Twitterの絵師凍結問題と日米エロ文化について
このNOTEは
1.Twitterの絵師凍結問題について
2. 日本のエロ文化について
3.米国でのエロ漫画所持による逮捕案件から見る「Obscenity(猥褻)Pornography(ポルノ)問題」について
4.Twitterの基準とはなんなのか(凄い長いので結論だけ知りたければここだけ読んでください)
について、公開されている資料を基に記載しています。ただし、できるだけ分かりやすく書こうとしている分、どうしても誤解を招く箇所も多々あるかと思います。また、分量の問題から、前提となる文章を抜いています
・Twitterの規約解説
・日本の刑法175条解釈の変遷と、日本の性文化について
・米国の宗教観をベースにした性道徳と倫理観
特に下二つは本1冊でも足りない話です。他国の文化を簡単に語ることは本来できません。引用した文献は必読ですが、この問題に興味を持たれた方への、入口案内程度に思っていただければ幸いです。
1.Twitterの絵師凍結問題と米国のエロ文化について
Twitterでは、絵師凍結問題が継続的に発生していました。
https://togetter.com/li/841877
この原因は様々憶測があります(複数人による通報による嫌がらせ等)
https://togetter.com/li/1144140
最近になってComic LOの公式垢を含めた、所謂「ロリ絵師」の凍結が連続して行われました。
https://togetter.com/li/1178169
しかし、残っている垢も当然あります。
凍結された垢の中には「モザイクをきちんとかけていた」「ちゃんと成人向けにフィルタリングしていた」「あくまでも二次元の絵なのになんで?」等々あり、疑問が相次ぎました。
また、Twitterの規約を読んでも、凍結された垢がそれに該当しているのか分かりにくい状況です
https://help.twitter.com/ja/rules-and-policies/twitter-rules
しかし、ここで考えて頂きたいのですが、Twitterはアメリカのサービスです。
勿論日本国内の法律にふれることはしてはいけません(つまり無修正の性器アップロードとか)が、米国の倫理でアウトなものは基本的にダメです。
この「米国の倫理」と簡単に書きますが、日米には、エロ文化に関してはとてつもない断絶があります。全然基準が違うのです。これが全ての理由では当然ありませんが、一つの要因の可能性としてご覧ください
他の世界の国々の話はさておきます。今回の主題はあくまでも「Twitterの絵師凍結問題と日米エロ文化について」の解説です。そこに絞って語っていきましょう
2. 日本のエロ文化について
我が国日本のエロについて、不思議に思った事はありませんでしょうか?
エロに関して言うならば
1.全年齢が買える物
2.年齢制限がありそれ以上の人が買える物
3.売ってはいけないもの
があります。ビデオの話をすると色々ややこしいので、漫画、雑誌の話に絞ると
1.全年齢
2.18禁(ここには条例によりコンビニでゾーニング販売されているものも含む)
3.ウラ本等の違法出版物(性器無修正、リアル児童の児童ポルノ)
2番の解説だけでこのNOTEが埋まるので細かい話はパスします。ここで大事なことですが、今日本においては、この全年齢が堂々と買える雑誌、漫画に、性行為が載っているのは普通です。下記リンクは僕の好きな漫画なだけで深い意味はありません。
https://estar.jp/_comic_view?w=24577891
全年齢と18禁の区別は?というと、内容も勿論ありますが、ほとんどの場合、というか、9割が「モザイクの濃淡」です
モザイクがばっちりしていれば、全年齢でも性行為はOK
http://www.nihonbungeisha.co.jp/goraku/
このサイトの「たちまち はだかの」を見ると毎回がっつりやってますね
日本では「性器モザイクが薄いほどエロ」となっているのです。なんでこんなことになっているのか。説明がクソ面倒なので、下記資料をご覧ください
以下長文ですが引用します。
「性表現・名誉毀損的表現は、わいせつ文書の頒布・販売罪とか名誉毀損罪
が自然犯として刑法に定められているので、従来は、憲法で保障された表現
の範囲に属さないと考えられてきた。しかし、そのように考えると、わいせ
つ文書なり名誉毀損の概念をどのように決めるかによって、本来憲法上保障
されるべき表現まで憲法の保障の外におかれてしまうおそれが生じる。そこ
で、わいせつ文書ないし名誉毀損の概念の決め方それ自体を憲法論として検
