術が必要です。

潰瘍性腸炎とCrohn病 ☆

・112回〜114回には出ていません。

・UCとCDの違いはよく出ています。

・関節炎やぶどう膜炎、PSC、血栓症などの合併も多いため注意です。

115D49
26 歳の男性。下痢と粘血便を主訴に来院した。3 か月前から下痢を自覚していた。 2 週前から 1 日 4~5 回の粘血便が出現したため受診した。海外渡航歴はない。意識は清明。 身長 169cm、 体重 52kg。 体温 37.1°C。 脈拍 76/分、 整。 血圧 108/64mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
血液所見:赤血球 348 万、Hb 12.5g/dL、Ht 36%、白血球 7,400、血小板18万。
血液生化学所見:総蛋白 6.8g/dL、アルブミン 3.8g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 25U/L、ALT 20U/L、 LD 249U/L(基準 120~245)、ALP 280U/L(基準 115~359)、γ-GT 37U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 79U/L(基準 37~160)、尿素窒素 15mg/dL、クレアチニ ン 0.7mg/dL、血糖 97mg/dL、総コレステロール 179mg/dL、トリグリセリド 120mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 103mEq/L。CRP 1.9mg/dL。
直腸の内視鏡像を示す。結腸には異常を認めない。
診断はどれか。
a 直腸癌
b Crohn 病
c 虚血性腸炎
d 潰瘍性大腸炎
e 過敏性腸症候群

画像15

正解はdです。

若年者の繰り返す血便や下痢では潰瘍性腸炎/Crohn病を疑います。粘血便はCDよりも潰瘍性腸炎で特徴的です。直腸のみの病変で、内視鏡で見える限りは連続性の潰瘍を認めます。

吸収不良症候群 ☆☆

・原因として炎症性腸疾患、Celiac病、乳糖不耐症、腸管切除後など様々です。
・脂肪吸収ができずに脂肪便(トイレで浮かぶ)やビタミン欠乏、蛋白吸収ができずにサルコペニアや低アルブミン血症や体重減少、鉄などの微量元素の吸収不良で貧血など。
・検査:便中脂肪量測定、Dキシロース試験(D-キシロース(小腸で吸収される単糖)を内服し、尿中への排泄量を測定する)など。

112C3
吸収不良症候群の症状として頻度の低いのはどれか。
a 貧血
b 浮腫
c 便秘
d 体重減少
e 腹部膨満感

正解はcです。腸内内の浸透圧が高くなると下痢を起こします。

112D37
56 歳の男性。小腸切除術後のため入院中である。4 日前に突然、腹部全体の疝痛が出現したため救急車で搬入された。上腸間膜動脈閉塞症と診断し緊急で小腸切除術を施行し、残存小腸は 40cm であった。術後 48 時間までは循環動態の安定を目的に乳酸リンゲル液の輸液と昇圧薬の投与とを行った。術後 72 時間から高カロリー輸液の実施と経鼻胃管からの少量の経腸栄養剤の持続投与とを開始したところ、1 日 4、 5 回の下痢を認めた。
この患者への対応として適切でないのはどれか。
a 1 か月間の絶飲食
b 在宅静脈栄養の導入
c サルコぺニアの予防
d 経腸栄養剤成分の変更
e 経腸栄養剤投与方法の変更

正解はaです。
・腸管切除後の吸収不良のため下痢をきたしています。
・飢餓状態ではサルコペニア(整形外科参照)のリスクのため栄養療法が必要です。少量分割投与や成分の変更で対応、それでも経管栄養が困難な場合は経静脈栄養を考慮します。


CD腸炎 ☆☆

・115回と113回に出ていますが、いずれも抗菌薬投与後の記述があり診断は楽です。抗菌薬投与がなくてもPPIなど他の薬剤が原因になりうるため、入院患者の発熱や腹痛では疑う必要があります。

抗菌薬投与歴+腹痛or発熱で疑う必要があります。疑ったら便をとって検査部に提出し、GDH抗原とCDトキシンを調べます。CD腸炎の診断目的での内視鏡は近年あまり行いません。
≪注≫便を溶かしてキットに入れるため、固定よりも水様の便を提出した方が検査部の手間が少ないです。

