4/29 翠雨の日、花らんまん

4/29
  世間はゴールデンウィーク1日目ですが、なんと大学の授業が1限だけありました。5時に起きて、えらいよ〜。

  授業が終わってそのまま帰るのも面白くないので、今日もまた美術館に行こうと考えていました。本日の目的地はすみだ北斎美術館。以前からチェックしていた「北斎花らんまん」という展覧会に行きます!  ポスターがとっても可愛いのです。最寄りの両国駅ではなく、浅草駅に向かうために銀座線に乗り込みます。

  浅草に降りると時刻は11時半。まばらながら人出もあり、人力車のお兄さんたちが営業をしています。雨というほどでもない、霧のような水滴が空気を湿らせていました。

  パスタの気分なので、「浅草_パスタ」で安易に調べたお店へ向かいます。日本家屋風の小路の先に佇むLa VASARAというイタリアンのお店です。色々悩んで、アラビアータとガトーショコラを注文しました。イタリアンのコース料理が好きなのですけど、お金と胃袋の猶予に心配があったための選択です。おまかせ前菜の3種盛りとか、燻製のポテトサラダとか、鱸のカルパッチョとか、本当に美味しそうでした…。誰かと来てシェア出来たら良かったです。
  アラビアータはトマトの酸味とこっくりとした旨み、そして鷹の爪の辛味が美味しかったです。フィットチーネなのも嬉しいところでした。ドルチェのガトーショコラは濃厚で、きゅんとする酸っぱさのベリーソースとホイップクリームと一緒に食べると幸せの味がしました。満足です…!

  お店を出て、すみだ北斎美術館へ向かいます。歩いて30分ほどの距離で、食後の良いお散歩になると思いました。雨は柔らかく降っていて、傘を差すと頭上でととと、と雨音がするのが心地よいです。隅田川を渡る吾妻橋の背景には東京スカイツリー、てっぺんは雨雲の中に霞んでいました。
  白いトレンチコートを揺らして歩いていきます。道を歩く人は少なく、のそのそと歩いても邪魔になりません。時折風が吹いて、か弱い雨粒がわたしを濡らします。途中で「横網二丁目」という看板があったのですが、わたしはすっかり「よこづな」と読んでしまいました。両国だからだということにしましょう。

  美術館はかわいらしい公園の隣にそびえ立っていました。銀色の建物がぽっかりと浮かんでいるようです。
  「北斎花らんまん」は、葛飾北斎などの浮世絵師たちが描いた四季の花を巡っていくという構成になっていました。紙と淡い着色のせいか、本物の花の儚さのようなものが伝わってきます。日本人は、もしかするとすべての人間はことごとく、花を愛でたがるものなのかもしれません。 

  この会場は、白い壁に作品を展示する「ホワイト・キューブ」という形式だったのですが、昨日ちょうどホワイト・キューブについての授業を受けたばかりで、実はそのことばかりを気にしてしまいました。ホワイト・キューブはアメリカのMoMAから生まれた、特に近現代の美術作品を政治や宗教の背景から切り離し、純粋でフラットな視線で観るための展示方法です。なぜ、日本の近世の作品を扱う展覧会で、西洋の近代絵画の展示方法を採用しているのでしょうか。浮世絵という庶民が気軽に楽しんだ文化を、美術品に昇華するためなのでしょうか。なんだかレポートが書けそうです。今日はもやもやとした気持ちで美術館を出ました。
  (ポストカードを3枚買いました!)

  美術館を出るとなんだか急に体が重たくなり、早く眠りたい一心で帰路に着きます。雨風も段々と強くなってきていました。

  家にたどり着いて、超特急で部屋着に着替え、コンタクトも外し、メイクも落とし、ベッドに寝転びます。幸せだ…! 眠る時と食事の時に、本当に生を実感します。
  会いたい人が夢に出てきました。

  覚醒すると、雨音はすっかり嵐のそれになっていました。布団の中で聞く雨の音が好きです。自分は濡れない場所にいるという絶対的な安心感が包んでくれるからです。

  最後になりましたが、ゴールデンウィークはできるだけ毎日何かしらの文芸作品をインプットしたいと思っています。今日は葛飾北斎。常設展示にあった《富士越龍》は90歳の時の最期の作品だと言われているそうですが、墨絵の筆致で描かれたこの絵は一際目を惹きました。切り取ったような富士山の周りを、踊るよう旋回して天へと昇っていく龍の姿。死を悟った北斎が自身の姿を見立てたものだと考えられているらしいですが、自分を龍に例えるというのは一体どういう心境なのでしょう。今日は眠いので、思い出した時にまた考えることにします。

余談 :  16 Personalities という性格診断テストで遊びました。わたしは「詩人肌で親切な利他主義者」の「仲介者」というタイプらしいです。わたしが利他主義? たぶん外れています。

  

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