討し直す考え方が有力になってきた。つまり、それらについても、表現の自
由に含まれると解したうえで、最大限保護の及ぶ表現の範囲を確定していく
という立場である。この立場は、性表現について言えば、わいせつ文書の罪
の保護法益(社会環境としての性風俗を清潔に保ち抵抗力の弱い青少年を保
護することと解する説が有力である)との衡量をはかりながら、表現の自由
の価値に比重をおいてわいせつ文書の定義を厳格にしぼり、それによって表
現内容の規制をできるだけ限定しようとする考え方で、定義づけ衡量
(definitional balancing)論と呼ばれる」
「わいせつ文書の定義を厳格にしぼり」その結果が「性器無修正」なわけですね。ええ。ここらへんの話は資料に載っている参考資料からどんどん手を広げて読んでいただけると幸いです。昔は文章だけでもアウトでした(チャタレイ事件)。要は、日本はこんな経緯で、こんなよくわからん基準になってんよ。ということがご理解いただければ。(各都道府県条例における内容規制についてはふれません。文章の収拾がつかなくなるので)
ちなみに、こんな「性器のモザイク度合いで、発禁か、18禁か、全年齢かが決まる」国なんぞ殆どないです。米国から見ると
「なんで日本のポルノはモザイクかけとるねん」扱いです
http://blog.livedoor.jp/janews/archives/5323501.html
3.米国でのエロ漫画所持による逮捕案件から見る「Obscenity(猥褻)Pornography(ポルノ)問題」について
日本エロ文化の特殊性の解説に比重を置きすぎましたが、こっから先が本題です。米国は自由の国です。表現も自由です。「Obscenity(猥褻)」でなければ。
「日本のエロ文化」を語ったのですから本来は「米国のエロ文化」を語るべきですが、そんなもん書き始めたら本1冊でも足らないのパスします。ここでは比較的論じやすい法の運用から考えたエロの考え方を中心に記載します。あと州によっても違います。ここの話もパスです。あくまでも全体の話です。
米国では「Obscenity(猥褻)」と「Pornography(ポルノ)」は別物です
「Obscenity(猥褻)」は犯罪で「Pornography(ポルノ)」は表現の自由です。
「Pornography(ポルノ)」は自由だから、無修正のエロ動画、エロ画像がTwitterに溢れているわけですね。これは表現の自由だからOKです。無修正のちんまんが突き合っていてもなんの問題もございません。
では、なぜ実在の性器などない、日本の二次元絵が凍結対象になってしまうのか。
理由は「米国ではエロ漫画も内容によってはObscenity(猥褻)となり、有罪となるから」です
ここで少し整理をします。ここから先は「児童ポルノ」の話題になりますが
繰り返すように「Obscenity(猥褻)とPornography(ポルノ)は別」だという前提をおぼえてください
PROTECT Act of 2003により、米国は児童虐待や、児童ポルノに関する保護の法律を作りました。
https://en.wikipedia.org/wiki/PROTECT_Act_of_2003
これにより今まであいまいだった「児童ポルノ」に対して下記のように定められます
「児童ポルノとは、実際の未成年者、または未成年者を使用して作成されたものである」つまり、二次元のような架空の児童のPornographyはこの法には当てはまらないわけです。つまり「Pornography」の中でも児童に対する物は規制された。でも非実在児童はその限りではない。
素晴らしいですね。さすがUSA。
このあとの「ただし、Obscenity(猥褻)は除く」が無ければ
Obscenity(猥褻)とはなんなんでしょうか。
ここで日本語のわかりやすい解説論文を紹介します
日米英における児童ポルノの定義規定
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/issue/pdf/0681.pdf
ここの「合衆国法典第 18 編第 1466A 条」規定をみてください。
即ち「非実在の未成年者の一定の性行為の視覚的描写(彫刻や漫画含む)であって、(a)わいせつなもの、または(b)真摯な芸術的、文学的、政治的もしくは科学的価値のないもの」は該当します。
これは二次元でも該当します。
「はあああ?????」と突っ込まれそうですが、引用を続けます。
「 1466A 条(児童の性的虐待のわいせつな視覚的表現)
(a) 総則
(略)いかなる者も、知りつつ、頒布する意図でスケッチ、漫画、彫刻若しくは絵画を含むあらゆる種類の視覚的描写を製造、頒布、受領若しくは所持する者又はこれを企て若しくはこれを共謀する者は、次の各号のいずれかの場合には、(中略)刑に服する。
