音楽のようにリズムを乗せた服が作りたかった
愛しい姪っ子の6歳のお誕生日プレゼントに、カラフルなリネンのワンピースを作った。
思えば、13年ほど前、服飾の専門学校を卒業し、はじめて就いた仕事は子供服のデザイナーだった。
子供が好き、というよりは子供ごころを失わない世界が大好きだったのだ。
当時、20歳の私は、パリの子供部屋の本をかたっぱしから集め、ハリーポッターやフランチェスカ・リア・ブロックの小説を読みあさり、ソフィアコッポラの映画にどっぷり浸かっていた。
子供の気持ちを失わずに、大人になっても身につけたいと思えるものも、今「SEEMORE!」という名前で作っているアクセサリーにも通ずるところもある。
そんなわたしがデザイナー業を経て、大人の服の企画デザインの仕事を経て、糸の会社で働きだして合計したら13年が経とうとしている、世間では立派な「大人」になった今、「今でも着たい服」を、子供服として作ってみたらきっと楽しいだろうな、というのはずっと思っていたけれど、愛しい姪っ子のためにやっとやっと作ることができました。
行動にうつした時には、愛しい姪っ子はもう6歳になってしまっていたけれど。(本当は何を着てもかわいい3歳位の時に作ってあげたかった、、)
夏の季節に着たくなる、しゃりっと涼しげなリネン100%の素材に、染めたようなまだらなピンクのプリント。ピンクと赤は姪っ子が好きな色なのだ。
形はシンプルなワンピースにしよう。走ったり踊ったりするのが大好きな子でもストレスを感じない、ばさっと着られるワンピース。お風呂上がりや海に行った後にも気持ちよく着られるような、でもちょっとおでかけの時にも着せたくなるような、そんな中間みたいな服がいいな。
カラフルカラーもキラキラなものも取り入れたくて、ちっちゃく編んだドットを絵の具をこぼしたみたいに散りばめて、ポニーちゃんが好きな姪っ子に馬のたてがみもつけちゃおう。濃いピンクもいいけれど、淡いピンクもかわいいから、交互に混ぜて編んでみる。
仕上げは横尾香央留さんのお直しワッペン、新しく作る服だからお直しする必要なんてないのだけれど、好きな場所につけるのも、きっと楽しい。
そんな風に考えながら作っていくうち、わたしはどんどん子供の気持ちに近づいていった。それがとっても楽しかった。
子供の頃感じてたわくわくする気持ちが呼び覚まされたようで。
そして、絵の具みたいなドットのモチーフや馬のたてがみを編みながら気づいた。
作りの良いシンプルな服が好き。
上質な素材も好き。
そこに編みものや刺繍でリズムを足すように、絵の具の色を足すように重ねていく、そういうものを作ることを、私はずっとしたかったのだということ。
そしてさらに気づいた。生き方もきっとそう。
真面目で上質。
そのベースに遊びとリズムを重ねてひとつの音楽になるような生き方が、私の憧れであり希望であると。
作りながらまるで「自分の取り扱い説明書」を作るようにものづくりをしているのだな。
自分が何をしているときが、どんなものを作っているときが、1番自分らしくいられるのかを、改めて気付かされた1着だった。
だからやめられない。作るということを。