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「あこがれ」(フォトポエム19、以前出版した詩集より推敲)

「あこがれ」 

私の心の中で絶望が沸き起こる
身動きできないほど
奥の奥の奥で
それは私を縛りつけた
どうすることもできなくて
夢の中で
止めどなく
涙が流れ落ちた

絶望を抱え込んだままの心にさえ
あこがれはあるのだ
ノヴァーリスの「青い花」
あるいはメーテルリンクの「青い鳥」のように
宇宙空間では
地球は大気の膜に覆われ
漆黒の闇の中に
美しく輝いているという

あぁ 愛おしいものよ
遥かかなたに
青く光るそのひとしずくが
ヒカラビ
ヒビワレタこの唇に
触れるのならば
今の心象風景も一変するのだろうか

いつの頃からか
こんなにもこんがらがってしまった関係は
少しづつ少しづつ
ズレて歪み
取り返しのつかない地点まで来てしまった
後戻りもできなくて
進むこともできなくて
心を殺す
バラバラになってしまう前に
自分の存在を無に帰して
誰の目にも触れない場所にそっと閉じ込めた

もう大丈夫だ
楽しむフリをして
時が流れてゆくのを待てばよい
未解決の問題から
目を逸らし
逃げて逃げて逃げて来たけれど
燻り続ける胸の内の炎が
いつかいつかいつか
きっときっときっときっと
と声にならない叫びを上げ続けても

甘美な涙の味を知り
許し許される関係が熟するのを待つ  



萩尾望都の「残酷な神が支配する」の中の詩の影響を受けたかもしれない「あこがれ」。
行き着くところまで行き着いてしまった「残酷な神が支配する」には、そこまで描いて欲しくなかった感が残った。昔の絵のファンである私は何度も読み返すに至ってないが、それでもこの中に登場する詩には当時かなり共鳴したと思う。

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