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ヨーロッパ文化教養講座(2024年9月19日 アリス=紗良・オット@川商ホール)

2024/09/20
先日N響の定期演奏会(放送)でリストの協奏曲を聴き、生演奏を聴きたいと思っていた、アリス=紗良・オットさんが、遠路鹿児島まで来て下さった。

川商ホール第2は、バルコニー席を開放しても、952席しかないが、平日夜のリサイタルということで、1F席の後ろの方もかなり空席があった。
小生は、前から9列目のステージに向かって左側の席だったので、アリス=紗良さんのダイナミックな手の動きがよく見えた。
客層は、比較的若年から中年の男性が多く、弾く姿も美しいアリス=紗良さんのファンが南の果ての地方都市でもいるのだなと感心した。

日時:2024年9月19日(木)開場:18時 開演:19時
プログラム:ノクターン番号は、1859年J.シューベルト社から出版された、F.リスト版による。

1)  ジョン・フィールド:ノクターン 第17番 ハ長調
2)ベートーヴェン:ソナタ 第19番 ト短調 Op.49-1(1798年)
3) ジョン・フィールド:ノクターン 第1番 変ホ長調
4)ジョン・フィールド:ノクターン 第2番 ハ短調
5)ジョン・フィールド:ノクターン 第4番 イ長調
6)ジョン・フィールド:ノクターン 第14番 ト長調
7)ジョン・フィールド:ノクターン 第15番 ニ短調
8)ジョン・フィールド:ノクターン 第10番 ホ長調
9)ジョン・フィールド:ノクターン 第9番 ホ短調
10)ジョン・フィールド:ノクターン 第12番 ホ長調
11)ベートーヴェン:ソナタ 第14番「月光」 嬰ハ短調(1801年)
アンコール
12) サティ:グノシエンヌ1番

コメントと感想:
1.定刻きっかりにスキップするように入場(彼女は靴を履かないでで演奏するので有名)白いブラウスと足首まで隠すクリーム色?のロングフレアスカートという出で立ち。
1)と2)を弾いた後にマイクを手にして、「25年前から日本に年4回ほど来ているが、鹿児島は初めてだと思います」。
「ドイツを出発するときは、7度だったので、気温と湿度の違いに驚いた。」(ちなみに、この日の当地の最低気温は、28度)
ショパンではなく、ジョン・フィールドが、ノクターンを作ったことを説明

2.3)4)5)を説明して続けて演奏。再度、マイクを取り、ジョン・フィールドの生涯について話す。

彼女の話とWIKIを見ながらまとめると、
師匠は、イタリア出身でイギリスで活躍したクレメンティ(モーツァルトと弾き比べをしたピアニスト、作曲家)だったらしい。
1782年アイルランド、ダブリン生まれ、1793年11歳のときにロンドンへ家族とともに移住。1803年にクレメンティと演奏旅行していたサンクトペテルブルクにそのまま滞在し、現地の女性と結婚。晩年はアルコール中毒になり、1837年54歳で死亡。
ロシアでは、グリンカにピアノの技術を教えたので、グリンカを通じて、その後のロシアの作曲家に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。

3.6)7)8)を説明。アリス=紗良さんは、ジョン・フィールドのノクターン集を10月に録音して、来年の2月にCD発売するので、本来であれば、その後にツアーを組むのだが、今回は、その前に来日4公演に限定してこのツアーを組んだとのこと。
観衆の反応を観たいのかなと思った。

4.9)10)11)については、特に、9)と11)「月光」の共通点について、実際にピアノで説明した。
その説明の中で、11)の月光の1楽章は、ベートーヴェンが、モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」の騎士長がドン・ジョバンニに刺され、死にゆく音楽から発想を得たという話を聴いて驚いた。
ジョン・フィールドの、9)が、同じモーツァルトからインスピレーションを得たのかは不明とのこと。

そのシーンは、下記の 4:30 辺りから

5.3回のカーテンコールの後、マイクを取る。「このピアノは、私よりも1歳年上で37年前のピアノです。激しい曲は無理そうなのでと言って、12)のグノシエンヌ1番を優雅に弾いてリサイタルは、あっという間に終わった。

6.ジョン・フィールドは、このリサイタルまで、名前も知らなかったので、曲は全て初めて聴いた。
曲調や演奏方法は確かに、ショパンのノクターンの元になったことがハッキリわかった。
ただ、全体的に明るい音が多いこととシンプルな感じがする。
ショパンのように、胸が締め付けられるような、感情が揺さぶられるまではいかないので、BGMには最適だが、いつの間にか忘れ去られてしまったのは何となくわかる。
サリエリとモーツァルトの違いというか、その時代だけの流行かも知れない。

7.アリス=紗良さんの演奏については、月光の3楽章で、N響のリストの協奏曲の迫力満点の強靱なテクニックを思い出した。
彼女に申し訳けないのが、川商ホールに置いてあるスタインウェイは、買い替え時期を過ぎていて強打するとキンキンすることと、ホールの響きが全く足りないこと。途中 5. の「このピアノは歳を取っていて」という発言は、暗に困ったということを優しくコメントしたのかなと思った。

もう一度ここに呼ばれても、来て下さらないだろうなと思いつつ、帰途についた。


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