(1) (A)及び(B)のいずれにも該当する場合
(A) 性的に露骨な行為を行っている未成年者を描写していること。
(B) わいせつであること。
(2) (A)及び(B)のいずれにも該当する場合
(A) 生々しい獣姦、サディスティック若しくはマゾヒスティックな虐待又は同性間であるか異性間であ
るかを問わず、生殖器と生殖器、口と生殖器、肛門と生殖器若しくは口と肛門を含む性交渉を行って
いる未成年者のものであるかそのように見える画像を描写していること。
(B) 真摯な文学的、芸術的、政治的又は科学的な価値を欠いていること。」
これは二次元でもダメです(もちろんこれは州によって運用は変わります。このあたりの話は長くなるので端折ります)
で、実際に漫画の所持で逮捕者が出ています。具体的にどのような事件があったか見ていきましょう
これは各国の漫画で逮捕事件の一覧です。米国を見てください
https://en.wikipedia.org/wiki/Legal_status_of_drawn_pornography_depicting_minors
まずはDwight Whorley
この人は2003年のACT法最初の適用者です。日本のロリアニメの送付から足がつき逮捕されました。結果的に結構な刑罰を受けましたが、罪状としては、リアル児童のポルノも持っていたので有罪はまあ、そうなるわな
https://archives.fbi.gov/archives/news/stories/2006/march/obscenity_031006
続いてChristopher S. Handley
この人は純粋に漫画所持のみで逮捕、有罪になりました
摩訶不思議先生多いっすね。先生の漫画が、米国の児童になにをしたと言うのでしょうか。
次にSteven Kutzner
http://kaigaigossip55.blog28.fc2.com/blog-entry-423.html?sp
シンプソンズのエロロリ同人ダウンロードで逮捕されました。
シンプソンズですよ。シンプソンズ。世界は広いっすね。(他の作品もあったそうですが、大部分はシンプソンズ)
最後にChristjan Bee
「近親相姦漫画は文学的、芸術的、政治的または科学的価値が明確にない」とケチョンケチョンに言われた裁判。
USAよ、君たちはなにを守りたいのだ。
ここで整理を。ここまで法律と運用の話をしてきました。
しかし、これが全てではありません。「法律にそう書いてあるから従っている」話ではない。倫理観の話です。日本でもそうですが、刑法175条があるからそれだけ従っているわけではありません。企業のブランドイメージ等の理由で自主規制は存在しています。そのうえで、米倫理観として
「米国においてはPornography(ポルノ)はOK.。ただし実在の児童ポルノはだめ。非実在であれば(条件はありますが)児童描写でもPornography(ポルノ)はOK」
「しかしたとえ二次元の児童描写でもObscenity(猥褻)はだめ」
まあ、要はこれだけです。
これの米国特有の倫理観が日本人にはわかんねー。というだけです。
一般的には、あくまで一般的な感覚としては
「Pornography」は裸だし、合意の性交
「Obscenity」は性暴力等の一方的な性的搾取
で収まりますが、なにが合意なのか、なになら性暴力なのか。というか「性暴力」と僕は書きましたが、もっと正確に書くと「性冒涜」です。キリスト教的道徳観に基づいた「性の冒涜」ですが、こう書くと新しい誤解しか与えない気がします。
ここらへんのニュアンスは、日本で育った日本人には感じ取るのは難しい。
しかも州によって違うときやがるとお手上げです
4.Twitterの基準とはなんなのか
延々と説明してきましたが意味分かりましたでしょうか?
誤解覚悟で端的に書くと
・性暴力等の描写は二次元でもアウト
・性暴力等ではない、合意、もしくは裸なだけならばこれに抵触しない可能性はある(けれども最近の基準だとこれも怪しい)
・ここらへんの微妙な感覚を日本人が感じ取るのは多分無理
・モザイクの濃淡は関係ない(日本の法律に引っかかるから無修正はやめよう)
・フィルタリング指定も関係ない(向こうでは単純所持で違法です。フィルタリング、ゾーニングの問題ではない)
以上になります。
気が向いたら加筆(というより減筆やな…)します。
駄文をお読み頂きありがとうございました。
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