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【Covid Quarantine Birding <オオソリハシシギ>】

オオソリハシシギは、ノンストップで世界最長の旅をする鳥です。
北米アラスカからニュージーランドまで1万2000キロ以上を11日間かけてノンストップで飛行。
あの小さな体のどこにそんなパワーがあるのでしょう?体重は190〜400グラムしかありません。
(ちなみに、渡りの距離自体だと世界最長なのは、キョクアジサシの8万キロ。)
英語では「Bar-tailed Godwit」というので、外国人の皆さんは「BTG」と略したりします。(僕も)

オオソリハシシギにはスカンジナビアからアラスカまでの北極圏の海岸で繁殖し、オーストラリアやニュージーランド、アフリカなどの南半球で越冬します。
旅のルートは、以下の5パターンに分類されます。

ルート①★
ロシア・アラスカの北極圏から日本列島を経由してオーストラリアへ行くコース
(僕たちが観察するオオソリハシシギは、このルートの子たちです)

ルート②
ロシア・アラスカの北極圏から、太平洋の真ん中を通って「ノンストップで」オーストラリアへ行くコース

ルート③
スカンジナビア半島の北極圏から、ヨーロッパを経由して、越冬地のアフリカへ行くコース

ルート④
ロシアの北極圏から、ユーラシア大陸内陸部(モンゴル・中国)を経由して、東南アジアやオーストラリアへ行くコース

ルート⑤
ロシアの北極圏からウラル山脈・カスピ海を経由して、越冬地であるインド洋へ行くコース

ノンストップの長距離飛行の世界記録は、ルート②を渡った子で記録されたのですが、とにかくすごい!

旅に出る前、オオソリハシシギは体にたっぷりと脂肪を蓄えます。そして同時に消化器官のサイズを縮小します。
そして旅立つときは、風に乗って効率的に行けるように、最適な天候パターンを予想できるらしい。

オオソリハシシギの長距離飛行の秘密、それは素晴らしく省エネの飛行ができることにあります。飛行中は1時間当たり体重の0.41%しか消費しません。オオソリハシシギは、他の種の鳥に比べて、"エネルギー消費が異常に少ない"のです。
そして食事もとらず、不眠不休で長距離を飛行します。右脳が眠っている時は左脳が活動し、左脳が眠っている時は右脳が活動していることで、長距離飛行ができます。これを「半球睡眠」といいます。
そして南半球への渡りを終えると、体重が半減しています。お疲れ様!!

逆に越冬を終えて北極圏に北上する時には、ノンストップではなく、休憩しながら北上するルートを取ります。その時にもベイサイド・バーダーの僕たちに観察されます。

今、東京湾岸には綺麗な「赤い」夏羽のオオソリハシシギが旅の途中で立ち寄ってくれています。
(冬羽は白い)
写真は友だちと一緒に観察に行ったときのもの。赤くてしなやかな体、そして少し上に反ったクチバシが全体としてバランスがとれていて「ああ、この体でものすごい長距離を飛んでいくんだな。」と感慨深くなってしまうのです。

そういうオオソリハシシギも、実は絶滅危惧種。
ニュージーランドに越冬する個体群については、1980年代に10万羽いたのが、現在では67,500に減っています。その大きな理由が護岸の建設と干潟の埋め立てです。またアフリカへ越冬する個体群も減少しており、アフリカ・ユーラシア渡り鳥の保護に関する協定(AEWA)が適用される種の1つとなっています。
これ以上数を減らさないようにするため各国の研究者、環境保護団体が様々な活動をしています。

友だちと僕は、越冬の途中で立ち寄ってくれた赤くて美しいこの鳥たちを干潟で観察しつつ、無事に南半球へ旅立ってくれることを祈ります。
そして季節が巡り、「白い冬羽の」彼らがまた秋に北上してくることを願いながら、東京湾岸の四季の彩りを感じるのです。

#野鳥 #バードウォッチング #オオソリハシシギ

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