見出し画像

急増するロードレイジの背景にあるものとは

◎ 戦慄の「路上の怒り」

「ロードレイジ(road rage)」という言葉をご存じですか。直訳すれば「路上の怒り」。つまり運転中に突然怒りの感情が爆発し犯罪行為にまで発展する現象のことです。

 私も滞米中に運転していて何度か罵声を浴びせかけられたり、幅寄せされて中指を突き立てられたりした(欧米では強い侮辱表現)怖い思いをした経験があります。

 そのロードレイジが近年、またアメリカで急増しています。しかも銃をぶっ放しているのだから危険極まりありません。ご存じのようにアメリカは他に類をみない銃社会です。世界で民間人が所有する銃の4割(約4億丁)が同国にあります。民間機関の調査では、銃を使ったロードレイジが過去3年間で2倍以上増え、年間1200件を超えています。子供が犠牲になるケースも目立っているのです。

 背景には新型コロナ大流行によるストレス、そしてトランプ前大統領が過激な言動で人種差別や社会不安を煽ったことがあります。ならずもの大統領トランプが、前代未聞の連邦議会議事堂襲撃だけでなく、こんなところにまで黒い影を落としているのです。トランプファミリー共々一日も早く刑務所にぶち込んでもらいたいと私は思っています。

◎ あおり運転の恐怖を描いた映画

 昨年夏にはロードレイジを題材にしたスリラー映画『Unhinged(錯乱)』が公開され、全米で大ヒットしました。それだけ問題が深刻なのです。邦題は『アオラレ』。このタイトルには映画ファンからは賛否両論の声が上がっているようですが、映画ではあおり運転常習者の恐怖を名優ラッセル・クロウが演じています。なかなかのは迫力です。

 あおり運転といえば、日本では忘れもしない2017年6月に起きた東名高速夫婦死亡事件がありました。パーキングエリアで通行の妨げになると注意されたことに腹を立てた25歳の男が、注意した家族の乗ったワゴン車を猛スピードで追いかけて前に割り込み、追い越し車線で急停車させたところに後続の大型トラックが突っ込んだ事件でした。ワゴン車の夫婦が愛娘の目前で死亡した本当に痛ましい出来事でした。この事件をきっかけにあおり運転が日本でも社会問題化しています。

◎ ロサンゼルスで6歳の児童がロードレイジの犠牲に

 5月には米カリフォルニア州ロサンゼルスで幼い子供がロードレイジで銃撃され亡くなるという事件が起きています。

 当日の朝8時頃、母親がいつものように6歳の息子を後部座席のチャイルドシートに乗せてハイウェイ55号線を学校に向かって運転し、出口から降りるため右側に車線を変更したところ、いきなり後方から1発の銃弾が撃ち込まれたのです。銃弾は後部のトランク、チャイルドシート、そして子供の腹部を貫通して命を奪いました。

 テレビ中継された記者会見で高速パトロール隊員は「おそらくロードレイジによるものだ」と発言。全米の人々に強い衝撃を与えました。母親の車が前方に割り込んできたことに腹を立てた白いセダンの男女カップルのどちらかが発砲したと捜査当局はみていますが、犯人はまだ見つかっていません。

 米国ではこうした危険なロードレイジ対策として、加害者に対して裁判所命令でアンガー・マネジメント(怒りの感情をコントロールする)講習を受講させる州もあります。ロードレイジがとくに深刻なカリフォルニア州では、警察に加えて専門機関のDMV(日本でいえば陸運局)が警察の結果結果を待たずに被疑者の免許没収する制度がありますが、それでも残念ながらロードレイジが減る気配はありません。

                  (写真はcar-moby.jp)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?