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常に一番手を目指し事業を柔軟に転換する産業・自動車部品製造販売業(前編)

 時代の変化が早まってきた。これに合わせ事業内容を素早く転換させることが企業にとって必要である。現・北栄町出身の山下社長が経営するアールアンドピー株式会社では、1989年の創業から現在まで何度も事業内容を転換してきた。どのような視点で山下社長は事業開発を続けてきたのだろうか。


アールアンドピー株式会社
代表取締役社長 山下満
聞き手:北村真吾/中小企業診断士
取材:2019年6月25日 掲載:旬刊政経レポート2019年7月15日号)


御社の事業内容を教えてください。


 産業・自動車用部品の製造卸売業です。取り扱い商品はいくつかありますが、主な商品はフォークリフト用のバッテリーです。フォークリフトには大きく分けて3種類あります。ガソリンや軽油を使うエンジン車。液化石油ガスを使うプロパン車。そして充電を繰り返しながら動かすバッテリー車です。当社はこの中でもバッテリー車で使用されるバッテリーを販売しています。

 当社がフォークリフト用バッテリーを手がける少し前から環境意識の高まりもあり、屋内で排気ガスが出せなくなりつつありました。私は、屋内で使われるフォークリフトは、排気ガスを出すエンジン車やプロパン車に代わり、今後はバッテリー車の需要が高まるだろうと予想していました。
 加えて、当時日本にはフォークリフト用バッテリーメーカーがたった2社しかなく、生産量が少なく割高だったのです。需要は高まるのに供給が不十分な状況だったので、誰かがバッテリーの輸入販売を始めるだろうと思っていました。それならいっそと2006年にバッテリーの取り扱いを始めました。

 当社のバッテリーは、アジアの中でも最大手のインドのバッテリーメーカーで製造されています。それをシンガポールのメーカー直径商社経由で仕入れています。


御社は1989年創業ですね。以前はどんな事業をされていましたか


 設立当初は、自家用車バンパーのリビルトをしていました。リビルトとは、変形したりキズが入ったバンパーに熱処理と塗装を施し、再生させることです。
 当社を創業する以前の私は、19歳から30歳過ぎまで自動車部品販売店で営業マンとして働いていました。当時は日本もバブル時代。トヨタのクラウンやマークⅡなど、高級車が人気でした。高級車バンパーのリビルトのニーズの高まりを感じ、営業マンを辞めて起業することにしました。

 創業から3ヶ月ほどですぐに会社は軌道に乗りました。うまくいった要因はいくつかあります。
 1つ目は、販売チャネルを自動車の損害保険会社にも広げたことです。彼らは利益を確保するため、自社の保険のかかった事故車をなるべく安く修理する必要があります。高価な新品と遜色ない品質でバンパーを再生させる当社は、彼らから重宝されました。2つ目は、当時の高級車のバンパー素材は再生加工が容易なウレタンが多かったことです。設備投資や工程が少なく済む割に、高級車の部品ということで高めの値段が設定できていました。3つ目は、修理品を再生使用するため当社の仕入コストを低く抑えられる形態だったことです。当社の主なコストは人件費と塗料代だけで済むので、資金繰りの負担が少なかったんです。

 当時は高級車のバンパーリビルトを専門でやる会社が少なかったため、当社には注文が殺到していました。このまま事業が大きくなるようなら鳥取県内にも新たにリビルト工場を作るつもりでもいました。しかし、バンパーの素材がウレタンから、加工が困難なポリプロピレンに徐々に切り替わり始めます。このタイミングで当社はリビルト事業から撤退しました。2002年頃のことです。


現在はフォークリフト用バッテリー以外にも取り扱い商品がおありですね。


 フォークリフト用ではバッテリー以外にも無線式カメラシステムがあります。今までは、フォークリフトの爪稼働部のカメラは稼働部ゆえに使用中にケーブルが切れやすく安定して使用する事が困難でしたが、当社の無線式カメラシステムでは爪稼働部にカメラ・送信機を設置し無線でモニター・受信機に映像を送る事ができます。高所に荷物を置く又は高所から荷物を取るなどの作業は目視確認が出来ないため多くの事故が発生していました。そこに登場した無線カメラシステムは、構内作業者の方からは待ちに待った商品なのです。2019年1月には「フォークリフトの作業部視認装置」として特許も取得しました。日本を代表する大手のメーカー・倉庫業者様などあらゆる業種の方から毎日問い合わせが絶えません。

 カメラシステムでは、トラック・トレーラーの4方向をカメラで確認するためのバックカメラシステムもあります。トレーラーは全長が長く、ドライバーからの死角が多い乗り物です。しかも、運転席部分と荷台部分は何度も切り離しと接続をしながら使われます。通常は、荷台側のカメラの数だけ配線と(運転席部分との)ジョイントがあり、切り離しと接続の度に全てのジョイントでその作業が繰り返し行われます。当社のバックカメラシステムは1本の集約ジョイントで4つ全てのカメラが連結できるので、脱着が1度で済む画期的に便利な商品となっています。

 このシステムは、当社で設計図から全ての製作に携わっています。本商品も、2019年3月に「分離可能な車両の車載カメラ装置」として特許を取得しています。


事業内容を何度も変えてきた御社ですが、強みはどこにあるのでしょうか。


 当社が関わるフォークリフトにせよトラック・トレーラーにせよ、車種によって構造は多種多様です。正規ディーラーではない当社は、「部品を売ってそれで終わり」では通用しません。当社では部品販売に加え実際の取り付けも手がけます。お客さんが持ち込むそれぞれの車種に合わせ、部品を取り付けるための付属品も製作します。顧客のニーズに合わせてきめ細やかなカスタマイズに迅速に対応できるのが弊社の強みです。

アールアンドピー2

同社の工場内部

 是非一度当社のサイトをご覧ください。わかりやすい動画の商品紹介もあります。


後編では山下社長の経営方針や青年時代についてお聞きします。


(後編に続く)


アールアンドピー株式会社
代表取締役社長:山下満

事業内容:産業・自動車部品の製造及び卸売販売
所在地:大阪府大東市御供田3丁目13番26号
従業員数:3人
資本金:3000万円


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