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原稿読み飛ばしにみた管総理の絶えられない存在の軽さ

  管首相が6日の広島市で開かれた平和記念式典で予定された挨拶の一部を読み飛ばしたと知って愕然としました。しかもその理由が蛇腹折りになった原稿の一部が「のりでくっついていて剥がれなかった」というお粗末極まりないものだったからです。

 読み飛ばした部分には「核兵器のない世界の実現に向けて力をつくします」や「核兵器の非人道性」「唯一の戦争被爆国」といったとても重要が文言が含まれていたことが明らかになってさらにビックリ。世界で唯一の被爆国である日本のリーダーのヒロシマ・ナガサキに対する認識がこれほどまで絶えられない軽いものだとは、驚きを通り越して怒りさえ感じました。

 まるで2019年の建国記念日のスピーチ中に雨でプロンプターが壊れて原稿が読めなくなり歴史的無知をさらけ出したトランプ大統領のような無様な姿でした。トランプは演説中に18世紀末の独立戦争(1775~1783年)中に「我が軍は空に展開し、城壁に突入し、空港を押さえ、やるべことは全てやった」と述べて失笑を買いました。なぜなら、ライト兄弟が動力飛行機を造り、有人動力飛行に成功したのは1903年だったからです。

◎ 核兵器禁止条約

「歴史的瞬間だ!」

 国際NGO、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のベアトリス・フィン事務局長は思わずそう叫びました。2017年7月、ニューヨークで開かれた国連総会で賛成多数で核兵器禁止条約が採択された瞬間の出来事です。この条約は核兵器の開発、保有、使用を包括的に禁止し、核兵器の廃絶を目指す初めての国際条約です。

 条約は核兵器なき世界実現に向けた「重要な第一歩」だとしたうえで、国連のグテーレス事務総長は「被爆者は核による破滅的な被害について何度も気づかせてくれ、交渉を進める精神的な原動力となった」と日本の被爆者を讃えました。条約は,2010年に発効に必要な50カ国の批准に達し、86カ国が署名して今年1月22日に発効しています。

◎ 核被害を3度も被った被爆国日本

 日本は世界で唯一の被爆国です。それも一度だけではありません。1945年のヒロシマ・ナガサキへの原爆投下、1954年の遠洋マグロ漁船第五福竜丸の米軍水素爆弾実験による被ばく、そして2011年の東電福島第一原発事故と3度も悲惨な核の被害にあっているのです。大多数の日本人は出来ることなら核兵器はこの世からなくなればいいと思っているに違いありません。

 しかし核保有国や日本のように米国の核の傘で守られている国々の政府は条約に反対のままです。なぜなのでしょうか。ひと言でいえば、軍拡競争のの最中で「現実的な核軍縮に繋がらない」という考え方があるからです。

 考えてみれば、本当に恐ろしい無差別大量破壊兵器を私たち人間はこの世に生み出してしまったものです。幸いなことは核兵器は相手を威嚇することは出来るけれど実際には使えない兵器だという認識が広がっていることでしょう。ヒロシマ・ナガサキへの核攻撃で原爆のとてつもない破壊力と放射線の恐怖を世界が目の当たりにしたからです。

 さらに一歩進めて、核兵器は大きな戦争の勃発リスクを減らしているという主張さえあります。そんな馬鹿なと思われるかもしれないが、歴史を振り返るとあながち誤りだとは言えないかもしれません。

 1914年、通常兵器しかなかった時代に人類は第一次世界大戦を始めた。戦闘員と民間人合わせて約3700万人が犠牲になりました。その恐怖体験から二度とそんな戦争は起こすまいと誓ったはずなのに、そのわずか21年後に約8500万人が犠牲になった第二次世界大戦が起きました。我々人間は万物の霊長といわれますが、それほど賢くはないのです。

 しかし1945年にヒロシマ・ナガサキに米軍の核爆弾が投下されて以来、つまり核兵器の時代が始まってからは、70年以上も第三次世界大戦といわれるような大きな戦争は起きていません。もちろん核戦争も起きていない。さまざまな理由が考えられますが、核抑止力もそのひとつでしょう。

 核大国である米国とロシアの間で核戦争は起きていないし、他の7つの核保有国の間でも核戦争は起きていません。北朝鮮の最高指導者で独裁者の金正恩は傍若無人なトランプ米大統領とチキンゲームを繰り広げましたが、核攻撃は国家消滅あるいは人類滅亡に繋がるということは理解しているようです。しかし膨大な数の核兵器が存在しているかぎり、不安が消えることはありません。

◎ アインシュタインの教え

 「第三次世界大戦がどのように行われるか私にはわからない。だが、第四次世界大戦が起こるとすれば、その時に人類が用いる武器は石と棍棒だろう」

 そう予言したのは原爆製造の元となる理論を発見した天才物理学者アインシュタインでした。つまり次の世界戦争は核戦争で、その結果あらゆる文明が消滅する。人類がもし生き延びたとしても、残されるのは原始的な生活のみだろうと言っているのです。忘れてはならない警句です。

                                        (写真はjiji.com)

 

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