そもそも連詩組って何?

わたしが組長となって(笑)間欠的にやっているツイッター連詩・pw連詩組について、2017年の『詩と思想 11月号』に特集<IT社会がもたらす変革とポエジー>に寄稿したもの。「組のもんですが〜ツイッター連詩から連詩組まで〜」をここに少し写真などを足して掲載しておきます。ご笑覧頂ければ幸いです。
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組のもんですが 〜ツイッター連詩から連詩組まで〜 宮尾節子

 「みんな楽しそうで、アットホームなブースですね。ここは」といろんな方が声をかけてくれる。こことは、pw連詩組のブース。本年七月九日に両国で開催された「第21回東京ポエケットin江戸博」会場でのこと。詩人たちのマーケット、東京ポエケットに連詩組として参加するのは初回の2014年第18回以来、二度目のこと。

 実は、初回からもう連詩組はこんな感じだった。全国津々浦々から集まって、顔合わせは初めてなのに身内と会えたように、おうおうやあやあとハグまでする始末。言葉で繋がっているとは、心で繋がっていることだった。そこに人見知りなんてない。先に着いた言葉が遅れてきた身体を出迎えている、そんな打ち解けた光景だった。       *

 そもそもpw連詩組とは――。

 今から六年前、詩人の福間健二・水島英己・宮尾節子の3人でpw3(ポエティックワンダースリー)と名付けツイッター上で始めた連詩がその始まりだ。連詩と言えば、詩を連ねること。まあ、しりとりみたいなもんだろう。そんなアバウトなわたしの呼びかけに、いくらでも堅いこと言えるアカデミックなお二人が堅いこと言わずに付き合ってくれたラッキーが、まずは事の始めにありました。改めてお二人に感謝しつつ、先を続けよう。

 ツイッター連詩は未見でも、東北の震災直後に現地から生々しい発信を続けた和合亮一さんの存在で、ツイッター詩はわたしも目にしていた。彼の詩が大変な反響を得たことは、詩の力を見直させるきっかけにもなった。詩が人びとを励ましたのだ――。また携帯電話やパソコンから誰でも自由にアクセスできる、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)という新たなコミュニケーションツールが緊急時にたいへん役立ったことにも、表現の新たな時代の到来を感じた。

 書き手は多くても、なかなか発表場所に恵まれない詩という日陰ジャンルにとっても、SNSは朗報ではないかとの閃きもあった。すでに詩の投稿サイトはあったが、書き手ばかりの閉じた場には、読者との接点や双方向性が見えなかった。その点、ツイッターは誰でも気軽につぶやきを載せて流せる、開かれた言葉の場所だ。その言葉(ツイート)に、感想(リプライ)や反応(いいね)や紹介(リツイート)などの、リアクションが自由につけられる。双方向性があって不特定多数が目にする場所。そうだ。(人が)来なければ(詩が)行けばいいじゃない! そこに詩人の詩も混ざるというのは新たな詩の一歩だと思えた。みんなで混ざればこわくない。

 「Shall We Dance ? 」出来れば連詩でご一緒に。そんなこんなの思いで――。

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 2011年12月。日本初のツイッター連詩チームpw3(ポエティック・ワンダー・スリー)は出発。Pw3の名付け親は福間さん。まあ「ヘンテコ詩人の3人組」といったところか。親を交代して1周10日間。三人で3周して終了の予定が、始めてみるとこれが面白くてやめられない(笑)。結局は毎日休むことなく10周 100日間。翌3月まで続くことになろうとは予想外の、三人の初ツイート詩を紹介しよう。まずは、言い出しっぺの宮尾が親。お題は「Say Yes」(笑)。

12月です。「わたしたちの夏」を終わらせない為に、咲かせると決めた琉球朝顔が。咲いたよ!クチビルを紫にしながら。12月のアメの朝です。アリとキリギリス。どんでん返しのアリさんにキリギリスはお家を用意できる?恥ずかしい程出る詩集。うちもふくめてやけど。

               (Say Yes1/宮尾節子)

二〇一一年は未曾有の東北大震災のあった年。あまりの凄まじさに、「言葉がない」と誰もが口にした。詩人たちも多くの人が言葉をなくしたところから発信しなければならない。表現者としても非常に困難な時を迎えることになった。甚大な被害に見舞われ、大勢の人が家をなくし家族をなくし仕事を失った。普段の暮らしを突然奪われ路頭に迷う人々の姿は、「アリとキリギリス」が逆転した物語のように理不尽に見えた。では歌うたいのキリギリス詩人たちが、途方に暮れる大勢のアリさんたちに歌で手助けができるのだろうか――。そんな思いもこめた。また宿根草で生命力の強い庭の琉球朝顔が夏が終わっても咲き続け、なんと十二月まで花をつけたこと。この年福間さんが『わたしたちの夏』という映画を撮ったことも朝顔にかけて詩に入れた。その先の水島詩と福間詩は次のように続く。

