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とある催眠セラピストのつぶやき「好き好き催眠の掛け手は、ですね」

少し催眠を覚えた男子なら、必ずやってみたくなるのが「好き好き催眠」でしょう。「あなたはこれが好きになります」と何かを差し出すと、掛かり手さんは本当にそれが好きになってしまって、取り上げようとすると全力で抵抗する……というものです。
これ、差し出すものがその辺の小物とかぬいぐるみなんかであるうちはいいんですが、男子の欲求は残念ながらそれだけでは収まらないんですね。かなりの高確率で、いやほとんど全てのケースで、「じゃあ僕を好きになって」とやっちゃいます。

僕も初めてのときは、鼻血が出るかと思うくらい興奮しました。「じゃあこれが好きになりますよ」と自分の指を立てて見せたときの、あのとろんとした目ときたら。
愛しそうに指に頬ずりしたり、マスク越しのキスをしてくれる彼女をみていると、自分が王様になった気になったものです。

しかしご存知の方も多いと思いますけど、この好き好き催眠はあくまでその場限りの思い込みというか、勘違いの現象なので、疑似恋愛感情はあっという間に消えてなくなります。いや、掛け手が自分で消さなくてはなりません。きちんと解除するまでが催眠ですからね。
今回は、その虚しさの話です。

いや、本当にギャップが凄いんですよ。さっきまで「うふふ。好き」と言ってくれていた掛かり手さんが、パン、と手を打った瞬間、急になって(私どうしたの?)という顔になるのです。こちらを見る目にもハートマークは消えていて、(あれ、さっきの催眠術師さん?)と他人行儀になっている。これは虚しいですよぉ。

豹変する姿を間近で見れば見るほど、素に戻ったときの真顔とのギャップが激しいのです。まさに、夢から覚めたようで。掛けたほうも掛けられたほうも。

仕方がないこととはいえ、この寂しさに耐える覚悟がないと、好き好き催眠をする資格はないのかもしれませんね。

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