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ヨーロッパ文化教養講座(「揺れる大地」ルキノ・ヴィスコンティ鑑賞記)

2023/01/23
ルキノ・ヴイスコンティ監督。1948年公開。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の次作長編。
舞台は、シチリアの漁村。

漁師達は、毎晩、小型ヨットのような小さな漁船で船団を組んで、近海へ投網漁に出かける。明け方、帰港し、取った魚を仲買人に売り渡す。
漁師達は、帰宅後、網や船の修理。
女達は子育てや家事に明け暮れる。

ドキュメンタリーと思うような描写が続き、「ネオレアリズモ」の映画であるとわかる。
仲買人の事務所にムッソリーニの名前があったので、ファシスト政権下の時代なのかと思う。

小説の部分は、一つの家族の物語。亡き父親の後を継いだ、若くて腕の良い漁師が、悪徳仲買人へ反抗し独立するが、嵐で船の網も帆柱も失い、漁にでられなくなる。仲買人を恐れて、他の漁師もだれも助けてくれない。

シチュエーションは、「ファーストペンギン」に似ているが、
ネオレアリズモ映画なので、ヒーローも登場せず、ハッピーエンドなどありえない。
ただただ、落ちゆくのみ。

唯一の救いは、極貧に落ちた主人公に少女が優しい声をかけてくれたこと。
また、美しい妹も人を恨まず、運命を受け入れること。
旧約聖書のヨブ記を思い出した。

まだまだ若い主人公は、プライドをすて、仲買人の船に一雇われ漁師としてやり直すことになった。その船で漕ぎ出すところで、「FINE」となる。



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