・新薬としてフィダキソマイシンベズロトクスマブが承認されています。いずれも初発で使うものではありませんが、名前は知ってていいと思います。

115E48 連問の一部
75 歳の男性。発熱、腹痛および下痢のため救急車で搬入された。
現病歴:10 日前から左下腿蜂窩織炎のために入院して抗菌薬の点滴を行い、改善したため抗菌薬を内服投与に切り替えて 4 日前に退院した。2 日前から発熱、腹痛および 1 日 5 回以上の水様下痢が出現した。経口摂取と体動が困難となったため同居する妻が救急車を要請した。退院後に食中毒の原因となり得る食物の摂取歴はない。周囲に同じ症状の人はいない。
既往歴:50 歳台から高血圧症で降圧薬を服用中である。66 歳時に 2 型糖尿病と診断され 1 年前からインスリン治療を行っている。
生活歴:妻と 2 人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。 家族歴:兄が糖尿病で治療中である。
現症:意識は清明。身長 168cm、体重 73kg。体温 38.6°C。心拍数 120/分、整。
血圧 136/70mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96%(room air)。皮膚のツルゴールは低下している。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常は認めない。口腔内は乾燥している。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で肝・脾を触知しない。 下腹部に圧痛があるが反跳痛はない。腸雑音は亢進している。四肢は下腿に発赤や熱感を認めない。
検査所見
血液所見:赤血球 490 万、Hb 14.3g/dL、Ht 42%、
白血球 18,200(好中球 84%、好酸球 1%、単球 3%、リンパ球 12%)、
血小板 20 万
血液生化学 所見:総蛋白 6.2g/dL、アルブミン 3.8g/dL、
総ビリルビン 0.4mg/dL、AST 30U/L、 ALT 38U/L、尿素窒素 40mg/dL、
クレアチニン 1.8mg/dL、尿酸 9.6mg/dL、 血糖 158mg/dL。CRP 4.3mg/dL。
便を用いた検査のうち、診断に最も有用なのはどれか。
a 脂肪染色
b 潜血
c 虫卵
d 毒素検出
e 培養

正解はdです。

113A56
81 歳の女性。脳梗塞後のリハビリテーションのため入院中である。細菌性肺炎を併発し、2 週間前から抗菌薬による治療を受けていた。1 週間前から腹痛、下痢を訴えるようになり、昨日から下痢が頻回になった。意識は清明。身長 156cm、体重 41kg。体温 37.9 °C。脈拍 80/分、不整。血圧 146/90mmHg。 呼吸数 16/分。SpO2 96 %(鼻カニューラ 3L/分酸素投与下)。心音に異常を認めない。両側胸部に coarse crackles を聴取する。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。左下腹部に圧痛を認める。左上下肢に不全麻痺を認める。血液所見:赤血球 358 万、Hb 10.9g/dL、白血球 13,300、血小板 19 万。血液生化学所見:総蛋白 5.7g/dL、アルブミン 2.9g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 26U/L、ALT 19U/L、LD 245U/L(基準 176~353)、クレアチニン 1.1mg/dL、血糖 98mg/dL、HbA1c 7.1 %(基準 4.6~6.2)、Na 138mEq/L、 K 3.4mEq/L、CI 101mEq/L。CRP 3.1mg/dL。
次に行うべき検査はどれか。
a ベロトキシン
b β-D-グルカン
c 便中 Helicobacter pylori 抗原
d 便中 C.difficile トキシン
e 結核菌特異的全血インターフェロンγ遊離測定法〈IGRA〉

正解はdです。

参考
113B4病原体と感染予防の組み合わせ
Clostridium difficile - 接触予防策〈contact precautions〉 は正しい組み合わせです。アルコールは無効のため、石鹸を用いた手洗いが重要になります。

虚血性腸炎 ☆☆

・113回と112回に1問出ています。

高齢者+動脈硬化リスク(糖尿病や高血圧など)+突然の下痢+疝痛+血便です。便秘が誘因になることもあります。
≪注≫近年は若年発症も少なくありませんが国試では未出題です。

・基本的には自然軽快しますが、壊死を伴う場合は手術が必要です。身体所見で腹膜刺激徴候や、急激な腸閉塞、腹水の出現では壊死型を考えます。壊死型の出題はまだありません。
≪注≫経過観察を選ぶ問題が多いですが、鎮痛薬は出してください。

113C30
72 歳の女性。下腹部痛と血便のため救急外来を受診した。本日就寝前に急激な下腹部痛と下痢が出現した。数回の下痢に続いて鮮紅色の血便が出現したため受診した。20 年前から糖尿病と高血圧症で自宅近くの診療所に通院している。意識は清明。体温 37.2 °C。脈拍 96/分、整。血圧 142/92mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96 %(room air)。腹部は平坦で、左下腹部に自発痛と圧痛を認める。筋性防御を認めない。
血液所見:赤血球 380 万、Hb 11.4g/dL、Ht 39 %、白血球 11,200(桿状核好中球 4 %、分葉核好中球 55 %、好酸球 2 %、単球 7 %、リンパ球 32 %)、血小板 23 万。
血液生化学所見:総蛋白 6.9g/dL、アルブミン 3.8g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、AST 24U/L、ALT 27U/L、LD 267U/L(基準 176~353)、アミラーゼ 60U/L(基準 37~160)、尿素窒素 21mg/dL、クレアチニン 1.1mg/dL、尿酸 6.6mg/dL、血糖 138mg/dL、 HbA1c 6.9 %(基準 4.6~6.2)、Na 141mEq/L、K 4.4mEq/L、Cl 99mEq/L。CRP 2.1mg/dL。
動脈血ガス分析(room air):pH 7.41、PaCO2 36Torr、PaO2 90Torr、HCO3 24mEq/L。
最も考えられる疾患はどれか。
a 虚血性腸炎
b 薬物性腸炎
c 肛門周囲膿瘍
d 好酸球性胃腸炎
e 上腸間膜動脈閉塞症

