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思考する

台湾の滞在中、台中駅から40分ほどバスに揺られたところにある東海大学へ友人を訪ねて行ってきた。
その日はたまたま大学内のギャラリーで芸術学部創設40周年の記念展のオープニングパーティーが催されていて、教員と学生が賑やかに談笑し和やかな空気に包まれていたが、中国語がわからない私は作品をゆっくり見て回ったあと、友人を待ちつつ構内を少し歩くことにした。

来る時にGoogleマップを見ていたのである程度敷地が広大であることは予想していたが、奥へと進んでみると道中の大都市の喧騒からは想像もつかないほど、穏やかで美しい森が広がっていた。

特に素晴らしかったのは敷地の中央に長くに延びる、一本の広々とした道だ。
その両脇には、なぞるように何十年の時を感じさせる壮大なガジュマルの並木が、暑い南国の日差しから私たちを守るように枝を伸ばし木陰を作り、その下を学生たちが時に黙々と、時に友人と談笑しながら歩いていた。
それはどこかとどこかを結ぶことを目的とした道ではなく、ただただ「歩く」ことを促すとても抽象的な「道」に見えた。

また校舎に目をやると森の中に小さな低層建築が佇むように点在し、別の棟に移るたびにある程度まとまった歩行が余儀なくされ思考が机上にあるものではなく、建物の外部や手足の運動と常に連動しているということを示唆する素晴らしい大学建築(ランドスケープ)となっていた。

その姿は思考や学びが、いっときの権力や時流のための目的にを達成するためのものではなく、歩みそのものが万物と共生するために行うのものであることをまさに体現しているようで、背筋の伸びる思いだった。

※文章は2023年12月に書いたものを保存のためにここで公開しています。

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