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超自然的でタイムレスな写真シリーズ 「FUTURO RETRO / フューチャーレトロ」

各国で賞賛を浴びたデビュー作、「Swimming Pool」から約3年。
スロヴァキア人写真家 マーリア・シュヴァルボヴァーによる、待望の作品集第2弾が刊行です。


社会主義時代の建築物や公共の空間を、独創的な色彩によってモダンで新鮮な場所へ変化させる、マーリア・シュヴァルボヴァー
その特有の世界観は、デビュー作の「Swimming Pool」で世界中にファンを生み出してきました。

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「Swimming Pool」


そんな著者の2作目の写真集「FUTURO RETRO」は、256ページの大型本。
2作目でありながら、彼女が現在のスタイルを確立した2014年から直近までの活動を網羅するような1冊となり、12の作品シリーズが収録されています。

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「FUTURO RETRO」が意味するものとは

新しいものと古いものをブレンドすることで生まれる予期せぬハーモニーは、彼女の作品において重要な要素。彼女はこれまで、この2つがもたらす絶妙なバランスを見極めることで、独特な世界観をつくりあげることに成功してきました。

さて、今回の作品集のタイトルとなった「FUTURO RETRO」とは、どのような意味なのでしょうか。


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intimity / 親密な2人
シリーズ「The Doctor」2014年

実はこのタイトルは、ラテン語で「FUTURO = 未来」「RETRO = 過去」という、まさに彼女の作品を象徴するような2つの言葉を使ったもの。
この言葉を通してシリーズを概観すると、本書は現在の彼女自身を表すような、そして作品の現在地を表すような作品集であることがうかがえます。

本書の冒頭は、マーリアが生まれたズラテー・モラフツエの病院を撮影に使った、「The Doctor」シリーズではじまります(写真上)。
このシリーズは、マーリアがモデルの表情から感情を欠如させるという手法を初めて取り入れた作品のひとつでもあり、以後このスタイルが、マーリアの作品の特徴として、大事な一つの役割を果たしてきました。

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Clients / お客さん
シリーズ「The Butcher」2015年

上の「The Butcher」シリーズは、マーリアが育ったスレプチャニという村で撮影されたそう。彼女が子どもの頃によく両親と通った精肉店の跡地に、セットをつくりあげ、一部は当時のまま撮影で使われています。
これまで彼女は、自身にとって身近な“場”であったり、記憶に残っている幼少期の共産主義時代の面影などを巧みに使ってきました。

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Balance / バランス
シリーズ「Lost in the Valley」2019

一方で2019年には初めて、撮影地をスロヴァキアから変え、アメリカはカリフォルニア州のデスバレーへ。彼女はアメリカとチェコスロヴァキアのつながりを表現するかのように、共産主義時代に流通していた衣装を用い、構想を練っていったといいます(1960年代後半、多くのチェコスロヴァキア人がアメリカへ移民として渡った)。
乾いた砂漠とその向こうの雄大な山々との繊細なコントラストを、巧みに捉え、本シリーズは、わずか1日で撮り終えたそう。

他にも、シリーズ「The Marriage」「Plastic Pool」「Walls」など、さまざまな舞台で繰り広げられる作品を、本書ではそれぞれの背景や撮影時の話などを交えた解説とともに収録しています。
マーリアの視点や興味、考え方さえも存分に知ることができる一冊。


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著者マーリア・シュヴァルボヴァーのinstagramでは、
本写真集や作品の情報も満載!


日本語版の発売は2020年4月を予定しております。ぜひ楽しみに、お待ちください!

担当:小島知世(編集)




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