少女は目をそらさない。島を出て、フィルムのなかの緑に融け込む。すべてを許したのではない。光にさらされることで闇を孕んだのだ。どんな時が彼女の島を包囲したというのか。夏は恐ろしい美に引き渡されることを拒んでいるというのに。目をそらさない少女よ。

(Say Yes 2/水島英己)

                 

雨の、12月に入る。傘さして、40年前のユーミンの曲をうたう。なにか、それほど、やっぱり。冬に向かう社会の、いいかげんな反省とバタンと閉まるドア。島のこと、あの子のこと、その目の力。思い出せるし、いま咲く花もあって、ありがとうだけど、めちゃ寒いね。

(Say Yes3/福間健二)

この三人の詩がまずはpw3の出発だった。水島さんは、時に憤りながら社会を詠み、美しい故郷の島を歌った。福間さんは、過去にも未来にも取り込まれない今の若さを歌い、今を生きる人の姿を詠んだ。――毛色の違う三人のツイッター連詩珍道中が、始めてみると面白くて止まらないほど夢中になった理由は何だろう。幾つかある。

 ツイッターに発信した数秒後にフォロワーの反応やコメントが来る。まずはテキスト詩の世界ではかつて味わったことのないリアクションの、スピード感が楽しい。同時に、その詩を受け取る次の当番すなわち読み手の担保がある。自分の詩が確実に届く、その達成感は大きい。さらに、打てば響く「呼応」という形で自分の詩が次の詩へと育っていく喜び。それは、自分という限られた狭い枠を乗り越えて、他者へと言葉が越境していく詩の冒険であり、愛の冒険でもあった。何よりツイッター連詩は、リアクションが目の前で見えるライブ感がたまらない。そこはささやかだが「書き手と受け手と読み手」の三者に恵まれた新たな詩の地平だった。予定の3周を7周も延長して、翌年春にpw3連詩は終了した。

 その他のお題:「eclipse」「クリスマスの思い出」「福式呼吸」「新年の手紙」「竜のかなしみ」「クレイジーラブ」「自由詩宣言」「愛の地図」「もうすぐ春ですね」
*以下のまとめサイトにまとめが載っています。

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 その後の動きをざっとまとめてみよう――。

 2011年3月ー8月 Pw3第二部

 ツイッター連詩の面白さをもっと他の詩人たちとも共有してみたくなり、新たな詩人たちに参加を呼びかけた。新メンバーでの「pw3」の連詩を、仲間を交代しつつさらに半年ほど続けることになった。

 参加者:小峰慎也・小山伸二・北爪満喜・小島きみ子・ブリングル・ソコノロニコ・須永紀子・金子彰子・たけだたもつ・山田兼士+宮尾。達人メンバーたちが、初めてのツイート詩にそれぞれの持ち味を見せて、愉しんだ。

 お題:「あのバカは」「紙」「ユネスコ」「愛がたりない」「安心の手品遣い」「スキップ」「風の丘」「北へ行く」「辺」「マイガール」「マイボーイ」「解放区」「ボーイミーツガール」「都会図鑑」「夏のコラージュ」
*まとめはこちらです。

 2012年8月 「pw30」スペシャルお祭り企画

 pw3の詩人巡りをひととおり終えて、打ち上げの「スペシャル企画」。歌手の七尾旅人氏をゲストに、ツイッター連詩によくコメントを寄せてくれたフォロワーも交えて30人でpw30を結成。前日まで自分が誰の詩に繋ぐのか知らされていないミステリー連詩企画で、ずいぶんスリリングだったとのこと(笑)。詩人・歌手・バレリーナ・女子高生・店員・教師など、詩は初めての人を含む多種多様なメンバー。正直不安もあったが開けてみると、それぞれが想像以上の素晴らしい詩力を発揮して感激。誰もが「良い舞台さえあれば、良く踊れる」の哲学を目の当たりにしたし、誰のなかにも「詩は生きている」との確かで幸せな手応えも得た。

 お題:「身投げする音」(七尾旅人)

 2012年9月「Pw10」10人チーム連詩

 pw10として10人チームでの連詩。参加者:田中宏輔・二匹の猫・海埜今日子・佐藤幸・hide・明乎・森山恵・金子彰子・バンバサナエ+宮尾。書評やピンク映画評を書くhideさんも詩は初めての参加で、いい味を出した。

