哲人に学ぶお金の貯め方、生かし方
硬貨が初めて使われたのは紀元前7世紀、古代のアナトリア半島(現在のトルコ)で栄えた王国リディアだと言われている。それ以来、人類は良くも悪くも金儲けに明け暮れてきた。
今では資本主義本家の米国では「自分の持ている金以上の信用を持つ人間はいない」(米ジャーナリストエドガー・ハウ)とまで言われるくらいである。
日本でも、かつての節約・貯蓄の精神はすっかり影を潜め、一貫千金を狙うベンチャーに注目が集まっている。それはそうだろう。30代の若きIT起業家たちが、何十億という商売をしてマスコミにもて囃されている時代である。毎日会社に通い、月給から1万円ずつ貯金をしている自分の姿がとてもみすぼらしく見えても仕方がない。
しかし、そこでくじけてはいけない。江戸・明治・大正・昭和の4つの時代を息抜き、「蓄財の神様」とまで呼ばれた本多静六翁は地道に貯金をして大金持ちになっているのだ。
復刻された本多氏の著書『人生計画の立て方』によれば、次の3つのことを守れば誰にでも上手に利殖は出来るという。
1.収入の4分の1と臨時収入はすべて貯金すること
2.いくらか貯まったところで巧みに投資にまわすこと
3.無理をしないで最善を尽くし、辛抱強く時節の到来を待つこと
どれをとっても文句のつけようがない。なにしろ巨億の富を築いた哲人の言葉である。私がもっとも感心させられたのは、彼が若い頃から人生設計図を描いていたことだ。もちろん細々としたことを決めていたわけではない。気持ちの持ち方である。
例えば「40歳までは勤倹貯蓄、生活安定の基礎を築く、60歳までは専心究学、70歳まではお礼奉公、70歳からは晴耕雨読」といった具合である。言葉は古めかしいが、そこには生き方の真理がある。
「スピードの時代」などという流行言葉に煽られて自分の能力以上の速度を出そうとしてもすぐに息切れしてしまう。慌てているから誤った判断をくだしてしまうだろう。大切なのはやはり「急がず、止まらず、怠らず」なのだ。
だいぶ前に、株で儲けているカリスマ主婦トレーダーと対談したことがあった。流行のデイトレーダーだから一日中パソコン画面に向かって血眼で株売買をしているのかと思ったら、驚くほどゆったりと投資を楽しんでいた。時代は違うが、本多翁と同じく彼女も自らの投資のルールを決め、計画的に蓄財を進めているのである。とんと計画性がないまま生きてきた私からみると羨ましいかぎりである。
(写真はmorinoproject.com)