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[ 無の書 ](無料版)

こちらは2018年夏に行われたビジコン企画・しょぼいメイクマネーの一次審査に提出したものです。

普段思ってることと、「エアコンがほしい」という単なるオネダリを書いた私的な作文にも関わらず、結果として182名のなかから5名の決勝進出者に選んで頂きました。狂ってる。

まさか自己紹介でビジネスコンペに通るとは書いた私が思ってませんでしたが、どんな気持ちで今の活動をしているかをお伝えするのに適当と思い、この度、件のエントリを公開することにしました。

あれから3年近く経ったことや娘の誕生、個人事業としての開業などもあり、環境や考え方に変わった部分も多々ありますが、このエントリがきっかけで本当に多くの方々と出会えました。

その時の気持ちを忘れないためにも、応募時の文章をほぼ直さずにしてあります。ご笑覧ください。

2021.4.12 京橋URA よすだ

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しょぼいメイクマネー審査員の皆さま、はじめまして。

今回は、連続寝業家として、起こさない起業、『寝業』についてや私のことをお話しさせて頂きたいと思います。


・寝業家?
私は幼い頃から、みんなと同じ時間でみんなと同じことをやる、という事ができませんでした。
これが治らないまま大人になってしまい、どこに勤めても光の速さでクビになります。手に職も根性もないので、起業家になるなんてもっと無理。

それでも人間死ぬ時までは生きていかなければなりません。あらゆる会社・界隈でやっていけなかった私が出した答えは、「どうやってお金を稼ぐか」ではなく、

『いかにお金なんか稼がなくてもハッピーに生きられるか』

これを模索することでした(といっても、たまり場みたいな所に潜り込んでゴロゴロしてただけですが)。

雇用に基づく賃労働を可能な限り避け、できる限りの最大限で生活のコストをゼロに抑え、それ以外の時間は人に会ったり無料のアプリで遊んだり。生産性皆無の生活を4年ほど続けています。
これ、食えなくなったらやめようと思っているんですが、会う人会う人に

「 寝業家はなにもしないのが生業なのだ。業として、誇りと職責を持って失業をやっているのだ! 」

などど言い張り続けるうちに、周囲から「こいつはそういう奴だ」と認知され、住む場所や、余った食い物や、生きる知恵などを授けて貰えるようになりました。職域としてはノラネコや公園のハトなんかが近いです。

それでも最近では、私のようなTwitterと終わったポケモンのレベル上げしかやってないような男に、わざわざ電車賃を払って会いにくる人が現れるようになりました。世も末です。日本の夜明けを感じます。




・人間はもっと暇になっていい、なるべきだ

ビジネスという概念、わりと諸悪の根源だと思っています。言葉尻だけ捉えれば、ビジネスをうまくやるという事は人生がどんどんビジーになっていくという事です。

「暮らしを楽にするために自分をビジー状態に持っていく」という風潮が、私には本末転倒に思えてなりません。

それでも「何かに生命を燃やしたい!もっとバリバリやりたい!」という方はどんどんビジネスを高めてゆけばよいでしょう。
ただ、一般の労働の現場で個人の仕事を評する物差しが、ビジーにやっていけるか/いけないかの一元論しかないことは恐ろしい事だと思います。多忙である事を望まない人の居場所がそこにはない。

本来労働や発明という営みは、[人間を不必要な作業や制約から解放するため]にあるはずです。
つまり、あまねく世の中のお仕事は基本的には、自分を含めみんなが楽になるために存在するのです。

ですから、ルーズネスとでも言いましょうか、「工夫したら暇になったね、すごいね」という価値観が、ビジネスを成功させることと同じくらいには価値を持って、広く流布されるべきだと思っています。

やりたくない事からは逃げるべきです。

そして、誰がなんと言っても「ああ、前進したな」と思っていて欲しい。どんな方向に足を向けたって、人間の目は前にしか付いていないですから。



・ボーイズ、ビー、無

ルーズネスという概念において、最も自由で豊穣な環境にある人種は、ニートであると断言します。彼らは現代の貴族です。

いま自分は何者でもない。という状態は畢竟、「時間の自由、思想の自由、発言の自由、職業選択の自由、その他、ありとあらゆる自由を手にしている」という事でもあります。
(極端ですが、国民の象徴である天皇陛下にはこれらの自由が1つたりともありません)

古来より人間は、個人や共同体の豊かさを計るとき『 いかに無駄を所有しているか 』を尺度にしてきました。

忙しいビジネスマンは移動に飛行機や新幹線を使います。武士は馬とか。
翻って、セレブは豪華クルーズでゆったり船旅をし、漫画に出てくるような貴族は牛車に乗ります。

キャズムを越えて富貴になった人間は、効率やスピードを追い求めることをやめ『いかに遅くやるか』『いかに無駄を見せつけるか』に思考がシフトしていきます。

時は金なり。持て余すほどの暇がある、ということは、有り余るほど富があるという事なのです。




・真の貴族

そして、専業の寝業家/プロの貴族である私からすると、貴族"階級"の方々は、僭越ながら貴族としてはまだまだだな、と思っています。

ハプスブルク家であろうがブルボン王家であろうが、彼らは、彼らの地位を維持する為に無駄を見せびらかす必要に迫られているからです。

喉に指突っ込んでまで10回もメシ食ってたとか、好きこのんでやってた人あんまりいないと思うんですよね。お仕事ご苦労さまです。という感じです。

真の貴族たる無職者や寝業家は、かけがえのない大切な時間を、意味もなく湯水のようにジャブジャブ無駄にします。誰も見てないところで、誰も頼んでないのに。

無駄である=豊かである、と仮定して、こんなに純粋な無駄があるでしょうか?