お題:「まいっか」
*まとめはこちらです。

 2012年9月 同時多発・自由参加型

 固定メンバーに自由参加メンバーを加えた合同連詩の試み。この回で始めて、誰でも飛び込み参加歓迎としてツイッター上で呼びかけた。名付けて「同時多発ツイッター連詩」。大勢の参加がありpw連詩では最大規模の連詩会となった。「繋ぎました!」の掛声や「楽しい!」「止められません!」の歓声が一斉にあがり、詩のプロ・アマ混交で詩を書く喜びを共にした。お題:「おいしい水」
*まとめはこちらです。

 2012年10月「pw30 The sounds of dive」冊子

 初めての冊子発行。「pw30」の連詩がブックレットになる。ツイッターの画面を反映したコンパクトで洒落た冊子ができた(製作協力:鈴木博美・cccouk)。

 2013年3月ー12月 pw連詩組

 この年がツイッター上で連詩組の連詩がいちばん盛り上がった年。始めて「pw連詩組」と名乗り、常連メンバーも固定してきた。組といっても、基本は自由参加・自由退出で特に規則も上下関係も縛りもない。「連詩やるよ」と呼びかけた時にやりたい者がツイッターに集まるだけの、遊び仲間だ(組長=鬼ごっこの鬼ぐらいのエラさかな?笑)。お題:「春の恋」「船を出す」「花を召しませ」(春組・3月4月)「やさしい雨」(雨組・6月)「抱きたい詩・抱かれたい詩」「サマータイム」「夜蝉」「あの夏の日を」(夏組・8月)「秋の待ち伏せ」(秋組・10月)「明日世界が終わっても」(冬組・12月)他。
*まとめはこちらから順次つづきます。


 2014年1月 ネットプリントで連詩集

ネットプリントで連詩組『pw夏組』詩集発行。全国の組員が最寄りのコンビニで印刷して綴じる形の冊子。B4の両面印刷を二つ折りにして本文18頁に、組員のアイコンが勢ぞろいしたカラー表紙付き。(製作協力:明乎)



 2014年7月 東京ポエケットに連詩組で参加

「第18回東京ポエケットin江戸博」に「pw連詩組」として初参加。連詩組仲間がリアルで初顔合わせ。合言葉「組のもんですが」「ごくろうさんです」(笑)でお互いを確認。各自が手作り詩集を持ち寄って販売。ほぼ全員が詩集作りも販売も初体験。「連詩組ポスター」(製作:落葉)と連詩組の「金バッチ」(!)も制作販売した。

 2014年9月 現代詩手帖&pw連詩組共同企画

 『現代詩手帖』の共同詩企画で連詩チーム「pwGT組」を結成。番場早苗・カニエ・ナハ・金子彰子・佐藤文香・宮尾節子の5名の固定メンバーが、連詩組及び自由参加のツイート詩から一作を選び、繋いでいくという方式。完成した連詩は、『現代詩手帖』11月号の特集「共同詩、詩を開くために。」の「ツイッター連詩」に掲載された。連詩組が誌面に初登場。お題:「詩のレシピ」*まとめはこちらです。


 2015年11月 飯能で連詩組トークと朗読会

 「そもそもpw連詩組とはトークと奥武蔵大朗読会」初期pw3メンバーの水島英己・須永紀子・宮尾節子による「そもそも話」と、pw連詩組による初朗読会を開催。ゲスト詩人も多数朗読。参加者:みいとかろ・愛皮ひびき・西原真奈美・黒木アン・林明乎・梁川梨里・マイケル・天野行雄・とんぬ・カニエ・ナハ・工藤ヒロツグ・伊藤浩子・新井隆人・大原鮎美・元ヤマサキ深ふゆ・他。

 2016年9月 pwしりとり3行連詩

 3行詩をしりとりで繋ぐという連詩の試み。皆、連詩にも慣れて完成度の高い作品が揃った。お題:「秋の声」。
*まとめはこちらです。

 2017年1月 初夢pw連詩組カルタ詩

 各自が担当する一文字で3行詩を作り、絵札用写真も添えて元旦に一斉にツイッター上で公開。後日、ネットプリントにして配布。(製作協力:天野行雄・梁川梨里)


*絵札と詩のまとめはこちらです


 2017年4月 札幌豊平館にてトークと朗読会

「pw連詩組と北の仲間たち」で初の遠征。北海道の組員と道内詩人達と共同でのトークと朗読会。番場早苗氏をゲストに「ツイッター連詩・共同詩について」、参加組員と「pw連詩組に参加して」トーク。全員で即興一行連詩「π(パイ)の雨」作成。参加者:かとうたか・西原真奈美・トミー・大原鮎美・長屋のり子・木田澄子・渡会やよひ・嘉藤師穂子・森れい・村田譲・瀬戸正昭・柴田望・福士文浩+宮尾。