正解はaです。糖尿病と高血圧の基礎疾患+高齢者+sudden onsetの腹痛、下痢、血便から虚血性腸炎を考えます。筋性防御を認めないことから壊死型ないし急性動脈閉塞は除外します。

112A33
60歳の女性。血便と腹痛とを主訴に来院した。以前から便秘がちで、最後の排便が5日前であった。2日前から腹痛を伴うようになり、新鮮血の排泄が数回あったために受診した。脂質異常症と糖尿病とで治療中である。体温36.7℃。脈拍92/分、整。血圧126/84mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腹部に圧痛を認める。
血液所見:赤血球430万、Hb 13.1g/dL、Ht 39%、白血球8,700、血小板19万。CRP 1.2mg/dL。
下部消化管内視鏡検査を施行した。S状結腸の内視鏡像を別に示す。
対応として適切なのはどれか。
a 絶食
b 副腎皮質ステロイドの注腸
c 内視鏡的止血術
d 上腸間膜動脈塞栓術
e 大腸切除術

正解はaです。安静+絶食です。
・動脈硬化と便秘を背景に、高齢者で腹痛と下血からは虚血性腸炎を考えます。
・内視鏡では縦走潰瘍を認めています。虚血性腸炎の場合は潰瘍の境界が明瞭なことが多いです。

十二指腸乳頭部癌 ☆☆

・115回と113回に出ています。

・Vater乳頭にできる腫瘍のため、胆汁や膵液の排出ができず閉塞性黄疸をきたします。

・胆汁鬱滞の結果胆管炎を起こすため、その場合は胆管炎の治療(ドレナージと抗菌薬)を優先します。手術は感染が制御できたら行えます。

・診断のためには内視鏡で生検が必要です。

115D52
72 歳の男性。腹痛と発熱を主訴に来院した。1 か月前から食思不振と倦怠感を 自覚し、3 日前から腹痛と発熱が出現したため受診した。意識は清明。体温37.7°C。脈拍 76/分、整。血圧 126/78mmHg。眼球結膜に黄染を認める。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。心窩部に軽度の圧痛を認める。血液所見:赤血球 408 万、Hb 13.2g/dL、Ht 41%、白血球 12,300、血小板 22 万。血液生化学所見:総蛋白 7.1g/dL、アルブミン 3.8g/dL、総ビリルビン 6.0mg/dL、直接ビリルビン 4.7mg/dL、AST 247U/L、ALT 354U/L、LD 587U/L(基準 120~245)、ALP 793U/L(基準 115~359)、γ-GT 452U/L(基準 8~50)、アミラーゼ158U/L(基準 37~160)、尿素窒素 33mg/dL、クレアチニン 1.3mg/dL、血糖 118mg/dL、Na 139mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 102mEq/L。CRP 4.9mg/dL。腹部超音波検査で肝内胆管と膵管の拡張を認める。上部消化管内視鏡像(A)及び MRCP(B)を示す。
まず行うべきなのはどれか。
a 胃空腸吻合術
b 膵頭十二指腸切除術
c 腹腔鏡下胆囊摘出術
d 体外衝撃波結石破砕術
e 内視鏡的胆道ドレナージ

画像35

正解はeです。現時点で閉塞性黄疸をきたしているため、「まず」これを解除します。

113D69
62 歳の男性。腹部膨満感と褐色尿を主訴に来院した。1 か月前から腹部膨満感と時々、尿の色が濃くなることを自覚していた。飲酒は機会飲酒で、薬剤の服用はない。身長 169cm、体重 62kg。体温 36.1 °C。 脈拍 68/分、整。血圧 134/86mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ウロ ビリノゲン(±)、潜血(±)。
血液所見:赤血球 428 万、Hb 14.5g/dL、Ht 47 %、白血球 9,300、血小 板 20 万。
血液生化学所見:アルブミン 4.0g/dL、総ビリルビン 1.3mg/dL、直接ビリルビン 0.9mg/dL、 AST 98U/L、ALT 106U/L、ALP 492U/L(基準 115~359)、γ-GTP 92U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 58U/L(基準 37~160)、クレアチニン 0.6mg/dL。CRP 1.1mg/dL。
腹部超音波検査で異常を認めない。 上部消化管内視鏡像を別に示す。
まず行うべきなのはどれか。2つ選べ。
a 生検
b 利胆薬投与
c 内視鏡的乳頭切開術
d 経皮的胆道ドレナージ
e 磁気共鳴胆管膵管撮像〈MRCP〉

