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「三神」の何がやばいのか

「〇〇がやばい」シリーズ第5弾。
今回は過去のカードに焦点を当ててみた。
かつてスタンダードレギュレーションに存在し、環境に影響を及ぼしていたルール持ちカードと言えば、パッと思いつくだけでもムゲンダイナVMAX、レシラム&リザードンGX、ピカチュウ&ゼクロムGX、ゾロアークGXと多種多様に存在する。そんな中、今回紹介するカードはある意味最も有名なカード。

「アルセウス&ディアルガ&パルキアGX」

カードそのものは2019年9月6日発売の拡張パック『オルタージェネシス』にて登場。SMシリーズ最後の拡張パックを飾るだけあってそのインパクトは絶大。複数のポケモンとそれに関連したワザをもつ「TAGTEAM」において、神と呼ばれるアルセウス、ディアルガ、パルキアが一堂に会しやってきた。名前が長すぎることもあって通称「三神」と呼ばれた彼らは、その名に恥じることなく名実共に環境と構築に多大な影響を与えていった。その気になる性能がこちら。

うん、わかる。わかるよ。ツッコミを入れたくなる気持ち。
ワザの効果もぶっ飛んでるが、更にぶっ飛んでるのがGXワザの方。

鋼+ 【オルタージェネシスGX】
この対戦が終わるまで、自分のポケモン全員が使うワザの、相手のバトルポケモンへのダメージはすべて「+30」される。追加で水エネルギーが1個ついているなら、そのワザのダメージで相手のバトルポケモンをきぜつさせた場合、サイドを1枚多くとる。[対戦中、自分はGXワザを1回しか使えない。]

この文章を読んだ瞬間だれでも真っ先に目を疑い、そして次にこう言うだろう。
「いくらなんでもそりゃダメだろ」と。

【何がやばいのか】

 単純にどう見てもぶっ壊れている能力なので解説するのも釈迦に説法でしかないのだが、まず前半の効果。なんと鋼エネ1個だけで使える上、対戦が終わるまで相手のバトルポケモンへの打点が常時30上がるというとんでもない効果がはたらく。更にこの効果、自身だけでなくベンチのポケモン全員も、なんなら後から出したポケモンにも適用される。もうこの時点で何かがおかしい。

だが、真におかしいのは後半の効果。
鋼エネ1個に加え、水エネ1個がついてる状態でオルタージェネシスGXを宣言した場合、上記の打点アップに加えてサイドを追加で取れるという、打点以上に大きな効果がはたらく。もちろん、この効果も自分のポケモン全員に常時適用される。
ついでに言うと、この三神がきぜつしようと場を離れようと、これらの効果はずっと続く。
今のスタンダードレギュレーションで近い効果というと、ポケモンのどうぐ「空の封印石」によるVSTARパワーの「スターオーダー」。
こちらは、「たねのポケモンV」で相手の「VSTAR・VMAX」を倒した時のみと範囲が狭い。効果もその番の一回で終わり。
あとは、テツノカイナexの「ごっつあんプリファイ」。連発はできるものの合計4エネ要求の打点120がどこまで影響を及ぼすかは今後の環境次第。

こうして見ると、いかにオルタージェネシスGXがイカれたコストパフォーマンスを誇っているかがわかる。

翻って、ポケモンカードゲームの大前提となるサイド6枚を全て取った方が勝ちというルール。裏を返せば、5枚取られてても先に6枚取りきれば勝ちは勝ちである。このサイド獲得における流れ(所謂サイドレース)、そして勝利までの道を作るサイドプランが対戦において非常に重要となるのだが...…


もうお分かりだろう。


オルタージェネシスGXを使われると、サイドレース、サイドプランの根底が覆る。


本来取られるサイドが2枚のポケモン達が3枚になり、2匹目を倒された時点で決着。
VUnion、VMAX、TAGTEAMGXに至っては1匹で4枚も取られ、後は適当な小物を1匹倒されるだけで終了である。
そして最も被害を受けるのは、小物を主軸とした非ルールデッキ。今で言えばロストバレット、ゾロアークバレット、だんけつのつばさあたりか。サーナイトもexとザシアン以外は実質非ルールデッキだし、2進化ex系も進化前を狙われると絶望的。取られるサイドが1枚で済む事を活かした戦略が一発で瓦解する。
事実、三神がスタンダード現役の頃の非ルールはごく一部を除き、ほぼ息してないレベルと言っても過言ではなかった。

