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山王工業戦・あらためて気づいた、原作の”あのシーン”の意味。スラムダンク映画「THE FIRST SLAM DUNK」

※思いっきり映画のネタバレしていますので、気になる方は読まないでください!

今回スラムダンクの映画「THE FIRST SLAM DUNK」を複数回鑑賞し、その後原作をあらためて読み直したことで、何となく読んでいた時には気づかなかったが、「そういう意味だったのか…!」と新たな気付きを得た点がいくつかあった。

今回はその気づきについて書き出してみようと思う。
これはひとえに私自身にバスケットボールという競技に対しての専門知識がないが故の気づき、という部分もあるので、「なんだそんなことか」と思われるかもしれないが、備忘録のためにも書き記しておきたい。


1.流川のファウルの意味

桜木花道が背中を負傷し途中退場。
その後、一度は自ら「交代ヨロシク!」と試合に出ようとするところを安西監督や彩子に阻止される。

その後、あの名台詞「オレは今なんだよ…!!」があり、桜木花道は再びコートへ。

この時、原作を読んでいた時には気づかなかったのだが、流川が沢北にプッシングのファウルをしている。

バスケの専門知識がある人なら当然のことなのだろうが、素人の私にはその意味が映画を観るまで分からなかった。

交代は試合の流れが止まった時にしかできない、という常識がないと分からないと思うのだが、ここの場面で流川はわざとファウルをして試合を止め、花道に「出るなら出ろ」と言っているのではないか、と、映画を観てやっと気づいた。

流川が花道の才能を買っていること、それを素直に言わず、彼なりのやり方でコートに戻したことを思うと、感動もひとしおだ。

わざとではない、という意見もあるようだが、もともとファウルの少ない選手として描かれている流川。
ここは彼の気持ちを汲み取った行動だと思いたい。


2.三井寿の4点プレーの意味

原作を何十回と読んでいるのだが、山王工業戦の終盤、71対76というスコアからの三井寿の3Pシュート+山王工業6番・松本稔のファウルによるフリースロー、の合計4点プレーについて、「ミッチーすげえ」という感動しか持っていなかった。

だが今回映画を観終わった後に原作を読み直すと、当たり前だが「71対76」のスコアがこのプレーによって「75対76」、つまり1点差に変わったことに大きな意味がある、ということに気づかされた。これも、バスケを知っている人には当たり前のことなのだろうが…。

三井は原作でも、非常にクレバーでバスケIQの高い選手として描かれている。
普段は無神経なバカ、のイメージ(そこがみっちゃんのいいところ)なのだが、ことバスケに関しては、時に狡猾なプレーを見せたりファウルを誘ったりと、相手が嫌がるプレーのできる選手だ。

そんな三井のことだから、疲れで意識がもうろうとしていても、「残り1分で71対76、つまり5点差」の意味はしっかりと分かっていただろう。

このままでは勝てない。

打開策は何か。

それは、もはや自分のこの試合における存在意義ですらある「3ポイントシュート」しかない

―きっとこう考えただろう。

だが、仮にこの場面で三井が放ったシュートがファウルなしでそのままゴールに入ったとして、点差は2点だ。その後もう1ゴール入れたとしても、同点止まり。

でも、ファウルを誘ってバスケットカウントワンスローがもらえたとしたら…?
点差は1点。つまり、1ゴールで逆転だ。

幸い、と言っていいかわからないが、山王の松本稔(あえてフルネームで書きたくなる男)は三井の疲労困憊具合に完全に意識を持っていかれている。

ここで三井のバスケIQがはじき出した答えが、「相手のファウルを誘いつつ3Pシュートを放ち、4点をもぎ取る」ということだったのではないだろうか。
そうすればきっと、仲間たちが逆転してくれる。そう信じて。

そして、この三井の状況判断をPG・宮城も理解していた。

だからこそ「いくぞ流川っ!!」と声をかけて相手の意識を流川のほうへ誘いつつ、土壇場で三井にノールックパスを出せたのではないか。

当然、その場所に走ってきているであろう三井の姿をイメージして。

結果、松本は三井のフェイクに引っ掛かり、プッシングをとられる。

試合が終わった後、映画では松本がタオルを頭からかぶり、呆然と歩くシーンが新たに追加されていた。

彼はこのファウルを、一生忘れることができないだろう。

3.どうでもいいが気づいたこと

これは割とどうでもいい気づきなのだが、映画の中で三井がこの3Pシュートを決めた後にフリースローも入れ、「うわはははは!!」と高笑いするシーンがある(原作にもあります)。

今回の映画の中で三井寿はあくまでも「光の存在として愛されて育ってきた少年が、挫折を味わってさんざん拗れた後にやはりバスケに戻ってくる」という、人間くさくまっすぐな気持ちの男前、として描かれている(個人的意見です)。

原作の中ではけっこうな比率でギャグ路線に走っている気がするが、ギャグ要素が極力そぎ落とされた映画の中の三井寿が、唯一「ミッチー」らしく描かれていたと思うのがこの高笑いのシーンなのだが(原作未読の人は、なんで急に笑うの…?と思われなかっただろうか)、よくよく原作を読み直すと、このシーンは別に自分の才能に笑っているわけではなく、ブーイングに対して「うるせえ!入れてやったぞ!」という気持ちで笑ってるんですね。

こういう場面でこそ燃える男、三井寿。
ブーイングなんてされたらそれこそ、燃えてしまうだろう。逆効果だったと思う。

三井の声を担当した声優さんがインタビューで「この笑い方が難しくて20回くらいやった」と答えていた。
男前キャラとして描かれている映画の中の三井が、ひと時「ミッチー」になるシーン、難しかっただろうな。


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