画像36

正解はaeです。生検で腫瘍の診断、MRCPで胆道や膵管の通りを確認します。

大腸癌 ☆

・113回に転移例が出ています。

・胃癌、食道癌と同様にリスクや予防も重要です。
⇨便潜血(免疫法)が用いられます。

・2020年に遺伝性大腸癌のガイドラインが出ています。

113A16
68 歳の女性。1 年前に S 状結腸癌(病期III)と診断され S 状結腸切除術およびリンパ節郭清術を施行された。術後の補助化学療法を勧められたが、治療を受けず来院していなかった。1 週間前に腹痛を自覚し軽快しないため受診した。意識は清明。身長 158cm、体重 50kg。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。臍周囲に自発痛と軽度の圧痛とを認める。
血液所見:赤血球 385 万、Hb 10.9g/dL、Ht 37 %、白血球 5,100、血小板 14 万。
血液生化学所見:総蛋白 7.2g/dL、総ビリルビン 1.1mg/dL、AST 54U/L、ALT 48U/L、ALP 722U/L(基準 115~359)、γ-GTP 264U/L(基準 8~50)、CEA 78ng/mL(基準 5 以下)、 CA19-9 350U/mL(基準 37 以下)。CRP 2.8mg/dL。
腹部造影 CT を別に示す。
行うべき治療はどれか。
a 肝移植
b 肝切除
c 放射線照射
d 抗癌化学療法
e 経カテーテル的動脈化学塞栓術〈TACE〉

画像19

正解はdです。肝臓に多発する転移を認めているため抗癌化学療法です。

参考
115F16:リスクファクターの組み合わせ問題
結腸癌 ー 炭水化物 ⇨誤りです。肉の摂取がリスクです。

腸閉塞、イレウス ☆

・疾患の症状として出題があります(後述するヘルニアや腸重積など)。

・腹痛+食事で増悪+嘔気嘔吐+排便排ガス停止(+腹部手術歴)がキーワードになります。

・腸閉塞とイレウスは別物です。
腸閉塞=物理的な閉塞に起因するもの
イレウス=麻痺による蠕動運動低下によるもの

・複雑性腸閉塞(腸壊死や腹膜炎をきたし致死的)か単純性腸閉塞(血行障害なし)の鑑別が重要です。

・単純性腸閉塞では蠕動音亢進(金属音)、複雑性腸閉塞やイレウスでは蠕動音低下/消失です。

・複雑性は発症が急で進行も急です。痛みは持続性です。進行すると腹膜刺激徴候を認め全身の炎症反応も強く出ます。

・脱水を起こすため適切な輸液が必要になります。

113D43
82 歳の男性。頻回の嘔吐を主訴に救急車で搬入された。10 年以上前から胆嚢結石症と診断されていたが無症状のため経過観察となっていた。昨日の昼食時に食物残渣が混じった嘔吐が 2 回あり、夕食は摂取しなかった。深夜になっても嘔吐を 3 回繰り返したため救急車を要請した。体温 36.8 °C。心拍数 100/ 分、整。血圧 100/58mmHg。呼吸数 20/分。腹部は膨満し、心窩部から臍周囲に圧痛を認めるが、筋性防御を認めない。聴診で金属音を聴取する。
血液所見:赤血球 395 万、Hb 12.4g/dL、Ht 37 %、白血球 12,600、血小板 18 万。
血液生化学所見:総蛋白 6.6g/dL、アルブミン 3.3g/dL、総ビリルビン 1.4mg/dL、 AST 18U/L、ALT 8U/L、尿素窒素 38mg/dL、クレアチニン 1.8mg/dL。発症 2 年前の腹部単純 CT(A) 及び今回の腹部単純 CT(B)を別に示す。
適切な治療はどれか。
a 下剤の投与
b イレウス解除術
c 腹腔鏡下胆嚢摘出術
d 経皮的胆嚢ドレナージ
e 内視鏡的胆管ドレナージ

