山王工業戦・終盤のあのプレーと、信頼を寄せたあの男について再び。スラムダンク映画「THE FIRST SLAM DUNK」
※映画のネタバレしていますので、気になる方は読まないでください!
2月1日から新たな特典として「ベンチメンバーと晴子さん」の書き下ろしポストカードが配布されることとなり、動員数にもまた弾みがつくのではないか、と思われる、映画「THE FIRST SLAM DUNK」。
私も早々に特典をゲットし、もはや鑑賞回数を数えるのもおっくうになるくらい、映画に没頭している。
今回は、映画の中で描かれた対山王工業高校戦の終盤、三井寿の4点プレー(3Pシュート+ファウルによるフリースロー1点)への布石について。
原作にはないシーンとして、今回の映画の主役である宮城リョータが「ヘイ」「来い」とコート上のメンバーを呼び、ハドルを組む場面がある。
あの場面でリョータは「あいつら、また俺を狙ってくる。俺を狙って来る」と言った後、「流川、行けそうならそのまま行っちゃえ」「ダンナ、流川を見てて」と話す。
「あいつら」とは当然、山王工業の深津&沢北のことだ。
そしてこの場面、ハドルを組む湘北高校の様子を、山王工業の深津がじーっと、無言で凝視している映像が挟まれている。
冷静沈着、視野の広いポイントガード・深津一成。
きっとこの場面で湘北がどんな作戦に出るのか、耳をそばだてていたに違いない。
そして、リョータは「深津がこの話を聞いている」ということまで織り込み済みで、わざと流川と赤木に指示を出している。と思う。
一連の話を聞いていた深津は、宮城が流川にパスを出し、そのままゴールまで行かせるという筋書きを想定した、と思われる。
だが、実際はそのさらに前の伏線として、タイムアウトの際のリョータと三井寿の会話があるのだ。
「走れるっすか」
「…もう腕上がんね」
「オッケー、パス出すっすよ」
のくだりだ。
桜木の体を張ったプレーからボールを受けた宮城は、「いくぞ流川!!」と走り出す。当然止めに来る深津と河田。深津の頭には「流川にパスしてシュート」の筋書きがあったのだろう。しかし、リョータはその逆サイドにいた三井寿にノールックパスを渡すのだ。
そこに、必ず三井がいる。きっと、走ってきてくれている。そう信じて。
「信頼」
湘北にそんな言葉があったか?と海南大附属のメンバーたちが話していたが、そこにはゆるぎなき信頼があった。
そして、信頼を寄せた相手は、5年前、ひとりきりのコートに現れて心の距離をひょいと飛び越えてきた、あの三井寿なのだと思うと、さらにエモい。
孤独な少年が、心のよりどころだったバスケットボールを必死で抱え、心を閉ざしていたあの時。
光のように舞い降りて、何でもないことのように「バスケやろうぜ」と言えてしまう男。それが三井だ。
一度は身勝手な理由で、リョータからバスケを奪おうとしたのに。
やはり、最後の最後でリョータにバスケをもう一度与え、リョータを一人の高校生バスケット選手として「そこにいていいんだ」と思わせてくれたのは、三井なのだな。
あの中二の三井・中一のリョータのシーン、リョータは三井のことを覚えていて、ロン毛で再会したときに表情を変えるシーンもあるが、果たして「三井寿は中一のリョータとの出会いのことを覚えているのか」というのは、特に映画では描かれておらず、ちょっとした議論にもなっている。
私は個人的に「三井はリョータのことを覚えていない。何なら令和の今もずっと知らずにいる」という説を押したい。
なぜならそれがミッチーだから。
自分が刻んだ刻印に執着がないというか、人に及ぼす影響力に関心がないというか。それでいて、知らずのうちに出会う人に忘れ得ない記憶を刻んでいく男。それが私の思う「三井寿」という男なのだ。
文章を書いているとどうしても三井寿に肩入れしてしまうが、原作よりも濃度の濃い終盤戦の攻防を楽しめる映画「THE FIRST SLAM DUNK」、恐るべし、です。
余談だが、リョータのちょっと舌足らずな声での「ダンナ、流川を見てて」がすごく面白くてこそばゆい気がするのは私だけだろうか。
赤木→保護者、流川→幼児、みたいな縮図を想像してしまって、けっこうツボです。
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