【医師×レバレッジETF】基礎編⑤積立投資は有効か?

前回の記事から4ヶ月以上空いてしまいましたが、以前から気になっていたテーマに切り込みたいと思います。

SPXLなどのレバレッジETFは、
リスク(振れ幅)が大きいため、
株価が低下したときに大量に仕込むことができる積立投資とは、相性が良いのではないか?
ということです。

これはレバレッジETFを学んでいると、
多くの人が抱く印象ではないかと思います。

このことについて検証した結果を、
お示ししたいと思います。

1.積立投資と一括投資の関係

まず、一般的な積立投資と一括投資の関係についておさらいします。

初心者向けの説明として、
「定額積立(ドルコスト平均法)は、安いときに多く買い、高いときに少なく買うことができるので、リターンを改善することができる」
という理屈を目にすることがありますが、
これは明確に嘘です。

考えてみれば当然ですが、
同じ対象に投資をしている限り、
どんなタイミングで、どのように投資しようが、
リスクとリターンの関係が変わることはあり得ません。

より大きな資金を一括で投資すれば、
リスクもリターンも大きくなるのは当然ですし、
小額ずつ時間をかけて投資すれば、
リスクとリターンは全く同じ関係を保ったまま、小さくなります。

リスクのみ低下したり、リターンのみ大きくなるといった解説は確実に誤りです。

この辺りは詳しく話すと
長くなってしまうので割愛します。

リクエストがあれば別記事で細かく解説したいと思います。

前提として理解すべきは、
一括投資の方がリスクもリターンも大きい
という事実です。

2.S&P500における積立投資と一括投資

それではまずS&P500に
積立投資した場合を見ていきます。

データはいつもお示ししている仮想インデックスの数値を使用します。

1954年7月から2020年6月までのデータを用います。

30年間、月初に一定額を投資し続けた場合に、最終時点の評価額が投資額の何倍になっているかを計算しました。

ここでは、30年間のリターンとして、
1954年7月~1984年7月
1954年8月~1984年8月
と、1ヶ月ずつ運用期間をずらすことによって
30年間の運用で得られる結果を分析しています。

分析できるデータは、全部で431個ありました。

それでは積立投資を30年間続けた場合のリターンを見てみましょう。

中央値 5.61倍

この数値は最終時点の積立額に対する倍率ですので、
毎月3万円を積み立てた場合は、30年間の積立額は1080万円になり、最終評価額はおよそ6059万円が中央値ということになります。

次に、同額を最初の時点で一括投資した場合のリターンを見てみます。

中央値 14.41倍

もし最初の時点で1080万円を一括投資できれば、最終評価額は1億5552万円となり、
積立投資のおよそ2.57倍のリターンとなります。

3.SPXLにおける積立投資と一括投資

それではここから同様の解析をSPXLに対して行います。

SPXLが設定されたのは2008年ですが、
擬似データを用いて1954年7月からの同期間のデータを解析します。

SPXLに30年間積立投資を行った場合のリターンはこちらです。

中央値 6.68倍

そして一括投資を行うと、
次のようになります。

中央値 17.34倍

数字だけを見ると、SPXLも一括投資のリターンは積立投資と比較して2.60倍のリターンとなっており、ほぼ同じ倍率でした。

4.積立投資の勝利はあり得るか?

こちらはおまけの分析ですが、
積立投資が一括投資のリターンを上回ることはあり得るのか?
ということについて検証してみました。

まずS&P500において、
分析した431個のデータのうち、
積立投資のリターンが一括投資を上回った期間は、一度もありませんでした。

同様の検証をSPXLに対して行うと、
積立投資が上回った期間は、45個ありました。
割合にすると、およそ10.4%です。

これは
現時点で一括投資できる金額を、あえて30年間に分割して投資する
というシミュレーションですので、あまり現実的なものではありません。

ここで比較している積立投資は、
毎月の収入から一定額を積み立てていく方法とは根本的に異なりますので、
誤解なきようお願い致します。

ただし、一部には
一括投資せずに、ドルコスト平均法を行うことによって、リスクとリターンが改善する
と勘違いされている方もおりますので、
あえて紹介しました。

5.まとめ

「積立投資が有効か?」という問いに対して、一括投資とのリターンの倍率を見る
という方法が正しいのかは分かりませんが、
少なくとも今回の検証において分かったことは、以下の3点です。

①レバレッジETFなどのリスクが大きい投資対象においても、積立投資のリターンが一括投資に近くなるという証拠は得られなかった

②通常のインデックス投資において、積立投資のリターンが、一括投資を超えることはまずあり得ない

③レバレッジETFなどのリスクの大きい投資においては、積立投資が一括投資を上回る展開が起こり得るが、期待値としては同程度に負けている

レバレッジETFのように、リスクが高いと結果のばらつきが大きくなるため、積立投資が勝る展開も起こり得る
というのは直感的には正しいのですが、
リスクは上下両方向に働くものですし、
リスクが大きい投資対象は、当然期待リターンも大きくなりますから、
暴騰時や、投資期間の後半において、
高値で買い続けてしまうという負の側面も働き、
結果として、積立投資が不利という結論に変わりはありませんでした。


レバレッジETFにおいても、
期待リターンを最も高めるのは、
やはりリスク許容度の範囲内でのフルインベストメントであると考えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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