山田さん

【レポート】山田崇さんと考える「新しい行政のあり方」

長野ミライ会議も5回目が終わりました。

8月から藤原くんと思いつきで(本当に軽い気持ちで)始めた長野ミライ会議。ありがたいことに、いろいろなご縁で小布施や長野にきてくださる面白い方々がたくさんいるのですが、「そういう専門家や実践者の方の話を僕らだけで独占するのはもったいないよね」ということで、いろいろな方が参加できる場を作ろうと始めたのがこの企画。おかげさまで10月20日で5回目を開催することができました。

この日は、おそらく「日本でもっとも有名な公務員」と言っても過言ではないほど全国で講演活動をし(今年はなんと年間140回だそう!)、メディアにも何度も取り上げられている塩尻市役所の山田崇さんをゲストにお迎えして開催しました。


山田さんとは、TURNSという雑誌の2013年夏号「スマートローカルライフのすすめ」で一緒に特集していただいたのがご縁。2014年の小布施若者会議にゲストできていただいたことでようやく直接お話し、最終的には2015年2月に開催された「第1回コクリキャンプ」やその前後のセッションでようやく「仲間」になれた、、、、そんな長いプロセスをへて今にいたる関係です(笑)

ややこしいですが、今では本当に尊敬する方で、(偉そうではありますが)大先輩なんだけれども「仲間」みたいな関係性でいさせていただいています。

実は、長野ミライ会議という名前は、当初「長野県の未来を考えるきっかけになればいいなぁ」程度で適当につけた名前だったのですが(笑)、なんと山田さんが「塩尻未来会議」という場をすでに始めていたことが後から発覚。ならばロゴも(アレンジして)使わせていただいて、塩尻の姉妹プログラムとしてやらせていただけばいいじゃないか、ということになった、そんなご縁もありました。

長野ミライ会議のロゴ。塩尻のロゴをアレンジして使わせていただいています。http://www.shiojiri-koujin.jp/#session


山田さんもすごいけど、塩尻市役所もすごい。

前置きが長くなりましたが、そんな経緯や関係性のなかで始まった山田さんの回のテーマは、「新しい行政のあり方」を考えようというもの。参加者も行政関係者が多い印象でした(県庁や関東財政局の方などがきていた一方で、基礎自治体の職員さんが少なかったのはとても残念。また企画しないとですね!)。

講演を聞いていて印象的だったのは、山田さんの人やモノ、コトを結びつける力の素晴らしさはもちろんのこと、その山田さんを活かしきる塩尻市役所の仕組みの凄さでした。

山田さんは、塩尻で「シティプロモーション」や地域ブランド戦略を担当する係。山田さんの縦横無尽の動きだけを外側から見ていると、「シティプロモーションというなんとも評価しづらい分野で、山田さんがやりたいことを自由にやっていて、それを"仕事"にしているのではないか」と見えてしまう部分も多いと思います(というか、僕もそう見えている節がありました笑)。

でも、今回の講演を通じて、山田さんの活動の背景には、しっかりとした行政目標やアクションプランがあり、山田さんは「相当戦略的に動いている人」で行政マンなのだ、ということが(今更ながら)よく理解できた次第です。ただ自由に動いているわけではなく、塩尻市が中長期的な視点から定めている行政目標の達成を目的意識に持ちながら、山田さんなりの動き方で動き、成果を出している。当たり前のように見えるかもしれないけれども、実は実態からみれば当たり前ではなく、そこが素晴らしいなぁと。

もう少し具体的に書くと、塩尻市役所では、平成16年度から信州大学との共同研究をスタートし、平成18年度(平成19年3月)に地域ブランド戦略を策定しています。地域ブランド戦略の目標は「市民の皆さんが愛着と誇りを持てるまちをつくるとともに、人、自然、歴史、文化、産業といった地域資源を効果的に活用しながら、本市固有の価値を発掘、創造していく、塩尻地域全体のブランド化」。この戦略を読み進めると、①市民が自分たちの街に誇りを持てること(シビックプライドの醸成)、②地域のブランドイメージを高めて外部に発信すること(地域外への情報発信と塩尻のブランドイメージ向上)の2点が大きな目標であることがわかります。つまり、塩尻の地域ブランド戦略には、地域(内)向けと地域外向けへのそれぞれの目標設定が明確にあり、それが行政文書で位置付けられているわけです。

平成27年から9年間を計画年度とする「第5次総合計画」にも、中期戦略の10のプロジェクトのうち、9つ目に「地域ブランド・プロモーション」が明確な目標設定のもとで書かれています。行政計画としては、他の市町村に比べてデザインも内容も、すごくわかりやすくできているように感じます。http://www.city.shiojiri.lg.jp/gyosei/shisaku/daigojisougou.files/shiojiri_sougou_plan_tyuuki.pdf

山田さんの活動は、全てこれらの行政計画が背景にあった上で進められている。こういう基本的な計画や目標があるからこそ、山田さんが塩尻市内と全国を縦横無尽に飛び回って、目標達成に向けて動き続けることができる。「行政の中長期計画に基づいて事業が進められ、行政職員が動く」というのは、当然のことのように思えるかもしれませんが、ここまで明確な目標設定や具体的なプロジェクトに基づいて動いている(しかも、行政評価の仕組みを同時並行で動かしている)基礎自治体がいったいどれだけあるのかなぁと首をかしげてしまうのが、日本の基礎自治体の率直な現状だと感じます。


意思決定プロセス(公定化)が素晴らしい!