無職者はクレオパトラよりも藤原道長よりも誰よりも、ずっとずっと純粋な、一流の貴族なんです。

こうしたことを胸に刻んで生きてみて、私は人生が360度変わりました。…あれ?






・じゃあなんでビジコンに出るのか

私は今でこそ、運動不足の解消ために週に1,2日働くこともありますが、最盛期は年収を1万円まで下げることに成功しています。(遊ぶ金欲しさについ1日働いてしまった)

ですから、私ひとりが貴族/寝業家として生きていくことは、ありがたい事にそう困難なことではありません。

ならば、その分だけノブレス・オブリージュ(高貴なる者の務め)を果たしたいと考えるようになりました。

今年の春、月曜日の朝から立ち呑み屋が満員になる街・大阪京橋にて、誰でもいつでも遊びに来れるカンパ制のオルタナティブスペース『京橋URA』を開き、現在まで多く暇と無を創出しています。

私は今回のしょぼいメイクマネーのテーマ「弱者のアップグレード」について、

「いわゆる弱者を鍛えてビジネスマン(強者)に更改すること」ではなく、

『ルーザー(ルーズネスマン)を、ルーザーのまま、毎日を機嫌よく生きていく手段を模索する試み』

と捉えています。

世の中の面倒事を全てかわし、寝過ごせば、その人は最弱でありながら無敵であり得ます。


しかし、誰でも真似できるような再現性のある寝業の手段を考え、作り上げ、実践し、広く世に伝える…という大きな変革は、私1人の力だけでは達成しうるものではありません。

それでも、しょぼマネの皆さんのお力添えを賜り耳目を集め、誰かの目に止まることで、社会が変革の流れを掴む、小さなきっかけなれたらなと思い応募をいたしました。





・贈与経済の実験基地、京橋URA[ユーラ]

京橋URAは自宅を解放しているだけなので、元手はゼロ円。「収益は?」とよく聞かれますが、売上を立てることへの期待は捨てています。まず与えます。

私が持っているものは時間と自宅の僅かな空間と、ちょっとした人のご縁。他に財産と呼べるものはありません。これをまずは与える。共有する。商売ではなく、お中元や年賀状の感覚に近いです。

年賀状をマメに送るご家庭は、年賀状がよく届くものです。たくさん貰っていると希にうっかりクジが当たってテレビなんかが貰えたりしますよね。

そんな感じでURAの訪問者も、こんな家に来るくらいですから変わった経歴や特技を持った方が多く、そうでもない人も徹底的に時間を持て余していたりしています。

そういう人々を迎えたり、繋げたりていると時折、勤め人をやっていてはまず巡り会えない尖った案件に触れ、それらが1つのアイデアや仕事になることがあります。その時は、星座が生まれた瞬間に立ち会ったような驚きや悦びがあります。

そうやってなんやかんややってると、お金やお金でないものが曖昧に転がり込んできて、なんとなく生きてゆけます。これを書いてる今も、まだまだ死ぬ気がしません。

あげたり貰ったりだけで生きていくライフスタイルを自分を使って人体実験する試み、できなくなるまで続けます。

(予選通過の際は、みなさんの前でもう少し具体的な内容と、実験の成果をお話しさせて頂けたらと思っています。)




・最後に。 [ まだまだ社会は進化できる ]

昨今、貨幣経済のオルタナティブとして、「お金2.0」という概念が取りざたされています。
『100万持ってるより、100万フォロワーいる方がヤバい。』っていうアレ。評価経済ってやつです。

情報感度の高い人は、ブログや動画チャンネルを立ち上げてあの手この手でPVを"稼いで"それを収入に変える。

お金の稼得の仕方に選択肢が増えたのは素晴らしいことですが、しかし、まだ、「頑張って何かを稼ぐ。そのためにビジーにやる。」という基盤そのものに大きな変化があるように思えません。


この社会にはまだまだ余白がある。


お金の稼ぎ方は、これから更に多様になっていくでしょう。
しかし、私が描きたい風景はそこにはありません。私は、

『"稼ぎ"をやっても、やらなくても、死ぬまで生きられる生活のストラクチャー』

をみんなで考えたいし、それを誰もが実践できる社会で暮らしたい。

世間様は強大で、私ひとりがパチャパチャやってどうなるものでもありませんが、それでも、こういう人間が1人でも増えれば、その分くらいは世の中の方もズレていくと思いたい。

そしてそのヒントが、商取引による交換経済でなく、贈与経済にあるように感じています。



だから私は、私の与えられるものを与え続けます。空っぽになるまでやめません。



そして願わくば、私に機会を与えてください。


およそビジコンにあるまじき内容でのエントリーですが、だからこそ挑戦する価値があると、そう信じています。


今回は「寝業」の専従者、連続寝業家として、


【 誰でも0円で使えて泊まれるイベントスペース"'京橋URA"の客室にエアコンを取り付けたい 】

の名目で、20万円の出資を希望致します。

毎夜、客人が寿司のようになって夜を過ごす寝室、これからの季節を快適に過ごしてもらいたいと考えています。熱中症などの心配なく訪問者を迎え入れられるようにできたら、より多くの方に使って貰えます。

皆さんのお力添えを賜り、私なりに「弱者」をアップグレードしていきたいと思います。


弱くて、曖昧で、でも敵はいない。

そんな『最弱無敗の寝業家』が量産されるような空間を目指しています。


なにとぞ、よろしくお願いいたします。

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