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友人のこと

昨日、「oh.心の友よ。」という件名でメールしてきた友人がいることをツイートしたが、彼は大学の友人で今はほとんど交流がない。

そういえばあいつどうしてるかなとメールを見返していた時にみつけたのが心の友よメールだ。

彼との出会いは大学3年で入ったゼミだった。その年初めて出来たばかりの文学系のゼミで、ぬるそうな紹介文を見て楽そうだなという理由で応募したら、同じように考えている連中が多く割と人気があった。
面接して何とか受かってゼミに入ったら、今で言うパリピみたいなのがかなり占めていて愕然としていた時、彼は私と同じく浮くように違和感を放っていた。
その時すでに「俺はこのゼミでこいつとばかり話すことになるだろうな」と思ったが案の定そういうことになった。

ゼミの最初の顔合わせで彼は同じにおいを嗅ぎつけたのか、私にやたらうやうやしく話しかけて来たのを覚えている。
それから彼とはよくつるんだが、私か私以上のとんでもないアル中だった。
だったというか、生きていればおそらく今もとんでもないアル中だと思う。
彼は、酒が入っていない時は非常に大人しく人に対してやたら気を遣い丁寧過ぎるのに、酒が入ると人が変わったように狂人と化すホンモノだった。

飲むと必ずと言っていいほど何かしら問題を起こすので在学中も卒業後も相当迷惑を被った。
キャンパス内で飲酒して暴れたり、公園に設置してある灰皿を投げたり、突然ケンカ売ってきたり、女の子にウザ絡みして泣かせたりとエピソードをあげればキリがない。

夏の終わりのある日、夜中に彼から突然「海を見に行こう」とメールが来て、私も暇だったのでまあいいかと承諾したら、彼は酒に酔った状態で車に乗って現れた。
事前に酒を飲んで運転はするなと念を押していたにも関わらずだ。
やめようと言ったが、当然引くはずもなく私は彼の運転する車に乗った。

交差点を右折する時、右折中だけ何故か加速させるのはやめて欲しかった。
車内にはキリンジのアルバム「KIRINJI Archives SINGLES BEST」が流れていた。
延々とキリンジを聴きながら、車は湘南を目指していた。
夜明けごろ到着し、特段降りて海を見たりするわけでもなくファミレスに入り飯を食って、そのまま帰った。

あれは何だったんだろうと思うけれど、意味などなく、ただその時の気持ちで楽しんでいただけなのだ。
深夜の道路を走りながらみる景色や、車内に流れる音楽に耳を傾けたり、記憶にも残らないおしゃべりをしたり、それだけで良かったんだなと思う。

たまに深夜ふとこの時の事を思い出す。
あの夏の終わりの意味なんかない行動の純粋さは、今の私には冒険過ぎて出来ないだろうなと思うと少し悲しくも思う。

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