【魔法少女穴掘り部 ~りり・悲しみを超えて~】

【魔法少女穴掘り部 ~りり・悲しみを超えて~】2023-07-28

                     (穴掘り部りりシリーズ1)

 
へへっ♪ 『暗黒騎士』だって♪ い~~じゃん、カッコイイって♪ やっとあたしのフェスドレスが出たんだ~♪ みんな、ガチャ回してくれるかな~? あたしは今回は案外あっさり♡ そりゃそうだよね~自分のドレスだしぃ♪

 BFかぁ…………久しぶりに出るんだよ♪ 知ってた? あたしが以前のBFでまともに使えてたドレスってSRの『ナイト・りり』まで遡っちゃうんだぁ……。なんだかずいぶん昔だよね~! 何なん? SRって……。システムも今と違うしさ!

 正直、もうほとんど諦めてたんだよね。あたし用のフェス限定ドレスはもう出ないんだろうなぁって。BFに出る事もないんだろうなぁって。

 だから、そうっと消えちゃってもわかんないかなぁって、魔法少女やめようかとも思ってたんだよねぇ…………。

 でもさ、信じてよかった…………掘り続けてよかった…………ホントに報われる日が来たよ!


~~~~ それは、まだ魔界に行く以前の話 ~~~~

 あの日の面子は、そう…………あたし、セイちん、蒼ニキ、はなび、だったっけ。

「しかし、『リバース・はなび』はすごいな、圧倒的じゃないか。『20・はなび』もすごかったが、しばらくエースは揺るがないか?」

「蒼のドレスだって『ゼノス・蒼』をはじめ、サバトにBFに優秀じゃない」

「オレの場合は丹とセットでみたいな所があるからな! どうだろうな?」

 セイちんは何も言わずに、すました顔でドリンクを飲んでたけど、あたしには何を考えてるのかわかんなかったよ。『20・セイラ』、『ゼノス・セイラ』っていいとこのドレス持ってたし、あたしとは違うんだよなぁって勝手に思ってた……。

 同じ『レイコシリーズ』のドレスだって、あたしのもURなのに扱いは天と地だったじゃん。少しの間だけBFの先頭に置いて貰えたけど、速度はなるべく落とされてさ、殴り順回らないようにされて……置物じゃん!…………泣き顔になりそうなのを帽子深くかぶって隠してたんだよ……辛かったなぁ。

 そんなポジションもすぐに無くなっちゃったけどさ……。奪ったのはよりによって『ドレイク・マリ夫』だったんだ。その辺りで運営の意図に気づいてきたよ。あたしとマリ夫はもう…………。

 あたし達のグループって学校単位もあるけど基本的に2人の仲良しコンビを合わせて構成されてたとこあるじゃん? あたしはマリ夫とだったけど、マリ夫はルクりんとコンビになったんだよね! もう、あたしはお払い箱。

 なんであんな事になったんかな? 第2部の始めの頃なんて、え? メインあたしっ? て舞い上がった事もあったのにさ。

 想像はついてるんだ! 痔Pってあたし押しだったらしいじゃん? だから初めの頃はよかったんだと思う。でもその後は悲惨だよね。おそらく社内で内部抗争があったんと違うかな? それで、あたしを押してくれた痔Pは失脚! 今は被り物は同じだけど、中は別の人って事じゃない?

 常磐ハワイアンセンターが大好きだった痔P……。今も天国? でフラダンス見てテンション上がってんのかなぁ? どうか安らかに…………あたしを押してくれてサンキュウね。

 被り物の中の新・痔Pは、きっと内部勢力の一新を計ったんだと思う。あたしは見せしめにされたんかもね。オレに逆らったら、押しの娘はこうなるぞって……。

 いろいろ考えを巡らせていくうちに、自分が不機嫌になってきてるのが分かって、変なこと言わないうちにって腰をあげたんだっけ。

 扉を閉めて、廊下に出て、しばらく歩くと…………いつの間にか、かがみこんで、うずくまっちゃってた。少し声を出して泣いてたんだと思う。……そんな時……。

「……りり……」

 後ろからセイちんの声がした。目をこすりながら振り向くと、大きなスコップの柄をあたしに突き出してたんだ。

「な、なに?それ」

 大きな棒みたいなのがスコップであることすら、はじめは分からなかったよ。カラオケボックスの廊下で大きなスコップを2本抱えた美少女? 普通、ないよね。

「……りり、穴を掘りなさい! ……スコップで土を突く度に思い浮かべるの。あなたを泣かせた相手の顔を! ……体力の続く限り掘るの。そいつの体が埋まるほど、深く! 大きく!」

「でも、そんなことしたって、なにも…………?」

「…………信じて…………私も掘るから……」

 有無を言わさず、あたしはスコップの柄を掴まされてた。セイちんは満足そうにうなずいてた。

「ここに『魔法少女穴掘り部』の設立を宣言します!」

 セイちんは小声で言うと、持ってる自分のスコップを頭上に振り上げた! ”ガチャン” と大きな音をたてて天井の照明が砕けた。

「あっ! ×2」

 あたしらはスタコラ逃げ出したね!

 
 日が傾いた公園のベンチで大きなスコップを抱えた女子高生が2人、楽しそうに話してる光景は奇妙だったかも……。

「イコはいいメンバーになると思うの。きっと穴掘りの才能があるわ! あの子は穴を掘るために生まれてきたのよ」

「嬉しくない評価だね~。でも、そうかも」

「あと、いろはと花織は確定でしょ? 反抗は許さないし!」

「あれ? ここにゃんはいいの?」

「もちろん入れるわよ! ここあがいなくちゃイロイロ困るもの。道具は基本的にここあの家にあるから。スコップでしょう? ツルハシでしょう? リヤカーとか? 電動工具とかも一通りあるし……」

「ここにゃんちって建設関係だっけ?」

「ううん? 忍者の家!」

「ないない!?」

「そうね、いい? 私が部長で、あなたは副部長なんだからねっ! 夜・露・死・苦!♡」

 夕日を背にしたセイちんの笑顔は毒をもった花のように綺麗だったよ……。

 
 なんだか唐突で強引にはじまった部活動だったけど、いつの間にか楽しくなってさ。副部長兼エースとか言われて、肩身の狭い魔法少女活動も、なんとか続けてこれたんだよね。

 でさ、やっと出番が来そうなんだぁ♪ へへっ♪ 一番じゃなくてもいいんよ。役にたててるって実感が持てたらいいなぁ! そんな感じかな♡ ガンバルっしょ!!

 
 ………… ありがとね、セイちん …………。


おしまい

 



 






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