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【フェイクニュース・パンデミック】

 「アバーッ! サヨナラ!」

 持ち株暴落によって、シューズクリーナーは爆発資産! 脳血管破裂でショック死! 爆発四散!

 「シューズクリーナー=サン!?」

 「まだ株を隠していやがったのか、イディオットめ!」

 「ほっとけ! とにかく売れ! 全部売れ!」

 投資家ニンジャ集団、「ソコネ・エンジェルス」は未曾有の危機に晒されていた。IRC上に突如として巻き起こった無数のフェイクニュースにより、暗黒メガコーポ各社の株価が急激に下がり始めたのだ。

 『IRCネットワーク上に謎のウイルスが発生、UNIXに触れただけでサイバネ装備まで感染する』

 『デジ・マスクをサイバネやサイバーサングラスにインストールしていなければムラハチにされる』

 『紙製品が不足し、今すぐ買い貯めなければ世界中から在庫が消える』

 『オムラ・エンパイアが市民を虐殺している』

 『ヨロシサンCEOが他の乗客を見捨てて飛行機から脱出した』

 『ネザーキョウとUCAが全面戦争に打って出る』

 『死ぬ』

 出どころもわからないような情報の数々は、瞬く間にネットワーク上を駆け抜け、それに振り回されるように株価はみるみる低下していく。

 ニンジャ第六感によって手堅い株ばかりを選んできたはずの「ソコネ・エンジェルス」は、この事態を予測出来ず、保有していた株が次々に暴落。多大な損害を被った。

 「アバーッ! サヨナラ!」

 持ち株暴落によって、ローカストは爆発資産! 脳血管破裂でショック死! 爆発四散!

 「ローカスト=サンまで……」

 「ダメだ、プラチナチケット=サン……。もう、売り抜けねえ……」

 セリングクライマックスとオープンリーチの絶望を帯びた声を受けて、チームリーダーのプラチナチケットはゆらりと立ち上がった。

 「俺たちはニンジャだ! ニンジャなら損失は殺して奪って補うんだ!」

 彼らは狂った。

◆◆◆

 「カネを出せ! イヤーッ!」「アバーッ!」

 「コロセー! コロセー!」「アイエエエエエ!」

 三人のニンジャは雄叫びを上げながら街中を走り回り、住民たちを殺し、カネを奪い、殺した。後わずかのうちにはUCAに指名手配され、賞金稼ぎニンジャに殺されるだろうが、そんなことは彼らの狂った頭には浮かばなかった。

 「カネを出せ! よこせ! いや死ねーーー!!」

 セリングクライマックスは、眼前をフラフラと歩いていた黒い巻き毛の男に襲いかかった。この状況で逃げもせず歩いている時点で訝しむべきだったが、そんなことは彼らの狂った頭には浮かばなかった。

 「イヤーッ!」「アバーッ! サヨナラ!」

 黒い巻き毛の男は、鋭いカラテシャウトと共にチョップを振り上げ、そして振り下ろした。セリングクライマックスの身体が斜めに断裂し、爆発四散した。

 「何だ、貴様ら……無粋な……貴様らのような下賤の輩が、次から次へと私の憎悪に水を差す……!」

 振り向いた男の顔は醜い傷と、ここにいない誰かへの執拗なまでの憎悪で歪み切っていた。

 「ドーモ、ヘラルドです」「ドーモ、プラチナチケットです」「オープンリーチです」

 狂ったニンジャたちはアイサツを交わした。狂っていたので、それ以上の言葉を交わさなかった。次の瞬間には、彼らは色付きの風となって交錯した。怒号とカラテシャウトが響き渡り、腰を抜かして呆然とそれを眺める市民たちの前で二人のニンジャが爆発四散した。

 「「サヨナラ!」」

 「おのれ……おのれ……このような下らぬイクサをせねばならぬのも、全て奴の、奴のせいだ……おのれ……」

 ヘラルドは呪詛を呟きながら、UCA強襲部隊の駐屯地へと戻っていった。

◆◆◆

 「投資家連中が突然発狂して暴れ出し、別のイカれ野郎がそれを殺して消えた……? アホくせえ。こんな与太話、誰が信じるかよ。フェイクニュースにしたって、もう少し上手くやれよな」

 タキは一人ぼやきながら、旧カナダ近辺の情報収集を再開した。

【フェイクニュース・パンデミック】終


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