そんな三神の強さを最も引き上げた立役者と言えば、やはり剣盾シリーズ初期に登場した「ザシアンV」だろう。

たねポケモンなのにそこらの進化後ルール持ちと遜色ないレベルで強く、序盤でも終盤でも役割が持てる。なんだったら現行スタンダードから見ても全く見劣りしない。そして、一度オルタージェネシスGXを宣言したが最後、三神自体が持つアルティメットレイ180はもちろんのこと、ブレイブキャリバー260の恐怖にも怯え続けなければならない。(当時の260は、VMAXと一部のTAGTEAM以外はまず一発できぜつ確定)
その後ボスの指令やクロバットVが参入したことで、所謂「三神ザシアン」が一つの完成形を迎えた。

当時の平均的なデッキとしては以下のような感じ。

三神ザシアン

歴戦の猛者達は、懐かしさと共に恐ろしさも思い出したのではないか。
オルタージェネシスGXの宣言は、言うなれば死の宣告。決着までのスピードは先述のとおりまるで別次元。仮に後攻を取ったとして……

(例)
1ターン目:メタルソーサー、エネルギーつけかえ等で鋼エネと水エネを1個ずつつけ、オルタージェネシスGX宣言
2ターン目:ボスの指令で相手のクロバットV、デデンネGXを呼び、アルティメットレイ180で倒しつつザシアンVにエネ加速
(サイド3枚獲得)
3ターン目:ボスの指令で適当なV、GXを呼び、ブレイブキャリバー260で倒す
(サイド3枚獲得)

〘 K.O.〙


最速3ターンで決着である。

3ターンてお前…

これに勝つためには、自ずと以下のいずれかが求められるようになる。
・2ターン目に三神を倒す
・オルタージェネシスGXを使わせないor使われる前に自分が軌道に乗る
・一発で倒されない耐久or耐性を持つ

LO、ハンデス、エネ破壊といった方法もあるが、大体は完成する前に決着をつけられてしまうので根本的な対策にはなり得ない。
ゲームスピードを引き上げる環境を強いられるのに、その潤滑油であるクロバットV、デデンネGXが負け筋になってしまうのだから始末に負えない。
その後も三神対策は色々と講じられるのだが、三神側もガラルファイヤーVを組み込んだ悪型等が開発され、結局スタンダードから落ちるまで常に環境の上位に居続けた。そのスタン落ちは2022年1月14日。そう、VSTARが出るFレギュ登場まで待たねばならなかった。
遡れば、直近のEから同一スタンにいた最古のAレギュに至るまで全てに脅威を振りまいていた神。もはや強い弱いという次元ではなく、存在自体がデッキ構築やプレイに一定の枷をはめており、現行スタン以上にデッキの多様性に影響を及ぼしてきた。
正しく、いることそのものがやばいカード。それが三神なのだ。

【三神に穴はあったのか?】

そんな三神への打開策。一見矛盾してるようだが、オルタージェネシスGXの宣言時こそ最大の好機。地獄のレースはあくまで次の番からで、宣言された時点に限れば手札も場もトラッシュも何一つ変わってない隙だらけの状態である。
上に挙げたように、宣言された返しに三神を倒すのが最もわかりやすい対策。これでサイドを3枚取れる上に相手はエネ加速を別途用意しなければならない。とはいえ三神のHPはおまもり無しの素でも280。2ターン目で倒すには、それこそ火力が青天井か300以上を出せないとである。或いは、回すために出していたシステムポケモンや火力の要のザシアンVを先手打って倒すか。
一応フェアリー弱点ではあるのでフェアリー主体のデッキならハードルは下がるが…

【終わりに】

スタンダード現役時は常に仮想敵として居続け、エクストラへ移っても脅威度は決して低くない三神。今後も規制されるかどうかが気になる、興味を尽きさせないポケモンであると言えよう。


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