ハンガリー語のつれない綴り 2

◊ 前回は、非印欧語であるハンガリー語(マジャール語)の綴りには英語風に読めない(読んではいけない)ものがあり、そのうちの「sz」と「s」について簡単に紹介した。
https://note.com/seikiya/n/ndc6df4fb916c

この2つには次のような対応があった。
 綴り  発音
 sz → [s]
 s  → [ʃ]

◊ 今回はその続きとして「cs」と「c」の綴りについて紹介する。

🟦 csの読み方
あえて取り上げるからにはもちろん〈クス〉ではない。
英語でいえばch(たとえば、英churchのch)の音を表す。発音記号で書くと[tʃ]になる。要はチャ行の子音である。

「cs」の出現頻度はそれほど多くない印象だが、その分、忘れたころに出会って戸惑うことになる。
地名のペーチPécsで覚えておきたい。
(ちなみに、コソボにもペーチという地名があり、文化的に重要な街である。カタカナで書くと同じなので混同されやすい)

「cs」の例をひとつ挙げておこう。「sz」の復習にもなる笑。
 スポンジ szivacs [ˈsivɒt͡ʃ]
・sz→[s]
・cs→[tʃ]
の2つがわかれば読める。
なお、ハンガリー語は鉄則として最初の音節が高くなる。なので、単体で読むときには語頭のszi [si] が高く、日本語の「火鉢」のような高低になる。
蛇足ながら、szi [si] の子音は[s]なので日本語のシ [ʃi] ではない。

🟦 では、cは?
単独の「c」の綴りというのもある。
スラブ諸語やバルカン半島の言葉ではcの文字にさまざまな読み方がある。大きく分けると、チャ行の子音[tʃ]とツァ行の子音[ts]に分かれる。ハンガリー語は後者で、ドイツのカールツァイス、あるいはロシア語で皇帝をいうときのツァーリにおける[ts]の音である。

単独の「c」の例を2つ挙げる。
・フランス人 francia [ˈfrɒnt͡sijɒ]
・インフォメーション
   információ [ˈiɱformaːt͡sijoː]
それぞれ「ツィヤ」「ツィヨー」と読む。

それでは、また!

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