画像31
画像32

正解はbです。胆石がA⇨Bで胆嚢から腸へ落ちていることがわかります。胆石による腸閉塞です。

消化管穿孔 ☆☆

・114回に2問出ています。画像では空気の層が上の方へ出現するfree airが特徴的です。

・上部では保存的に加療するか、外科的治療です。下部の場合はすぐに手術です。

・保存的治療として、絶飲食のもと補液、胃管で吸引、抗菌薬、PPI投与を行います。

114A56
日齢6の新生児。NICUに入院中である。常位胎盤早期剥離のため緊急帝王切開で出生した。在胎26週4日、出生体重750gであった。出生6分で気管挿管が行われ、10分後には開眼した。その後NICU入院となり、呼吸管理を受けている。入院後、経口胃管を挿入し、日齢1から少量のミルクを開始した。本日、ミルク注入前に胃内にミルクが残っており、腹部が軽度膨満していた。体温36.7℃。心拍数124/分、整。血圧52/24mmHg。呼吸数48/分。SpO2 99%(FIO2 0.25)。大泉門は平坦で、心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は軽度膨満があり、腸雑音は減弱している。四肢の運動があり、筋緊張に異常を認めない。胸腹部エックス線写真(臥位正面および左側臥位正面像)(A、B)を別に示す。
考えられる疾患はどれか。
a 気胸
b 肝腫瘍
c 消化管穿孔
d 消化管閉鎖
e 横隔膜ヘルニア

画像9

正解はcです。寝かせてとったBの画像でfree airを認めています。

114A72
61歳の男性。心窩部痛を主訴に救急車で搬入された。7日前に腰痛を自覚し自宅近くの診療所でNSAIDを処方されていた。今朝急に心窩部痛が出現し急速に増強するため救急車を要請した。意識は清明。身長173cm、体重67kg。体温36.0℃。心拍数88/分、整。血圧124/80mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(鼻カニューラ3L/分酸素投与下)。腹部は平坦で、心窩部に圧痛と軽度の反跳痛とを認める。血液所見:赤血球483万、Hb 15.7g/dL、Ht 47%、白血球14,700、血小板30万。血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL、アルブミン4.2g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 20U/L、ALT 15U/L、LD 170U/L(基準120〜245)、ALP 265U/L(基準115〜359)、γ-GT 66U/L(基準8〜50)、アミラーゼ52U/L(基準37〜160)、CK 85U/L(基準30〜140)、尿素窒素17mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL、血糖103mg/dL、Na 146mEq/L、K 3.8mEq/L、Cl 106mEq/L。CRP 2.2mg/dL。腹部単純CTを別に示す。まずは手術を実施せず、保存的治療を行うこととした。
対応として適切なのはどれか。3つ選べ。
a 抗菌薬投与
b 経鼻胃管留置
c 高圧酸素療法
d 腹部血管造影
e プロトンポンプ阻害薬投与

画像10

正解はabeです。NSAID潰瘍が原因と考えられます。

消化管出血? ☆

115D21
11 か月の男児。今朝、血便様の便があったため母親に連れられて来院した。これまで下痢や嘔吐はなく、ずっと機嫌はよい。食欲はあり水分摂取も良好である。 昨日、初めてブドウ果汁入りジュースをたくさん飲んだとのことである。浣腸を 行い、便性を観察したところ赤紫色の軟便であった。身長 75.1cm、体重 9kg。体温 37.0°C。脈拍 108/分、整。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟。便潜血検査は陰性。腹部超音波検査で異常を認めない。
患者の家族への説明として正しいのはどれか。
a 「抗菌薬を処方します」
b 「生理食塩液の点滴をします」
c 「圧をかけた浣腸による整復が必要です」
d 「血液検査で貧血の有無を確認しましょう」
e 「ブドウ果汁入りジュースをやめて、明日の便を観察してください」

正解はeです。

・血便を主訴とする時、それが必ず血便かの確認が必要です。
例)109C22:暗赤色便があった人で確認すべきもの⇨直腸指診

・上記のようなブドウジュースの他、ワインやイカ墨パスタなども黒色便をきたします。

胃、S状結腸軸捻転 ☆☆☆

・111I28にて、軸捻転症を生じる頻度が高いのはどれか⇨胃、S状結腸 という問題が出ています。S状結腸は114回と112回、胃は115回で出ています。

115F52
日齢 25 の女児。嘔吐を主訴に母親に連れられて来院した。在胎 38 週、出生体重 2,850g。完全母乳栄養で生後 11 日頃から哺乳後に 1 日 2~3 回の嘔吐を認めたため受診した。吐物は母乳様で、排便は毎日あったという。身長 50cm、体重 3,520g(14 日前の体重 3,100g)。体温 36.6°C。心拍数 120/分、整。血圧 90/62mmHg。呼吸数 24/分。大泉門の陥凹はない。腹部は軽度膨満を認めるが、軟である。尿所見: 蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、尿比重 1.005。血液所見:赤血球 450 万、Hb 13.5g/dL、Ht 43%、白血球 7,400、血小板 21 万。血液生化学所見:AST 38U/L、 ALT 28U/L、尿素窒素 5.4mg/dL、クレアチニン 0.3mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.5mEq/L、Cl 105mEq/L。CRP 0.1mg/dL。上部消化管造影像を示す。
治療として適切なのはどれか。
a 緊急手術
b 経管栄養
c 静脈栄養
d 制吐薬投与
e 右側臥位保持

