柔術美容法


よく肌が綺麗だと褒められる。ポテチを食った翌日はニキビもできるが、それ以外では我ながらわりとツルッとしている方だと思う。
一方で、近くにいる人なら俺の顔面がボロボロになっているのもよく見るだろう。ボロボロになっているのは大抵、試合のあとか、東京で選手練習をしてきたあとである。俺はかつぎパスおよびかみつきパスを使うが、これは相手の鼠径部に顔面をこすりつけて固定するという変な技である。自分の鼠径部に相手が顔面をこすりつけてくるとかなりキモいから、対戦相手、特に若くて力強い、試合や選手練習の相手は全力で抵抗する。ご存知のように柔術着はザラザラとした生地感をしている。これらの条件が重なり合うと、ザラザラとした相手のラペラ(裾)の生地に、俺は全力で顔面を押し付け、相手は全力で押し返すことになる。力が互角の場合、細かい押し合いへしあいが幾度となく発生し、俺の顔面はさながら大根おろしのように擦り減ってゆく。
これは悪いことばかりではない。人間の皮膚には神秘的な再生機能があり、すり減らされた顔面は数日のうちにちゃんと回復する。俺も初期は皮膚科に通ってクリームやビタミン剤を処方されたりしていたが、慣れるうちにそういう人工物は不要だとわかった。放っておけば傷ついた皮膚は剥がれ落ち、新しい皮膚が出てくる。これは新しく作られた皮膚なので、赤ん坊の皮膚のようにツルツルしている。通常の肌のターンオーバーでは古い皮膚が気づかない程度に少しずつ落ちて徐々に新しくなっていくのだろうが、俺の場合は強制的に新品にとりかえているので、一気にツルッとなるというわけだ。
もちろん俺は、顔面を鼠径部に押し付けるのが憚られる相手にはトレアドールパスやニースライスパスなどはなれたパスも打つことができる(プロなので)が、美肌を目指す人はプレッシャーパスを使ってみると良いかもしれない。

試合翌日
数日後のツルツルに生まれ変わったとき


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