彫刻のじかん、はじめます

                             statement

つい先日のこと。
右手を頬杖にぼんやりしていて、ふと思いました。
彫刻って、いったい何なんだろう? と。

だって、彫刻という言葉には、誰しも当然のごとくなじみがある。でも、じゃあ他に彫刻について知っていることは? そう問われると、とたんにソワソワしてしまう。
えーと。ロダン。あ、「考える人」ってあるよね……。あと……、上野の西郷隆盛。あれって彫刻でいいんだよね? え、まだ言うの、もう出てこない。そうだ、顔をすごく近づけて木を彫る人って、棟方志功だっけ……。
そんなところじゃないでしょうか。彫刻に関して私たちは、極端に知識と情報、それにイメージが不足しているようです。好きなアーティストを聞かれて、真っ先に彫刻家を挙げる人は多くないでしょう。
ちなみに、棟方志功が顔を近づけて彫っているのは版画の版木ですから、彫刻とは違うかもしれません。いや、でもひょっとすると、あれも彫刻の一種かもしれないです。なにしろ彫刻の定義もよくわからないので。

かようにわたしたちは、彫刻について何も知らない。彫刻家の名前や実作例はごく少数しか思い浮かばないし、そのはじまりや歴史的変遷、定義もあまり気にしたことがありません。
ぼく自身もだいたいそんな感じです。そもそも「彫刻って何?」との問いが浮かんだのは、頬杖をついてぼんやりしていた自分のポーズが、「考える人」っぽいなと思ったからでした。もし彫刻にたいへん詳しければ、そこから、
「ロダンか。彼の彫刻は時代を画するものだった。かつて信じられていた◯×以来の彫刻の概念を覆し、こんな新しい彫刻観を打ち立てたのだから。『考える人』にしてもポーズにはあんな隠された意図があり、制作技法的にも斬新で……」
と深く思索を始められたかもしれませんが、無知ゆえそんな芸当はできず、ただ「彫刻って?」という素朴な疑問が浮かぶのみだったのでした。

いい機会です。
これから彫刻について、この場を使って考えていきたく思います。
「知っているようで知らないもの」を深く探っていくことほど、おもしろいことはありませんからね。
まるで知らないものだと、何を探ればいいのかさえつかめず、たちまち立ち往生してしまう。でも、名称や存在自体はメジャー中のメジャーたる彫刻なら、とっかかりの疑問が続々湧いてきます。
・彫刻のはじまりっていつだった?
・現代アートにおける彫刻の地位は? ひょっとすると時代遅れの産物ではないんだろうか。
・世界の、また日本の彫刻家ってどんな人がいる?
・どこまでが彫刻なのか。うちの最寄りの駅前ロータリーにあるヘンなオブジェも彫刻か?
・彫刻の歴史とは? 盛り上がった時代や地域はあったのか。絵画などと比べて特殊性があるのかどうか。
・見るべき彫刻の名品にはどんなものがあるか。
・そして、彫刻とは何か。人はなんで彫刻なんてつくるのか? そこに何を表そうとしてきたんだろう。
などなど、と。

彫刻にまつわるすべてを明らかにするべく、
めくるめく「彫刻のじかん」を、はじめましょう。


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