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世界から日本人が消える日

 「明らかなことは、肥沃な土地は数年のうちに人口が一杯になるということだ。また、この原理により人間が久しく住んでいる国々ではいろいろの困難が発生する」 

 そう論じたのは英国の経済学者ロバート・マルサスでした。200年以上前のことです。

 皮肉なことに今の日本はマルサスが恐れた人口増ではなく人口減という逆の状況に直面しています。といっても、困難が発生している事に変わりはありません。経済発展に必要な若い労働人口が減り続ける一方で、私を含めた年寄りがなかなか死なないため社会保障費が急増しているからです。

 考えてみれば、戦後の第1次ベビーブーム時代(1947年~49年)に生まれたいわゆる団塊の世代はまことに罪深い集団です。高度経済成長期だった青春時代は学生運動に明け暮れてまともに勉強もせず、社会の秩序や規範をぶっ壊した。

 社会人になってからは2度のバブルを引き起こし経済を混乱させておきながら自分たちはちゃっかりと株や不動産で儲けて小金を貯め込みました。定年退職後は、それなりの額の年金を受け取り、若者の未来を食いつぶしながら老後をエンジョイしています。

 もちろん皆がそうだというつもりはありませんが、そういう人が多いのも事実なのです。本来なら、デンマークの富裕層のように、次世代のことを考えて年金は返上するぐらいの罪滅ぼしをしてもいいのですが、私の知る限り誰もそんなことは考えていません。想いはただひとつ、いかに華麗に逃げ切るかです。

 その結果、積もり積もった国の借金が1200兆円を超えました。若い世代にとって、もう日本列島に逃げ場は無くなったようです。前期高齢者のひとりとして、甚だ申し訳ありませんが。

 そう言っている間にも日本の借金は増え、人口は減り続けています。このままいけば、2080年代に人口は5千万人を切り、2180年代には1千万人以下に落ち込みます。そしてその千年後、西暦3200年頃には日本人はついに世界から消えてしまう計算です。まさに“末恐ろしい”話。

 だからといって戦時中のように「産めよ増やせよ」と旗を振っても誰も見向きしません。まあ、実際に日本人が消滅してしまうことは考えにくいですが、人口減少に歯かける現実的な方法のひとつが移民政策です。

 移民は労働人口の増加に繋がり、経済成長を加速させます。カナダやオーストラリアのように様々な能力の高い外国人を「経済移民」として受け入れるのも一案でしょう。もちろん、移民は亡国の政策だという批判があるのは承知しています。実際に移民急増が問題になっているドイツなどヨーロッパ諸国を取材したこともありますから。

 確かに世界的にみて移民政策は転換点にあります。欧米諸国では若者の職が移民に奪われ、失業問題が治安の悪化を引き起こしているからです。しかし、若者の失業の背景には別の要素もあることを忘れてはいけません。政治的混乱や経済の減速です。

 日本の場合は、長引くデフレで通学も仕事もしていないニートが87万人万人。データを取り始めた1995年以降最大です。デフレ脱却は焦眉の急ですが、それ以上に継続的な経済成長や適切な雇用拡大政策が必要なのです。問題が無いわけではありませんが、移民には若さと野心があってその存在は国に活力をもたらすという側面があります。そもそも、グローバル経済での鎖国は国家にとって命取りになります。

 企業や国家の成長を我々人間の寿命に例える専門家がいます。急成長の青年期を終えて日本は熟年時代に入っているから成長など必要ないと。馬鹿も休み休み言えですね。

 我々人間は生物だから寿命がある。時が来れば誰しも老いて墓場に入ります。しかし企業や国家は適切な政策を実行すれば成長し続つづけて豊かな社会づくりを目指すことができるはずです。それが出来ないというのは経営者や政府の怠慢でしかありません。

                 (写真:toyokeizai.net/Auris/iStock)

             

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