私は、こうして石丸伸二さんを嫌いになりました。

 私が石丸伸二さんを知ったのは、Youtubeの切り抜き動画でした。
中国新聞記者の方とのやりとりを切り取ったもので、マスコミ嫌いの私に石丸さんの言動は小気味よく感じられました。
 そこからおすすめ動画として石丸さんの切り抜き動画が表示されるようになり、「ああ、こんなに若くて優秀な市長が出てきたんだなぁ。英語も堪能なのか。」と、当時は好感を持って視聴していました。

ですが、ある事をきっかけに石丸さんを嫌いになりました。
 

 私は、大学卒業直ぐに実家の農業を継ぎました。
農家というのは思い切りの村社会で、自分は相手のことをよく知らないが向こうはよく知っているのが当たり前でした。
この社会に馴染むには地元の農家が多く所属している消防団に入るのが手っ取り早く、周りの勧誘もあってすんなりと入団しました。
 初顔合わせ、新人研修及び訓練、火災出動、操法大会、防災訓練、夜警、出初式等々。もちろん仲間と飲み会もありました。
 私は運動神経も要領も悪く、誇れる事といったら出席率が高いという点だけでした。そんな私でも先輩方は親切丁寧に指導して下さいました。
社会人経験もなく世間知らずで空気の読めない私は、数多くの失敗を重ねながら、少しずつ消防団員として社会人として成長していったのだと思います。
 消防組織というものは想像通りの階級社会で、ただの農家のボンボンでも分団長という肩書だけで消防署員の方々は丁寧に応対して下さいます。
署員と分団員が関わるのは操法大会に向けた訓練指導が主になり、その訓練は各消防分団によって熱量が異なるのでなんとも言えないのですが、私が所属していた分団は市内大会で結果を出すよりも、分団員になるべく様々な番手を経験させて、火災時に誰でも応対できるようにする事を重視していました。(簡単な役割、指揮者【号令及び統制、火点を落とす】、1番員【走ってホースを連結】2番員【3番員と協力して吸管投入】3番員【2番員と協力して吸管投入後ポンプ操作】)
ですが、指導署員としては折角時間を割いて指導するのですから、結果を出して欲しいという方が多く意見の相違、単純に相性もあるので団員によっては操法自体の存在意義に疑問を持つ事もありました。
わざと厳しく指導にあたり、団員の反骨精神を煽る人。己の身体能力の高さを生かして具体的な指導をする人。団員との対話を重ね個人にあった指導法を提案する人。署員も年度ごとに入れ替わるので多くの署員と関わり合い、少なからず友好深めることもありました。
そうして、曲がりなりにも分団長を含め20年の消防団経験を積み退団しました。

 そう、私は人生の約半分を消防団という組織に身を置いていました。
ですから、石丸伸二さんのあの行動、発言はどうしても、どうしても許せなかった。納得できなかった。信じられなかった。そうして、私は石丸伸二さんを嫌いになったのです。

2022年9月、当時石丸市長は「過去に例がないほどの大型台風14号」の接近が発表されたにもかかわらず、災害対応を副市長以下に任せて「行先を誰にも告げず」千葉県九十九里浜で行われるトライアスロンに参加するために出かけました。
 この事を議会で咎められた時の石丸市長の発言は、私からしたら到底受け入れられるものではありませんでした。

 みなさんのお住いの行政組織図(機構図)を見ていただくとわかるように、消防本部の上をたどると市長がトップになっていると思います。
市長は消防機関の長を通じて指揮監督を行う立場にあるのです。これにはもちろん消防団も含まれます。
 災害出動、それも「過去に例がないほどの大型台風」ともなれば最悪人命に関わることは簡単に想像できるでしょう。
市民の命と財産を守るためとはいえ、消防職団員にも命の危険がある災害出動を命令しなければならない立場というのは私には想像もつきません。

 そんな立場にある人間が、ただただ詰問された議員に反省の弁もなく、「プライベートを詮索されるというのは大変に気持ちが悪いのでやめていただきたいと思います。」「はっきり言ってキモいです。」

 信じられない発言です。前もって指示をだしているから大丈夫?あなたは市民の命を財産を守る立場にいるのではないですか?人の命の重さを全く感じさせない言動は吐き気を催します。
大規模災害が想定される場合、消防団員は防災センターに詰めて出動命令を待つこともあるでしょう。
消防団員は非常勤特別職の地方公務員とされていますが、普通にサラリーマンだったり、農家だったり鳶職人だったりします。分団長は階級があるとはいえ、分団員に出動命令(お願い)する立場です。
 そんな人たちに災害対応させておいて、自分はプライベートでトライアスロン?まったく、全然理解できません。万が一、そんな時に自分の所属する分団員が災害対応によって落命したとしたら、絶対に、絶対に納得できません。許せません。
 消防職員だって同じです。仲良くなった職員が、提出書類の催促の電話を入れてくれた署員が、装備品の交換対応をしてくれた局員が、こんな意識の低い市長の命令で二度とあえなくなったら、私は憎むでしょう。恨むでしょう。

私は、こうして石丸伸二さんを大嫌いになりました。


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