画像11

正解はeです。上部消化管造影では胃の形が上下逆になっています。ここから胃の長軸捻転と分かります。腹膜炎所見もないため、まずは保存的に経過を見ます。

☆胃軸捻転
・胃を支持する靭帯が脆弱、あるいは欠損しているために胃の回転が起こる病態です。
・横隔膜ヘルニアや食道裂孔ヘルニアに続発することがあります。
・症状は無症状から複雑性腸閉塞、腸穿孔を起こすまで幅広いです。
・診断には腹部X線や上部消化管造影で捻転を確認します。
・長軸捻転では上図のように胃の上下が逆になります。
・症状が激烈に進行し、腹膜炎、絞扼性腸閉塞を認める場合は緊急手術が必要です。
・軽症、無症状の場合は成長とともに靭帯が発達し自然軽快することもあります。
食事の回数を増やし小分けにする、頭を起こして食べる、右側臥位にするなどの保存的に経過観察を行います。

114C45
84歳の女性。腹痛のため救急車で搬入された。2日前から排便がなく腹痛と腹部膨満感を自覚するようになった。今朝から症状が強くなったため救急車を要請したという。意識は清明。体温37.5℃。心拍数98/分、整。血圧148/94mmHg。呼吸数22/分。SpO2 97%(鼻カニューラ3L/分酸素投与下)。腹部は膨隆し腸雑音はやや亢進し、打診で鼓音を認める。左腹部に圧痛を認めるが反跳痛はない。腹部エックス線写真を別に示す。
まず行うべき対応はどれか。
a 降圧薬投与
b イレウス管留置
c 内視鏡的整復術
d グリセリン浣腸
e 抗コリン薬投与

画像12

正解はcです。coffee bean signを認めるためS状結腸軸捻転です。治療は内視鏡的整復です。

112D30
70 歳の男性。激しい腹痛と腹部膨満感とを主訴に救急車で搬入された。以前から Parkinson 病で内服治療中であった。体温 36.8 °C。心拍数 72/ 分、整。血圧 130/70mmHg。呼吸数 16/分。
血液所見:赤血球 420 万、Hb 11.2g/dL、白血球 11,000、血小板 20 万。
血液生化学所見:AST 33U/L、ALT 25U/L。CRP 5.8mg/dL。
腹部エックス線写真を 別に示す。
まず行うべきなのはどれか。
a イレウス管留置
b 高圧酸素療法
c 緊急開腹手術
d 内視鏡治療
e 浣腸

正解はdです。S状結腸が巨大化してハウストラ消失がありS状結腸捻転です。Parkinson病(あるいはその治療薬)による便秘が背景にあった可能性があります。

ヘルニア ☆☆☆☆

・内ヘルニア内ヘルニアは腹腔内臓器が腹腔内で別の場所へ行くものです。体外に出るものは外ヘルニアと言います。

・ヘルニアの出口をヘルニア門と言います。内鼠径ヘルニアではHesselbach三角、外鼠径ヘルニアでは内鼠径輪です。

・腸管が脱出するだけでは徒手整復して経過観察で良いこともありますが、嵌頓して血流障害が起こると腸管壊死をきたすため緊急手術が必要になります。ただし大腿ヘルニアは嵌頓リスクが高いため手術がマストです。

115E21
内ヘルニアはどれか。
a 鼠径ヘルニア
b 大腿ヘルニア
c 閉鎖孔ヘルニア
d 食道裂孔ヘルニア
e 腹壁瘢痕ヘルニア

正解はdです。

115A7
下腹壁動静脈、腹直筋外側縁および鼠径靱帯に囲まれた Hesselbach 三角をヘルニア門とするのはどれか。
a 大腿ヘルニア
b 外鼠径ヘルニア
c 内鼠径ヘルニア
d 閉鎖孔ヘルニア
e Bochdalek 孔ヘルニア