地域ブランド戦略やその行政計画での位置付けも素晴らしいですが、ここまでについては、まあ、よくある「正しい行政」の姿でもあります。もうひとつ、個人的に面白いと感じたのは、一見突飛なものに映るプロジェクトにも、行政計画と結びつけた「お墨付き」(=公定化)を与えるプロセスが内在化され、行政職員も遠慮なくプロジェクトに関われるようになっている点。これこそ、細やかに見えて重要なプロセスが大切にされていて、本当に素晴らしいなぁと感じました。

例えば、山田さんが取り組んでいる官民協働プロジェクトの一つに「MICHIKARA」というものがあります。これも、リクルートをはじめとした複数社の企業を巻き込み、官民協働で取り組みが進んでいること、塩尻からスタートしつつも他の自治体にも横展開が進みそうな点、東大の講堂でフォーラムを開いていることなど「見せ方」の部分がどうしても目立ちますが、その背景には素晴らしい「公定化プロセス」(行政が、公に「このプロジェクトに"行政として"取り組みますよ」というお墨付きを与える行為)があります。

MICHIKARAは、塩尻が優先的に取り組む5から6つの課題について、官民が協働で取り組み、その課題解決のためのプロジェクトを進めるというもの。例えば、第1期のプログラムでは「新体育館の活用促進戦略」「木質ペレット熱供給システム構築」「ICT基盤を使った新規事業開発」「空き家対策」「子育て世代の復職・両立支援」の5テーマを課題に、官民が協働で課題解決の提案づくりを行います。

第3期の最新レポートはこちらから:http://changewave.co.jp/2017/09/26/michikara_shiojirip_2017/

これだけ聞くと、大企業が関わっているという「コラボ相手の凄さ」は別として、枠組みやテーマ設定は一見「よくありそうなプログラム」に思えるかもしれません。現に、私がコーディネーターをやっている小布施若者会議も、大枠では似た取り組みに見えると思います(別に若者会議の方が素晴らしいとか、全然ダメとか、そういうことでの比較ではありません笑)

しかし、これらのテーマは、①「今塩尻が優先的に取り組むべき課題」を横断的な視点で担当者が優先付けして作られた課題リストのたたき台を、②その後に理事者(市長をはじめとする行政のリーダーたち)の議論をふまえてふるいがかけられ、最終的には③プログラムを協働で構築する民間のパートナーが、民間事業者と組むことによって相乗効果がありそうなテーマにさらに絞る、というプロセスを経て設定されているそうです。その辺りの詳しいことに興味がある方は、地域活性学会(小布施開催の時!)の山田さんの発表資料をご覧ください。

こういうプロセスを経ることで、関わる民間企業にとっても課題の重要度や本気度が伝わりますし、内部の行政職員にとっても「理事者の選定を経て選ばれた行政課題」ということで、仕事として取り組みやすい雰囲気が生まれるでしょう。最終的に民間をよく知るパートナーにテーマ設定の絞り込みを任せている点も、官民協働を行う対象の「選択と集中」を行い、その効果を最大化する要因になりそうです。

細かいですが、こういう公定化プロセスを当たり前のようにやっているところ、丁寧に仕組み化していること自体が、塩尻の行政経営の厚みを見せつけているように思います。山田さんも、こういうプロセスを経たテーマだからこそ、安心してその課題解決に向けて、力を結集することができているのではないでしょうか。

ちなみに、こういった「横断型の取り組み」に「民間や大学など外部の力を使わせていただく」パターンのプログラムや協働プロジェクトは、たいてい民間から提案された事業を地域が受け入れてそのまま実証的に行っている、という形が多いと思います。行政の中での優先順位付けが最初に行われていないので、ランダムに協働プロジェクトが増えていき、行政内部も混乱するということがよく起きている。小布施も含め、本当に少人数の自治体職員で回しているところでは、それが現状だと思います。だからこそ、この塩尻のプロセスは多くの自治体の官民協働のテーマ選びに参考になるヒントだと感じます。


これを書いている時点で、塩尻のプロモーションに巻き込まれている(笑)

その他、塩尻の行政経営については、行政評価の仕組みや予算付けの方法など、もっともっと素晴らしい部分があったのですが、まだまだ勉強不足なのでここでは割愛し、またの機会にしたいと思います。一応、興味がある方のために山田さんからいただいたリンクをいくつか貼っておきますね。

行政経営システム(これが本当にすごいからまた勉強したい):http://www.city.shiojiri.lg.jp/gyosei/shisaku/gyouseikeiesisutemu.html


そもそも、こういう文章を結構な時間を使って書いて発信すること自体が、山田さんの仕事である「地域外への塩尻のプロモーションとイメージの向上」に少なからずつながってしまうわけだから、やっぱり山田さんが地域の外で講演している意味ってすごく大きいんでしょうね(笑)

僕自身が今回学んだことは、丁寧な基盤や仕組み・プロセスをつくることと、どんどん外に出て人やモノ・コトをつなぐ人が両輪で取り組むことの重要性。また、最先端の枠組みや課題解決の方法論を作ることで、それが自然に「情報発信」や「地域ブランドイメージの向上」につながるということ。

塩尻市の取り組みをうまく盗みながら、新しい行政のあり方をもっと模索したいと思う1日になりました。山田さん、本当にありがとうございました。

最後に記念撮影。今回も多くの方に来ていただきました。

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