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Raison d'être~存在理由~ 第六話

   【大学前の路上】
賢人  有香さん……どうしてこんな時間にお兄さんの学校なんかいるん
    だ?……まさか、な……思い過ごしだと思うんだけど……。今日の件、
    結構有香さん思い詰めてるみたいだったし……。お兄さんのためな
    ら何でもしたいっって気持ちが、すごく伝わってきた。なんか……
    似ているせいかな、俺と……。
    よ……っと。とりあえず、着いたはいいけど、第3研究室ってどこに
    あるんだ?
有香  賢人君!
賢人  あ、有香さん、ちょうど良かった、今
有香  ごめんなさいね。こんな時間に呼び出したりして……。
賢人  気にしてないって。有香さん、なんか切羽詰まった声してんだも
    ん。俺の方が気になるし。
有香  ありがとう。
賢人  どうする?どっかこの辺りに喫茶店でもあれば……。
有香  研究室にいけばコーヒーくらいあるわ。
賢人  うん、でも……ゆ、有香さん!?
有香  お願い。人には聞かれたくないの。静かなところで話したいの。
賢人  わ、解ったよ!解ったから!
有香  本当……?
賢人  本当だって!そこでいいから!
有香  ありがとう。
賢人  っ、もう!
    俺だって男なんだからな!急に抱きついたりしないでよ!
有香  ふふ、賢人君だって興味あるんじゃないの?
賢人  そりゃ、まーね、でもねぇ!
有香  ごめんね、そんなつもりじゃなかったのよ。
賢人  はいはい。……そういや、お兄さんは?
有香  兄さんは……。
賢人  あ、ごめん。
有香  いいのよ、さ、案内するわ、こっちよ。
賢人  ……なんか、有香さんの様子……変だ?意識が探れない……?
    どうなってんだ……?

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