正解はcです。

115E33
2 か月の男児。右鼠径部の膨隆と嘔吐を主訴に母親に連れられて来院した。2 週前、 入浴時に右鼠径部が膨れているのに気付いたが、しばらくすると膨隆は消失して いた。前日の夕方、おむつ交換時に右鼠径部が膨れていた。本日朝、右鼠径部から陰囊にかけての膨隆が前日よりも大きくなっていた。授乳後に頻回の嘔吐を認めたため午後受診した。機嫌不良。身長 54cm、体重 4.4kg。体温 37.3°C。心拍数 150/分、整。血圧 106/50mmHg。呼吸数 40/分。腹部は膨満している。右鼠径部から陰囊にかけて膨隆し、触ると嫌がる。外観写真(A)を示す。血液所見:赤血 球 420 万、Hb 12.3g/dL、Ht 36%、白血球 18,000、血小板 22 万。血液生化学所見: 尿素窒素 10mg/dL、クレアチニン 0.5mg/dL、Na 135mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 102mEq/L。CRP 5.0mg/dL。腹部エックス線写真(臥位)(B)を示す。
対応として正しいのはどれか。
a 陰囊穿刺
b 経過観察
c 緊急手術
d 徒手整復
e 抗菌薬投与
画像は省略します。ググってください。

正解はcです。触ると痛がる、白血球やCRP上昇といった記述から嵌頓がわかります。

114A59
79歳の男性。右鼠径部から陰嚢にかけての膨隆を主訴に来院した。2年前から右鼠径部の膨隆を自覚していた。昨夜から還納できなくなり今朝から疼痛を伴うため受診した。意識は清明。身長165cm、体重50kg。体温35.9℃。脈拍64/分、整。血圧140/66mmHg。呼吸数16/分。腹部は平坦、軟で、右鼠径部から陰嚢にかけて膨隆を認める。皮膚表面に変化を認めない。徒手的還納はできなかった。血液所見:赤血球459万、Hb 15.1g/dL、Ht 44%、白血球8,400、血小板25万。血液生化学所見:総蛋白7.7g/dL、アルブミン4.3g/dL、総ビリルビン0.9mg/dL、AST 26U/L、ALT 21U/L、LD 347U/L(基準120〜245)、CK 148U/L(基準30〜140)、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.9mg/dL、血糖112mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 96mEq/L。CRP 0.9mg/dL。骨盤部CTを別に示す。
適切な対応はどれか。
a 緊急手術
b 高圧浣腸
c イレウス管留置
d 穿刺ドレナージ
e 内視鏡的整復術

画像33

正解はaです。疼痛を伴い、徒手的還納ができないため嵌頓を考えます。画像でも腸管(空気を含むため一部黒くなっています)の脱出を認めます。

112A13
大腿ヘルニアについて正しいのはどれか。2つ選べ。
a 男性に多い。
b 両側性が多い。
c 嵌頓しやすい。
d 高齢者に多い。
e 大腿動脈の外側に触れる。

正解はcdです。

☆大腿ヘルニア
高齢女性に好発
・鼠径靭帯の下側、大腿静脈の内側に腸管が脱出。
嵌頓しやすいため緊急手術です。

112C46
日齢 0 の新生児。在胎 35 週 1 日で早期破水があり、同日に経膣分娩で出生した。出生時は身長 44cm、体重 1,960g、頭囲 30.0cm で、心拍数は 120/分であった。自発呼吸が微弱で全身にチアノーゼを認めたため、酸素投与を開始した。啼泣時に強直してチアノーゼと SpO2 の低下とを認める。両側の多指症および多趾症と両側停留精巣とを認める。合併する腹壁異常の写真を別に示す。
(注:画像は示しません。羊膜に包まれた腸管が臍から外に出ています)
基礎疾患を診断するために行うべき検査はどれか。
a 頭部 CT
b 腹部 CT
c 染色体検査
d 臍帯病理組織学的検査
e 全身骨エックス線撮影

正解はcです。
・臍帯ヘルニアは腸管回転異常のために生理的臍帯ヘルニアが戻らない病態です。
・染色体異常や遺伝子異常を伴うことが多いため精査が必要です。

肥厚性幽門狭窄症 ☆

・「生後2週ごろに胆汁を含まない噴水状の嘔吐」で考えます。男児に多いです。
・脱水をきたすため輸液(アルカローシスになるため乳酸リンゲルは×)
・アトロピンで減圧し、Ramstedt法で根治させます。

112D42
日齢 24 の新生児。嘔吐を主訴に両親に連れられて来院した。10 日前から哺乳後の嘔吐を時々認めていたが、2 日前から哺乳のたびに噴水状の嘔吐を認めるようになった。活気は不良である。体重 3,848g(日齢 9 では 3,882g)。体温 36.7 °C。心拍数 128/分。血圧 94/58mmHg。呼吸数 28/分。毛細血管再充満時間は 3 秒と延長している。四肢末梢に軽度冷感を認める。皮膚のツルゴールは低下している。大泉門はやや陥凹。咽頭発赤を認めない。胸部に異常を認めない。腹部は軽度膨満しており、右上腹部に径 1.5cm の腫瘤を触知する。
患児の腹部超音波検査で認められる所見はどれか。
a 腸管の拡張
b 腸管壁の浮腫
c 幽門筋層の肥厚
d 肝内の充実性腫瘤
e 総胆管の嚢腫状変化

