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『佛立魂』 発刊によせて

発刊によせて

妙現寺住職 鈴 江 日 原

 これは清潤師の心の叫びです。これぞ目をみはる御利益です。死よりの生還です。信の一字こそが佛立の信心です。本当に有難いなあー。
 これは、この「佛立魂」を読んで私が強く感じたことです。
 九月の末に清潤師が妙現寺に頼みたいことがありますと訪ねて来られ、父、清涼師の頂いたご利益を本にしました。読んで感想を書いて下さい。文体は自由で結構ですと言われたことを本気にして今その言葉通り、心にあるままをペンで書きあらわしている次第です。
 御住職清涼師の頂いた御利益を心底より喜んでいる私としては、感想文は喜んでお引き受けさせて頂きました。そのあとがいけません。ついでに題字もお願いします。「佛立魂」という字です。これにはビックリギョウテンしました。妙深寺には昔より書道の大家が教えに来られています。宗内は能筆家が多くおられます。そして御住職清涼師はご縁故者が多い方です。その方々に頼むべきです。妙深寺の中でも多くおられましょう。不得手で悪筆の私に何も書かせることはありませんと再三再四お断り致しました。それに 対する清潤師のお答えは「これはもう決まっていることですから」の一点張りで、一方的に問答無用(失礼)で押し捲くられました。
この姿勢でお願いの御祈願も御看経もしたのだなーと感心しているうちに承知させられた次第です。悪しからずお許し下さい。
 さて、御住職のお怪我の実態は、本文中の文章をかりてあらためて申しますと、「CTスキャンとレントゲンに映し出された恐ろしいばかりの映像は、後頭部の頭蓋骨骨折部分が平に砕け、内側の脳の後頭葉の部分が衝撃で脳は平面になり、頭の中は血で溢れ、血の影が頭の中心から外側にかけて蜘蛛の巣のように真白になって映り、頭蓋骨はくだけ、脳は二ヵ所に衝撃を受け破壊され、頭蓋骨と脳を支える頭蓋底という骨は粉々となっており、脳の中心である脳幹の近くにも障害があり、脳は数日単位で腫れて大きくなり、肺は肋骨が折れて片肺につき剌って機能しないほど縮みつぶれている」と書かれてありました 。その実情は翌日より病院へかけつけて清涼師の苦しみを見ていた私の認識をはるかに超える恐ろしいほどのものです。このくだりを読んでいる今、ご利益をいただいて、お元気にご奉公をしていることが解っていながら、心の底の底までふるえました。
 父を救いたい。そして佛立信仰に随喜し信行されている妙深寺のご信者一同の信心にキズをつけることは出来ない。文字通り通俗な言葉で申せば、ご法様と清潤師との、御利益をくださるか、頂けるのかの真剣な対決の姿でしょう。その姿が読む者をして心の底までゆりうごかすのです。そして父への慕情、母へのいたわり、父の苦しむ姿を見る苦悩、信心への疑いと迷い、そして悲しみと喜び、さらにこころからの懺悔等が生々しく記されており、寿美江奥様、千延さん親子の命をかけての看病、その他の人々の献身的な看病に対しての感謝、兄弟愛の姿、ご親族方の救いたい想い、先輩教務への感謝、所属信者の助行の姿への感謝等がくわしく書かれております。
 特筆すべきはこの難事を冷静に対処した、執事長、正教師のご奉公が素晴らしかったことです。又、文章を拝見すると、助行された方の延べ人数、六万六千三百人、御看経をあげた時間千七百二十五時間、御題目が四百二十万四千八百遍(よくも計算したもの)にも及ぶ妙深寺教講の題目口唱によってこそ、素晴らしい現証のご利益を頂かれたのです。これは本当に有難いことです。嬉しいことです。
 大尊師は『何ニヨラズ可不思議、奇妙ノ御利益ヲ蒙リタリ事、見ル度、聞ク毎ニ清風ハ驚キ感心セザル事ナキガ上ニテ云々』(十巻抄第三如説抄拝見)と仰せられて妙法利益の有難さ、偉大さをお示し下されています。
 今振り返りますと、私も得度して二年目、十九才のおりに大病を患い医師より絶対安静を言い渡され、毎日床に伏しておりました。其の折、師匠日博上人より、
『ご信者に祈って願いの叶わぬことなし、お看経とお供水を頂いてご利益を感得せよと、ご法門を説いているではないか、床に伏しているだけではご信者にウソをついたことになる、本堂にいってお看経をせよ』
とお折伏を頂き、ついには毎日十時間のお看経、三升以上のお供水を頂き二ヶ月でご奉公ができるようになり、六十五才の今日までご奉公をさせて頂いております。ご宝前の尊さを感得して心の中で、「教務とは男の中の男の仕事」と考えてご奉公に力が入り、折伏に自信がついた次第です。
 清潤師がこの現証を身に感じて御法の絶対なることを体得され、その信心でご恩返しのご奉公として所属のご信者さん、その家族の為、愛する人の為にお助行をしたいと述べておられることはよろこばしいことで、これからのご奉公が期待されます。次代を背負う、若い佛立教務が真の信心を身につけてくださったことは佛立宗のご弘通発展のためにもうれしいことです。
 妙深寺のお会式にご奉公をさせて頂きご法門をさせて頂いたおりに、いつも申させていただくことがあります。
「住職のこれ程の現証利益を絶対に昔ばなしにしてはなりません。これはご弘通の旗印です。この御利益と信心を忘れなければ妙深寺の弘通発展とお互いの信心改良は間違いありません」
 これは私の心にそっと秘しておくべきかと迷いましたがお叱りを覚悟の上で思いきって申しますと、私は長松清涼師の「長松」という姓に大変な重みを感じました。私が思うに、長松家の清涼師の此の事故は、これは只事ではないぞと、きっと開導長松日扇聖人をはじめ日峰上人、歴代のご遷化されたご講有方が寂光の本宮で共に祈られ、一大御守護を下されたのではないかと、途方もないことを感じた次第です。また、この御利益をいただかれた清涼師もこの現証を深く感じられて、今後一層の精進とご奉公に邁進されることと思います。
 これを読まれるご信者も常にこの本を座右におき、ことあるごとに読み返されて常精進のご信心に徹して頂きたいと思います。
 文をかざらず、清潤師の言葉通り思うがままに、この「佛立魂」を読ませていただいて感じたことを述べさせていただきました。本当に有り難うございました。
                               合 掌

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