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科学雑誌を素人が読む[017]

 大気中の二酸化炭素(CO2)をいかにして除くか? という試みの一案を検討した論文が『ネイチャー』 2020-06-09号に掲載されている。解説記事(News & Views)を読んでみる。➣研究の最終目標を詳しくいうと、人類活動によって(化石燃料を燃やすなどして)排出される温室効果ガスCO2をいかに大規模に削減するか? というもの。2つの方向がある。[1]そもそものCO2排出を減らす。[2]排出されてしまったCO2を減らす。➣で、今回の論文では[2]の案として有望な方法が報告されているということらしい。➣[Q]その方法とは?[A]大気中のCO2を〈岩石風化〉の促進という過程を利用して変換する方法である。[Q]何に変換するのか?[A]炭酸塩に変換する。➣具体的なCO2変換法として記載されているのは、「粉砕した玄武岩(basalt)やケイ酸塩物質を土壌に加える」というもの。農業従事者が農地を耕す際に同時に行ってもらうことを想定しているのだろうとQ氏は考える。玄武岩とはケイ素(Si)を多く含む岩石とのこと。ここで気になるのは、CO2とSiがどのように反応するのか? ということ。化学式が記事中で示されていればよかったが、見当たらなかったのでウェブで検索してみる。以下のような化学式がヒットする(noteでは添え文字は扱えないのかな……):

CaSiO3 + 2CO2 + 3H2O Ca2+ + 2HCO3- + H4SiO4
Ca2+ + 2HCO3- CaCO3 + CO2 + H2O

 Q氏も未だ詳しくは理解していないが、この2つの式の反応が進行して、正味で大気中のCO2が除去される(炭酸塩CaCO3へと姿を変える)ということになるのだろうか。➣論文では、今回検討された方法だけで大気中のCO2除去問題が一発解決されるわけではないと書かれているようで、そこは[1]他の除去法との組み合わせによって、さらには[2]そもそもCO2を出さない施策を続行することによって、大気中CO2の削減を図っていくべきとのこと。記事では「オプションのポートフォリオ」という表現が使われている。そして[1]の”攻める”CO2削減法については例がいくつか挙げられている:

[A]有機炭素を土壌中に蓄積させる(the accrual of organic carbon in soil)
[B]炭素を捕捉して地質層に貯める(carbon capture and sequestration in geological formations)
[C]バイオ炭を土壌へ添加する(the addition of biochar (a carbon-rich material) to soil)

 いずれも知らなかったことばかり。どれも興味深い。上記3つのCO2削減法はそれぞれ具体的にはどのような手段をとるのか? このあたりのことをまとめて書かれた本を書店で見つけて読んでみたい。今日もまたいろいろ勉強すべき課題が増えてきた。■

論文のタイトル:「耕作地における岩石風化の促進を介した大規模なCO2除去の可能性」(Potential for large-scale CO2 removal via enhanced rock weathering with croplands


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