正解はcです。

腸重積 ☆

114回に出ています。小児に多い腹痛で、エコーのtarget signや注腸造影でカニバサミが出ることは有名です。成人でも大腸癌に続発することがあり注意です。治療は注腸整復か外科的治療です。

114D23
2歳の男児。腹痛のため母親に連れられて来院した。今朝から間欠的に腹痛を訴えている。排便はあったが、血便ではなかったという。診察時はおとなしくしている。身長86cm、体重11.5kg。意識は清明。体温36.8℃。脈拍100/分、整。血圧96/60mmHg。呼吸数24/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨満しているが軟らかい。臍上部の圧痛を認める。腸雑音はやや亢進している。腹部超音波像を別に示す。
考えられる疾患はどれか。
a 便秘症
b 腸重積症
c 急性虫垂炎
d 十二指腸潰瘍
e 腸回転異常症

画像13

正解はbです。

Hirschsprung病 ☆

・113回に1問出ています。

・新生児で腹部膨満、胆汁性嘔吐を見たら考えます。

直腸生検組織のアセチルコリンエステラーゼ染色陽性が確定診断となります。

注腸造影では病変の広がりを見ます。

113C34
日齢 1 の新生児。在胎 40 週 0 日、出生体重 2,594g で、正常分娩で出生した。Apgar スコアは 8 点(1 分)、9 点(5 分)。出生 12 時間後から嘔吐が出現し、出生から 24 時間経っても胎便の排泄がなく、胆汁性嘔吐を認めたため NICU に搬入された。体重 2,400g。体温 37.6 °C。心拍数 40/分、整。血圧 70/40mmHg。呼吸数 52/分。SpO2 99 %(room air)。
このときの腹部所見(A)及び胸腹部エックス線写真(臥位)(B)を別に示す。
血液所見:Hb 19.4g/dL、白血球 11,600、血小板 35 万。
血液生化学検査:尿素窒素 17mg/dL、クレアチニン 1.3mg/dL、総ビリルビン 9.4mg/dL。
経鼻胃管を挿入するとともに、輸液を開始した。
次に行うべきなのはどれか。
a 光線療法
b 酸素投与
c 抗菌薬投与
d 注腸造影検査
e 心エコー検査

画像34

正解はdです。

周期性嘔吐症候群(アセトン血性嘔吐症) ☆

・幼稚園児、小学生に好発します。
・ストレスが誘因となり嘔吐し、ケトン体陽性になります。
・自然軽快します。

115D4
幼児期に発症し思春期までに多くが自然寛解するのはどれか。
a 片頭痛
b 過換気症候群
c 起立性調節障害
d 神経性食思不振症
e アセトン血性嘔吐症

正解はeです。5歳ごろにストレスを契機に嘔吐を繰り返し、代謝性アシドーシス、ケトン体陽性となる疾患です。直近では110I56で出ています。

108G49にDKAの28歳女性の症例がありますが、誤り選択肢にアセトン血性嘔吐症があります。28歳では見られません。

肛門周囲膿瘍 ☆☆

・112回、113回に出ています。

・肛門陰窩における細菌感染で、切開排膿が必要です。

・成人ではCrohn病を背景とすることもあります。

113F58
2か月の乳児。肛門部の異常に気付いた母親に連れられ来院した。排便回数は 1 日 2 回で、排便時やおむつの交換時に泣く。母乳を 1 日に 8 回飲み、哺乳力は良好である。体温 37.0 °C。心拍数 100/分、整。 血圧 80/50mmHg。呼吸数 20/分。腹部は軽度膨満し、肝を右肋骨弓下に 2cm 触知する。腸雑音に異常を認めない。肛門部の写真を別に示す(示しません。ググってください)。触れると軟らかく、痛がる様子がある。
母親に対する説明で正しいのはどれか。
a 「先天性の疾患です」
b 「腫瘍性の疾患です」
c 「細菌感染が原因です」
d 「排便時に力むことが原因です」
e 「肛門が裂けることで生じます」

正解はcです。

112D18
60 歳の女性。殿部の疼痛を主訴に来院した。疼痛のために座ることも困難であるという。殿部には熱感があり、圧痛を認める。殿部の写真を別に示す。
(示しません。右臀部が発赤、腫脹しています。)
治療として最も適切なのはどれか。
a 切開排膿
b 湿布薬貼付
c 紫外線照射
d 抗ウイルス薬点滴静注
e 副腎皮質ステロイド軟膏塗布

正解はaです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?