 北海道新聞にも詩の催し「道内外の詩人・深まる交流」の見出しで「pw連詩組」名で記事が掲載される。

       *

 ――そして今である。これらはみな「ツイッターが牧歌的だった頃」の昔話になるかも知れない。連詩組に「明日はない」かもしれない。あるかもしれない。ただ、わたしは「入口より出口」を信じる(「コイ」より「イケ」を!)。もう新たな活躍を見せてくれている者も多い。組がたまたまの休憩の場であり、たくさんの出発の場であれば嬉しいな。それだけ。

 ツイッター連詩は、暗い夜空で独りぼっちの小さな星々が「ここにいるよ」「ひとりじゃないよ」と、言葉の灯りでつながり合って、星座を描く姿にも似ていますね。

詩を書いていてよかった。貴方が居てくれてよかった!

       *

Special Thanks to

七尾旅人福間健二水島英己バンバサナエはだおもい久谷雉広瀬鈴二匹の猫宮岡恵美雨音みいとかろ島野律子小山伸二小峰慎也ソコノロニコブリングル金子彰子須永紀子小島きみ子北爪満喜五十嵐倫子たけだたもつ山田兼士鈴木博美佐藤幸さいとうみわこ葉月野陶坂藍明乎田中宏輔海埜今日子hide森山恵三角みづ紀横山黒鍵fumikaya小久米ノ末永鶏秋田高志cccouk上野ヱ来晴はすむかいあんぬ天婦羅★三杯酢早川純100g10yenまゆみっくす佐藤真夏じまヤナ・ヤヌーKaorin♡愛なぎさひふみ春森しゆう長谷川游葛餅細魚あまぐもがらすだまときあMistyせいや青峯愁夢深青ハコかとうたかゆーこ亜久津歩なべのふたゴースト℃明日架こたにな々かきんこ@はらみJun降旗純七種論古田祥一れいてぃなゆたダイドコ雪野AsukaーAngelサラ・ローズ悠菫蒼月眞咲鈴倉みぱるなすnami末松務マハラニ虚象夢ペルケワダナツ中村梨々しましん伊吹花夜末亙山崎みふゆ幸坂かゆり行雲流水猫鬼injoyきをぴらるく十三Kaorin愛皐月猫木村ユウ蒼書店員LaLa希乃黒崎立体西原真奈美梁川梨里ぴっとんはるのふくChivalreaper犬井悠火繭宮てとら朱音空子鳩野えりすみずうみこタムラアスカ東徹也工藤ヒロツグことりgesi浮儚檸檬masahiro莉乃侍子あかねN.S書店員伽十心アオのぎへん藤一紀しおんInjoyHecateこころ星野鋏m草間小鳥子川津望衣未悠月葉月独り言中家菜津子強風@翼なき鴉ゆうさり北大路京介そらの珊瑚黒猫月下桜TakashiAkitaとんぬTsukasa草良ヨシダユカ花依twilight雪峰なちゃちゅむ暁庵色えんぴつみのむし蒼屋joukiかしろう波立鉈一兵どこかのん愛河ひびきやしまたかゆき川澄萌野はて青葉有tomoonShuheiYamazaki加藤生物coge柳原恵津子ハァモニィベル葩汀きらきら星sampleとみいえひろこ箕雨シキ黒木アンgotou.ma歌歩大原鮎美sundora風の里農場tanpopo蛾兆ポルカ星座物語企画糸雨羊菜々とよよん159ゆずeiaカニエ・ナハ佐藤文香村田活彦Licht木村孝夫紅育雨粒あめ子森朱鞠DEKA麻生有里happinessべつのしかたで姫織アリヤ齋藤旧Arim白島真nishiyan天野行雄Michael's Wink天野しえら‏雨木透子(敬称略/順不同)
&Peace! 組長拝。

*pw連詩組のツイッター連詩のまとめサイト

https://togetter.com/id/sechanco

*pw連詩組にご参加頂いたかたがた。デジブックに頂いたお写真を
スライドショーにしたものです。なつかしい。ありがとうございました!
みんなツイッターの小さな窓枠で知り合った人たちばかり。


*みなさまがいてくれるから、わたしがいられます。
 ありがとうございます!
本年があなたにとって、よい年でありますように。。
         なにがあっても――

        ことばがだいすき みなさんがだいすき   宮尾節子

              ***

追記:デジブックはサイトそのものが終わってしまいました。現在は閲覧できません。時代は変わっていきます。そのひと時のそれぞれの方々の今を、ご一緒できてよかった。感謝です。

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